NICU入院中の赤ちゃんと家族をつなぐ「世界初」身体情報を伴う双方向オンライン面会遠隔実証「愛のカタチ」開始
NTT東日本株式会社 岩手支店(支店長:後藤 高宏、以下「NTT東日本」)、学校法人岩手医科大学(理事長:祖父江 憲治、以下「岩手医科大学」)、北上済生会病院(病院長:福島 明宗)、岩手県(知事:達増 拓也)は、新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit : NICU)に入院する赤ちゃんと、院内の別室または自宅・職場など遠隔地にいるご家族をつなぐ遠隔実証「愛のカタチ」を開始します。
本実証は、映像・音声に加え、触覚情報を遠隔の家族へ伝えることで、入院中でも親子の心理的つながりを支援することを目的としています。
1.背景・目的
日本は少子化が進む一方で、医療の高度化により先進国の中で最も安全なレベルの周産期医療体制を実現し、28週未満で生まれる超早産児の生存率は世界で最も高い状況です。
一方、低出生体重児・超早産児の救命率向上により、NICUでの長期入院児は増加傾向にあり、医師や医療従事者の不足、家族支援の在り方、地域医療連携の実現など早期の課題解決が求められています。
特に、岩手県では、広い県土・積雪などの地理的条件により家族が頻繁に病院に来られないケースも多くコミュニケーションが不足する課題がありました。
NTT東日本と岩手医科大学は、これまで地域医療連携のコミュニケーション支援に取り組んでまいり、2021年にオンライン診療システムを導入(1)し、医療的ケア児の通院負担軽減や感染リスク低減に寄与しました。また、2022年には小児病棟とプロバスケットボールチーム「岩手ビッグブルズ」の試合会場をつなぎ、触覚を共有する「モバイルタッチ」を活用した応援体験(2)を実施するなど、医療と地域とのコミュニケーションを拡張してまいりました。
本実証「愛のカタチ」では、映像や音声に加えて触覚情報を伝送するシステム(3)をNICUに導入することで、広い県土・積雪などの地理的条件から面会困難となる岩手県の社会課題解決、さらに家族愛を高めるウェルビーイング向上にも資することを目的として、NTT東日本がNTT社会情報研究所との共同実験のもと、岩手医科大学、北上済生会病院、岩手県と連携して行うものです。
病院現場の負担や新生児へのリスクを高めることなく、遠隔地の家族に効果的に新生児の身体情報を伝える方法として、新生児のベッドサイドモニタから心拍情報(NICUでは基本的に常時取得しているもの)を取得し、それと同期する振動を家族へ届けます。同時に、家族の音声をNICUの新生児へ届けることで、“世界初”の身体情報を伴う双方向オンライン面会を実現します。
2. 身体性情報伝送技術を活用したオンライン面会システム
本実証では、遠隔の家族には、保育器の中の新生児の映像・音声に加えて、新生児の心拍に同期する「トクントクン」という心臓の鼓動の触感(振動)を提示します。
振動の情報は、病院現場の負担や新生児へのリスクを高めることがないよう、センサーを新たに新生児に装着するのではなく、ベッドサイドモニタから心拍のタイミング情報を取得し、それに合わせて家族が持つデバイスの振動スピーカーでモデル心音を再生する形を採用しています。また、同時に家族の声を保育器に設置したスピーカーから届けることで双方向のやり取りも可能です。
従来のオンライン面会では、新生児の映像を見る視覚情報のみのものが主流でした。多くの親にとって好ましい体験である反面、触れたいのに触れられないという葛藤もありました。この取り組みは、身体性情報伝送技術を活用することで、離れていてもわが子に触れているような体験を家族に届ける新しい試みです。
これまでに、NICUに入院している新生児の父母に院内の別室で体験してもらったところ、コンピュータ画面でわが子の様子を見るだけの通常のオンライン面会と比べて、わが子の存在をより身近に感じられた程度は、統計的にも有意に高い結果となりました。インタビューでも、「抱っこしている感覚を視覚・触覚の双方で感じられた」「心拍を感じることで抱いているような感覚になり、寂しさが軽減した」といった声が寄せられました。これにより、触覚情報が付与されることで、離れていても、触れ合いを通じて育まれる親子の絆や愛着の促進につながる可能性が示されました(4)。
本実証では、実際の利用シーンを想定し、新生児が入院する大学病院と、家族のご自宅や、ご自宅の近くの病院(県立病院でも行う予定)とを遠隔でつなぎ、複数拠点間での運用指針や、祖父母・きょうだいを含む年齢・立場の異なる家族での利用しやすさについて検証します。
3. 実証概要
● 期間
2026年2月7日(土)~ 2026年3月31日(火)
● 実施場所
○ 岩手医科大学附属病院
・総合周産期母子医療センター 新生児集中治療室(NICU)
・小児科外来 (〒028-3694 岩手県紫波郡矢巾町医大通1-1-1)
○ 北上済生会病院
・小児科外来 (〒024-8506岩手県北上市九年橋3-15-33)
○ 岩手県内の県立病院(予定)
○ 患者家族の自宅等
● 実施内容
NICU入院中の赤ちゃんと遠隔の家族をオンラインで接続し、以下を体験・評価。
・家族へ、赤ちゃんの映像・音声をデバイスで提示
・家族へ、赤ちゃんの心拍に同期した振動触覚をデバイスで提示
(3月7日よりNTT社会情報研究所と共同で身体性情報伝送技術を検証)
・家族へ、デバイスの質感から“赤ちゃんに触れている感覚”に近い体験を提供
・家族へ、デバイスを胸に抱き、カンガルーケアのような体験が可能
・家族から、赤ちゃんへ声がけが可能

● 検証項目
年齢・立場の異なる家族での利用しやすさ
医療機関での導入容易性
日常生活環境での使用負荷
多施設展開に向けた要件整理
社会実装に向けた価値評価
4. 役割分担
<岩手医科大学>
・基幹病院として、全体コーディネイト、統括
・NICU、小児科の実証環境提供、医師サポート
・研究開発支援
・医療スタッフによるケア・評価
・参加家族の案内・フィードバック取得
・連携病院との調整とりまとめ
<北上済生会病院>
・参加病院として、実証環境提供、医師サポート
・医療スタッフによるケア・評価
・参加家族とのフィードバック取得
<岩手県>
・実証実現に向け拠点調整および環境提供
<NTT東日本>
・実証システムの提供、技術サポート
・参加機関と家族の連携調整、利用環境整備
・アンケート実施しフィードバック分析
・社会実装に向けたビジネスモデルの検証

5. 参考情報
(1) オンライン診療導入による医療的ケア児支援
https://business.ntt-east.co.jp/case/2022/n010/
(2) モバイルタッチ実証実験について
https://www.ntt-east.co.jp/iwate/information/detail/pdf/20220412_01.pdf
(3) NTT技術ジャーナル(身体性情報伝送技術 特集)
https://journal.ntt.co.jp/wp-content/uploads/2025/07/nttjnl5102_20250801.pdf
(4) A. Murata, K. Komazaki, Y. Toya, A. Matsumoto, G. Sotodate, M. Akasaka, and J. Watanabe “Supporting Family Bonds with Hospitalized NICU Extremely Preterm Infants through an Embodied Online Visitation System,” IDC 2025, New York, U.S.A., June 2025
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