「五輪で一皮剥けた選手たちの戦いに注目です」。為末大がロンドン五輪を振り返り、陸上ワールドツアー「ダイヤモンドリーグ」への期待を語る・・・第13戦チューリッヒ、最終戦ブリュッセルをWOWOWで生中継
5月から五輪を挟み、4ヶ月にわたって世界各地で行われてきたダイヤモンドリーグも8月30日の第13戦チューリッヒ、9月7日の第14戦ブリュッセルでいよいよファイナルを迎える。ここでは、ファイナルを直前に控え、ダイヤモンドリーグを含めた今季の海外選手の活躍や残り2戦のみどころ、さらには来年への展望などを01年・05年世界陸上400mH銅メダリストの為末大さんに話を伺った。
Q:ダイヤモンドリーグやロンドン五輪で特に印象に残った選手はいましたか?
為末:五輪前は一時不調も騒がれていましたが、結局、今年もU.ボルト(ジャマイカ)の1年だったな、という感じです。若い選手の活躍も印象に残りました。400mのK.ジェームス(グレナダ)や世界記録を出した800mのD.ルディシャ(ケニア)とか。あとは、400mHのF.サンチェス(ドミニカ)の五輪前と五輪での豹変ぶりは、個人的には非常に面白かったです。
Q:サンチェスの五輪での活躍(※)はどのように見られましたか?
※34歳にして2大会ぶりの金メダルを獲得。01年エドモントン世界陸上では1位がサンチェスで、銅が為末さん
為末:01年のエドモントンで一緒に戦ったサンチェスやJ.ムジック(チェコ)ら“同窓生”の中で、まだ現役でがんばっている選手がいて、自分も含めて五輪でもう一花咲かせようというのを「ないだろうな」と思いつつも狙っていたんです。でも、結局みんなだめで、サンチェス選手にはその分がんばってほしいという思いはありました。本当に金メダルをとるとは思ってもいませんでしたけど。あまり、他の選手が勝って嬉しいと思うことはないんですが、嬉しかったし、背景も知っていたから、よく勝ったなと思いました。
Q:五輪前にダイヤモンドリーグを4連勝していたJ.クルソン(プエルトリコ)の優勝を予想されていたのでは?
為末:そうですね。400mHは予選から決勝までのレースマネージメントが必要なんですが、若いクルソン選手には、まだそこのところが備わっていなかったかもしれませんね。サンチェス選手の術中にはまった感じ。でも、今後は、クルソンや、20歳のJ.ゴードン(トリニダードトバゴ)など若手が台頭してきていて、来年の世界陸上あたりから世代交代が始まるのではないでしょうか。
Q:今後、400mHの中心となっていきそうなクルソンの魅力とは何ですか?
為末:彼が10代の頃、まだすごく弱いときに一緒に出場したことがあるんですが、大きい選手にはまりがちなハードル手前でちょこちょこ足を合わせていく感じがないです。足はそんなに速くないと思いますが、198cmの長身にしては器用。昔いたH.アルソマイリー(サウジアラビア/01年エドモントン世界陸上4位)が良かった時のようで、身体は大きいのに上手。今後が楽しみです。(※クルソンは第13戦のチューリッヒに出場予定)
Q:ダイヤモンドリーグ残り2戦の見どころはどんなところでしょうか?
為末:やはり記録じゃないですかね。チューリッヒもブリュッセルも記録が出やすい所なので好記録を期待できると思います。ボルトとY.ブレイク(ジャマイカ)の直接対決も見られるならば、ぜひ見たい。あとは、五輪を経て、一皮むけた選手が世界の舞台でどのような戦いをしてくるかは、来年を占う意味でもぜひ注目をしてほしいです。
Q:海外選手は五輪後の大会ということでモチベーションが下がるようなことはないのでしょうか?
為末:自分も01年のエドモントン世界陸上の一週間後にチューリッヒ(※当時は前身のゴールデンリーグ)に出場した経験がありますが、挑戦してみて、世界と日本の違いに驚きました。日本人は五輪に向けて一気に盛り上がって、その後はストンと落とす感じですが、世界は流れの中に五輪があるととらえていて、なだらかな山を登って、なだらかに下りていく感じなんです。世界大会が終わって、1週間後に大会というのは世界では当たり前です。
Q:ボルト、ブレイクは世界新を出せそうですか?
為末:ボルトの世界記録は分かりませんが、五輪の走りから評価すると、100mでも200mでも世界記録に近い記録がでてもおかしくないと思います。ブレイクもローザンヌ(向風0.1で100m9秒69)では風が追ってれば、9秒5台が出てもおかしくなかったと思うので、風次第では期待できるのではないかと思います。
Q:チューリッヒでダイヤモンドリーグに初参戦するディーン元気選手(早稲田大)には、どのような気持ちで挑んでほしいですか?
