EU Green Digital Coalitionが推進するNet Carbon Impact事業において、NEC農業ソリューションCropScopeによるネットカーボンインパクト検証レポートが公開
トウモロコシ、冬小麦、春小麦を対象に可変施肥の効果を検証。特に冬小麦では、施肥削減によるネットカーボンインパクトがトラクター稼働由来排出の約4倍に相当する結果に。

日本電気株式会社(以下、NEC)は、European Green Digital Coalition(以下、EGDC)(注1)が実施するNet Carbon Impact事業において、NECのスマート農業ソリューション「CropScope」(注2)の導入による脱炭素効果を定量的に検証した最終レポートが公開されたことをお知らせします。
最終レポートの掲載先はこちら:
https://www.greendigitalcoalition.eu/case-studies-deployment-phase/#agriculture
EGDCは、デジタル技術の活用によって社会全体の温室効果ガス排出を削減することを目的に、欧州理事会の要請を受けて欧州議会および欧州委員会の支援のもと設立された企業連合です。
本事業では、EGDCが開発した科学的な手法に基づき、デジタル技術を「使った場合」と「使わなかった場合」を比較することで、デジタル技術がもたらすネットカーボンインパクト(正味炭素影響)を削減効果として定量的に評価します。
ネットカーボンインパクト(正味炭素影響)について
ネットカーボンインパクト(正味炭素影響)とは、デジタル技術の導入によって削減される温室効果ガス排出量から、デジタル技術を導入するための機器の製造・運用・廃棄などに伴って新たに発生する排出量を差し引いた全体の実質的な排出削減量を示す数値です。機器の利用による排出増加も含めて評価するため、その技術の導入による社会全体での実質的な削減効果を客観的に評価することができます。
本ケーススタディの概要
今回のケーススタディは、NECのスマート農業ソリューション「CropScope」に搭載されている可変施肥機能を対象としました。可変施肥とは、畑全体に同じ量の肥料を撒くのではなく、作物の生育状況や土壌の状態に応じて、場所ごとに最適な量の肥料を撒く手法です。北海道の農場を対象に、CropScopeの可変施肥機能を「導入した場合」と「導入しなかった場合」を比較し、
-
可変施肥による肥料使用量の削減効果
-
肥料使用量削減によるネットカーボンインパクト
を総合的に評価しました。
その結果、CropScopeの可変施肥機能は、農業分野の温室効果ガス排出削減に確かな効果があることが確認されました。
可変施肥が脱炭素に寄与する仕組み
農業で使われる肥料には、作物の成長に必要な窒素が含まれています。しかし、作物が吸収する量を超えて肥料を撒いてしまうと、余分な窒素が土の中に残ってしまいます。この残った窒素は土壌中の微生物の働きによって形を変え、その過程で亜酸化窒素(N₂O)という温室効果ガスが発生します。
亜酸化窒素は、二酸化炭素の約270倍もの温暖化効果を持つ温室効果ガスです。そのため、可変施肥によって肥料の使用量を適切に減らすことは、亜酸化窒素の発生を抑え、社会の脱炭素に大きく貢献します。
作物別の削減効果(冬小麦・春小麦・トウモロコシ) (注3)
本レポートでは、冬小麦、春小麦、トウモロコシの3種類の作物を対象に、作付け期間全体を通じた効果を検証しました。作物ごとの主な検証結果は以下のとおりです。


すべての作物において、肥料使用量削減によるネットカーボンインパクトが栽培期間中のトラクター稼働に伴う平均的な排出量を大きく上回る結果となりました。
これらの結果は、CropScopeの可変施肥機能を導入することで、肥料の無駄を減らしながら、環境負荷の低減につながることを定量的に示しています。
温室効果ガス削減以外の副次的効果
本評価では、温室効果ガス削減に加え、以下の副次的効果も確認されています。
-
肥料コスト削減による農家の経済的メリット
-
肥料流出抑制による水質改善や富栄養化リスク、生態系への悪影響の抑制
-
土壌の有機物保持力向上などによる土壌健全性の改善
これらの効果により、デジタル技術を活用した可変施肥技術は農業の持続可能性と気候変動対策の両立に寄与すると期待できます。
今後に向けて
NECは、今回の取り組みで得られた知見を活かし、農業分野における脱炭素の推進に加え、農業由来のカーボンクレジット創出にも取り組んでまいります。
今後もデジタル技術を活用した社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメーション)の両立に貢献していきます。
<関連プレスリリース>
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001147.000078149.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001275.000078149.html
(注1) 欧州グリーン・デジタル連合(EGDC)は、EU理事会の要請に基づき、欧州委員会と欧州議会が支援する企業によるイニシアチブであり、デジタルソリューションが持つ排出削減の可能性を他のすべての分野に活用することを目的としています。
(注2) NECのスマート農業ソリューション「CropScope」について
https://jpn.nec.com/solution/agri/service/farm_analysis.html
(注3) 本ケーススタディの実施条件は以下のとおりです。

(注4) たいせつ農業協同組合(北海道)の農業用軽油の農業用免税軽油消費基準表および環境省の排出係数(軽油: 2.619 kgCO₂/L)を基に、トラクター作業を4回(耕起、播種、中耕、収穫)として算出。(参照:農業用免税軽油消費基準: http://www.jataisetu.or.jp/kouhou/R7menkeikikai.pdf、排出係数: https://www.env.go.jp/council/16pol-ear/y164-04/mat04.pdf)
<本件のお問い合わせ先>
NEC みらい価値共創部門 GX事業開発統括部
E-Mail:gx-pj@ptg.jp.nec.com
すべての画像
