妊娠期におけるたんぱく質栄養状態には、特定の血中アミノ酸濃度が関係していることを確認
~第13回日本DOHaD学会学術集会「優秀演題賞」受賞/学術雑誌『BMC Pregnancy and Childbirth』掲載~
森永乳業は、現在の日本の重要な社会課題である妊婦や若年女性の「やせ」・低栄養と、それにより生じる出生体重低下などの、お母さんと赤ちゃんの様々な健康リスクの改善に向けて研究を進めています。このたび、北海道大学病院産科 馬詰 武 准教授らとの共同研究により、妊娠期におけるたんぱく質栄養状態には、特定の血中のアミノ酸濃度が関連していること、さらにその特定のアミノ酸を含む動物性たんぱく質の摂取がたんぱく質栄養状態の維持・向上に有用である可能性が示されました。これらの研究成果は、2025年8月2日~3日に開催された第13回日本DOHaD学会学術集会※1にて発表し、優秀演題賞を受賞しました。また、学術雑誌『BMC Pregnancy and Childbirth』に2025年8月14日に掲載されました。
1.研究の背景・目的
食事として摂取したたんぱく質は、そのまま栄養として利用されるわけではありません。たんぱく質は複数のアミノ酸が結合してできており、食事として摂取したたんぱく質は、消化によりアミノ酸に分解されて体内に吸収されます。これらのアミノ酸は血液を通じて全身に運ばれ、からだを形作る様々なたんぱく質に作り替えられて健康を支えています。従って、体内のたんぱく質の栄養状態は、単なる総摂取量だけではなく、消化・吸収や、からだにとって必要な量の各種アミノ酸が供給されているかなどの、様々な要因の影響を受けます。
特に妊娠期のたんぱく質栄養状態の悪化は、低出生体重児の出産リスクや、生まれた赤ちゃんの将来的な健康リスクを高める可能性があります。そこで、妊娠期のたんぱく質栄養状態に、血中のどのアミノ酸が関連するのか、さらにそれらのアミノ酸がどのような種類のたんぱく質摂取量と関連するのかを明らかにすることを目的に、本研究を実施しました。
2.研究方法
北海道大学にて実施された観察研究に参加した妊婦115名のデータを用い、妊娠期のたんぱく質栄養状態と、血中のアミノ酸(必須アミノ酸:トリプトファン、スレオニン、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、イソロイシン、ヒスチジン、メチオニン、リジン)濃度およびたんぱく質源ごとの摂取量との関連性を解析しました。
たんぱく質栄養状態の指標として、妊娠期の栄養摂取量や低出生体重児の出産リスクと関連することが報告されている血中アルブミン酸化還元バランス※2を用いました。
3.主な結果
・たんぱく質栄養状態が悪い妊婦では、特定の血中アミノ酸(トリプトファンやスレオニン)の濃度が低いことが示されました。
・妊娠期の血中の各アミノ酸濃度は、たんぱく質源およびその摂取量によって異なる影響を受けることが確認され、特に動物性たんぱく質の摂取量の多さがトリプトファンやスレオニンの血中濃度の多さと関連することが示されました。
これらの結果から、動物性たんぱく質の摂取は血中トリプトファンおよびスレオニンの供給源となり、妊娠期におけるたんぱく質栄養状態の維持・向上に有用である可能性が示されました。

4.今後の展望
本研究は、妊娠期のたんぱく質栄養状態には、特定の血中アミノ酸濃度が関係していることが示唆され、さらにはそれらのアミノ酸の供給源として動物性たんぱく質の摂取が有効である可能性が示されました。今後、妊娠期のたんぱく質栄養状態を維持・改善するために適切な「たんぱく質源ごとの摂取量」が明らかになれば、妊婦や生まれてくる赤ちゃんの健康増進に寄与できる可能性があります。本研究で得られた知見を活用し、妊娠期のお母さんや生まれてくる赤ちゃんの栄養改善のためのサービスや食品の開発を目指します。
森永乳業はこれからも、赤ちゃんからシニアの方まで、さまざまなライフステージに応じて栄養や健康を支えるための研究開発に取り組んでまいります。
※1 DOHaD
DOHaDとは、Developmental Origins of Health and Diseaseの略で、胎児期や生後早期の環境が将来の体質や疾病リスクに影響を及ぼすという概念です。特に、妊娠期の母体の低栄養による栄養状態の悪化が、生まれてくる赤ちゃんの将来的な生活習慣病リスクを高めることが指摘され、盛んに研究が行われています。
※2 血中アルブミン酸化還元バランス
血中のアルブミンは「酸化型」と「還元型」に大別され、総アルブミンにおける還元型アルブミンの割合を「アルブミン酸化還元バランス」と称します。たんぱく質栄養状態が悪化すると、還元型の割合が減少(相対的に酸化型の割合が増加)することが報告されています。
論文名:Relationship between dietary protein intake and serum essential free amino acid concentrations in Japanese pregnant women: an observational study
著者名: Takuya Shibasaki1, Hirohiko Nakamura1, Takuya Kamimura1, Fuka Tabata1, 2, Satomi Kawakami1, Mayumi Inubashiri3, Masayoshi Hosaka3, Kiwamu Noshiro4, Takeshi Umazume4, Kazuhiro Miyaji1
(1森永乳業研究本部、2北海道大学大学院医学研究院公衆衛生学教室、3福住産科婦人科クリニック、4北海道大学病院産科)
雑誌名: BMC Pregnancy and Childbirth (2025)
(DOI: https://doi.org/10.1186/s12884-025-07962-w)
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