為末:とにかく思いっきり挑んでほしいです。“世界のディーン”を目指すスタートになれれば。いきなり五輪で活躍するのは難しいですから、そのきっかけにしてほしいです。
Q:ディーン選手の印象というのは?
為末:ふてぶてしくていいですね(笑)。ふてぶてしさは世界で戦っていくためには大事。日本の選手は人がいいし、優しいし、常識的になりすぎたりしますから。
Q:来年、ダイヤモンドリーグに挑戦してほしい選手はいますか?
為末:誰と言うか、女子選手にぜひ挑戦してもらいたいです。男子は朝原宣治さんなど、過去に海外での試合を頻繁に経験されている方がコーチにいて、それなりに文化の継承もなされていますが、女子選手で過去に、継続的に海外を回った選手はほとんどいません。誰か一人が行くことができれば、今後の日本の取組み方も変わってくると思います。福島千里選手(北海道ハイテクAC)などは、どんどん挑戦していいと思います。日本人は階段を一段一段上がるように成長していくことを意識する人が多いですが、世界では5段飛ばしで上がって、そこでしばらくして足踏みしてなんて成長は当たり前にあります。準備ができてから挑戦するなんて思わなくていい。行けるんであれば、行ける時に行くべき。階段を一気に飛ばして上がる成長も体験してほしいです。世界的な水準に近い100mの山縣亮太選手(慶応大)や400mHの岸本鷹幸選手(法政大)あたりにもぜひ挑戦してほしいです。
ダイヤモンドリーグも残すところあと2戦。ツアーチャンピオンが決まる大注目の2戦をWOWOWプライムでは生中継でお届けする!
■詳しい内容はWOWOWオンライン 陸上ワールドツアー ダイヤモンドリーグへ!(wowow.co.jp/diamond)
http://www.wowow.co.jp/sports/diamond/
◆◆◆ダイヤモンドリーグ放送予定◆◆◆
・第13戦 チューリッヒ(スイス)
8月30日(木)深夜2:50[WOWOWプライム]※生中継
・最終戦 ブリュッセル(ベルギー)
9月7日(金)深夜2:50[WOWOWプライム]※生中継
・陸上ワールドツアー ダイヤモンドリーグ 2012 完全版
2012シーズン、陸上ダイヤモンドリーグ総集編。第1戦ドーハから最終戦ブリュッセルまで振り返る。ウサイン・ボルト、ヨハン・ブレイク、サリー・ピアソンらの特集も!
9月30日(日)よる7:30[WOWOWライブ]
Q:ダイヤモンドリーグやロンドン五輪で特に印象に残った選手はいましたか?
為末:五輪前は一時不調も騒がれていましたが、結局、今年もU.ボルト(ジャマイカ)の1年だったな、という感じです。若い選手の活躍も印象に残りました。400mのK.ジェームス(グレナダ)や世界記録を出した800mのD.ルディシャ(ケニア)とか。あとは、400mHのF.サンチェス(ドミニカ)の五輪前と五輪での豹変ぶりは、個人的には非常に面白かったです。
Q:サンチェスの五輪での活躍(※)はどのように見られましたか?
※34歳にして2大会ぶりの金メダルを獲得。01年エドモントン世界陸上では1位がサンチェスで、銅が為末さん
為末:01年のエドモントンで一緒に戦ったサンチェスやJ.ムジック(チェコ)ら“同窓生”の中で、まだ現役でがんばっている選手がいて、自分も含めて五輪でもう一花咲かせようというのを「ないだろうな」と思いつつも狙っていたんです。でも、結局みんなだめで、サンチェス選手にはその分がんばってほしいという思いはありました。本当に金メダルをとるとは思ってもいませんでしたけど。あまり、他の選手が勝って嬉しいと思うことはないんですが、嬉しかったし、背景も知っていたから、よく勝ったなと思いました。
Q:五輪前にダイヤモンドリーグを4連勝していたJ.クルソン(プエルトリコ)の優勝を予想されていたのでは?
為末:そうですね。400mHは予選から決勝までのレースマネージメントが必要なんですが、若いクルソン選手には、まだそこのところが備わっていなかったかもしれませんね。サンチェス選手の術中にはまった感じ。でも、今後は、クルソンや、20歳のJ.ゴードン(トリニダードトバゴ)など若手が台頭してきていて、来年の世界陸上あたりから世代交代が始まるのではないでしょうか。
Q:今後、400mHの中心となっていきそうなクルソンの魅力とは何ですか?
為末:彼が10代の頃、まだすごく弱いときに一緒に出場したことがあるんですが、大きい選手にはまりがちなハードル手前でちょこちょこ足を合わせていく感じがないです。足はそんなに速くないと思いますが、198cmの長身にしては器用。昔いたH.アルソマイリー(サウジアラビア/01年エドモントン世界陸上4位)が良かった時のようで、身体は大きいのに上手。今後が楽しみです。(※クルソンは第13戦のチューリッヒに出場予定)
Q:ダイヤモンドリーグ残り2戦の見どころはどんなところでしょうか?
為末:やはり記録じゃないですかね。チューリッヒもブリュッセルも記録が出やすい所なので好記録を期待できると思います。ボルトとY.ブレイク(ジャマイカ)の直接対決も見られるならば、ぜひ見たい。あとは、五輪を経て、一皮むけた選手が世界の舞台でどのような戦いをしてくるかは、来年を占う意味でもぜひ注目をしてほしいです。
Q:海外選手は五輪後の大会ということでモチベーションが下がるようなことはないのでしょうか?
為末:自分も01年のエドモントン世界陸上の一週間後にチューリッヒ(※当時は前身のゴールデンリーグ)に出場した経験がありますが、挑戦してみて、世界と日本の違いに驚きました。日本人は五輪に向けて一気に盛り上がって、その後はストンと落とす感じですが、世界は流れの中に五輪があるととらえていて、なだらかな山を登って、なだらかに下りていく感じなんです。世界大会が終わって、1週間後に大会というのは世界では当たり前です。
Q:ボルト、ブレイクは世界新を出せそうですか?
為末:ボルトの世界記録は分かりませんが、五輪の走りから評価すると、100mでも200mでも世界記録に近い記録がでてもおかしくないと思います。ブレイクもローザンヌ(向風0.1で100m9秒69)では風が追ってれば、9秒5台が出てもおかしくなかったと思うので、風次第では期待できるのではないかと思います。
Q:チューリッヒでダイヤモンドリーグに初参戦するディーン元気選手(早稲田大)には、どのような気持ちで挑んでほしいですか?
為末:とにかく思いっきり挑んでほしいです。“世界のディーン”を目指すスタートになれれば。いきなり五輪で活躍するのは難しいですから、そのきっかけにしてほしいです。
Q:ディーン選手の印象というのは?
為末:ふてぶてしくていいですね(笑)。ふてぶてしさは世界で戦っていくためには大事。日本の選手は人がいいし、優しいし、常識的になりすぎたりしますから。
Q:来年、ダイヤモンドリーグに挑戦してほしい選手はいますか?
為末:誰と言うか、女子選手にぜひ挑戦してもらいたいです。男子は朝原宣治さんなど、過去に海外での試合を頻繁に経験されている方がコーチにいて、それなりに文化の継承もなされていますが、女子選手で過去に、継続的に海外を回った選手はほとんどいません。誰か一人が行くことができれば、今後の日本の取組み方も変わってくると思います。福島千里選手(北海道ハイテクAC)などは、どんどん挑戦していいと思います。日本人は階段を一段一段上がるように成長していくことを意識する人が多いですが、世界では5段飛ばしで上がって、そこでしばらくして足踏みしてなんて成長は当たり前にあります。準備ができてから挑戦するなんて思わなくていい。行けるんであれば、行ける時に行くべき。階段を一気に飛ばして上がる成長も体験してほしいです。世界的な水準に近い100mの山縣亮太選手(慶応大)や400mHの岸本鷹幸選手(法政大)あたりにもぜひ挑戦してほしいです。
ダイヤモンドリーグも残すところあと2戦。ツアーチャンピオンが決まる大注目の2戦をWOWOWプライムでは生中継でお届けする!
■詳しい内容はWOWOWオンライン 陸上ワールドツアー ダイヤモンドリーグへ!(wowow.co.jp/diamond)
http://www.wowow.co.jp/sports/diamond/
◆◆◆ダイヤモンドリーグ放送予定◆◆◆
・第13戦 チューリッヒ(スイス)
8月30日(木)深夜2:50[WOWOWプライム]※生中継
・最終戦 ブリュッセル(ベルギー)
9月7日(金)深夜2:50[WOWOWプライム]※生中継
・陸上ワールドツアー ダイヤモンドリーグ 2012 完全版
2012シーズン、陸上ダイヤモンドリーグ総集編。第1戦ドーハから最終戦ブリュッセルまで振り返る。ウサイン・ボルト、ヨハン・ブレイク、サリー・ピアソンらの特集も!
9月30日(日)よる7:30[WOWOWライブ]
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