「子どもの生活と学びに関する親子調査2024」結果 高校生のなりたい職業No.1は男女ともに「教員」 10年前と比較し、YouTuber、SEなどIT関連職の人気も上昇
東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所 共同研究プロジェクト 10年連続1.2万人回答<ランキング篇>
東京大学社会科学研究所(所在地:東京都文京区、所長:宇野重規)と株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山市、代表取締役会長兼社長:岩瀬大輔)の社内シンクタンクであるベネッセ教育総合研究所は、2014年に「子どもの生活と学び」の実態を明らかにする共同研究プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトでは、2015年以降、同一の親子(小学1年生から高校3年生、約2万組)を対象に10年間継続して調査(子どもの生活と学びに関する親子調査)を行い、12学年の親子の意識・行動の変化を明らかにしてきました。
今回の<ランキング篇>では、この調査をもとに、子どもの「なりたい職業」の結果を発表します。プロジェクトでは今回の分析結果を手がかりにして、これからの進路選択のあり方について、子ども本人やその保護者、学校教員をはじめとする教育関係者の皆さまとともに考え、具体的な情報や支援策を発信していきたいと思います。

子どもたちのなりたい職業(ランキング) 1)子どもたちのなりたい職業No.1 小4~6生は「プロスポーツ選手」、中学生は「プロスポーツ選手」と「教員」(同率)、高校 生は「教員」。【図表1】 2)男女別なりたい職業の違い 小4~6では、男子は「プロスポーツ選手」がダントツ人気で、「YouTuber・VTuber」が続 く。女子は「店員(花屋・パン屋など)」がNo.1。中高生では、男子は「ゲームクリエイタ ー」や「SE・プログラマー」、女子は「管理栄養士」や「薬剤師」が上位に入る。 【図表2-1~2-3】 3)ここ10年での変化 中高生のなりたい職業No.1が「教員」であることは、この10年変化なし。「YouTuber・VTu ber」が小学生でランク外から4位に、高校生で「SE・プログラマー」が13位から6位に上昇す るなど、デジタル化に応じた変化も。【図表3】 |
1)なりたい職業No.1
小4~6生では「プロスポーツ選手」、中学生では「教員」と「プロスポーツ選手」(同率)、高校生では「教員」。

*2024年調査の結果。「あなたには、将来なりたい職業(やりたい仕事)はありますか」という質問に「ある」と回答した者に、「あなたが一番なりたい職業 (やりたい仕事)を、具体的に教えてください」とたずねた結果(自由記述)を分類した。
*なりたい職業が「ある」と回答したのは、小4~6生1,872名、中学生1,403名、高校生1,100名。*★印は同順位(同数)であることを示す。
2)男女による違い
①小4~6:男子は「プロスポーツ選手」、女子は「店員(花屋・パン屋など)」がNo.1。

*注は図表1と同じ。
②中学生:男子は「プロスポーツ選手」、女子は「教員」がNo.1。

*注は図表1と同じ。
③高校生:男女ともに「教員」がNo.1

*注は図表1と同じ。
3)経年による変化
中高生のなりたい職業No.1が「教員」であることは、この10年変化なし。

*2015年調査の結果。「あなたには、将来なりたい職業(やりたい仕事)はありますか」という質問に「ある」と回答した者に、「あなたが一番なりたい職業 (やりたい仕事)を、具体的に教えてください」とたずねた結果(自由記述)を分類した。
*なりたい職業が「ある」と回答したのは、小4~6生2,595名、中学生1,997名、高校生2,031名。*★印は同順位(同数)であることを示す。
【解説】
子どもたちの「なりたい職業」の特徴と変化――10年にわたる追跡調査から
●調査の意義:デジタル化、グローバル化、働き方の多様化など、職業を取り巻く環境は大きく変化しています。そのようななかで、子どもに人気があるのはどのような職業なのでしょうか。子どもたちがどのような職業に憧れを抱き、将来どのようなキャリアを思い描いているのかを知ることは、社会の未来を考えるうえで重要な手がかりとなります。なぜなら、子どもたちの職業観や価値観は、時代の潮流や社会の変化を反映するとともに、教育やキャリア支援の方向性を考えるうえで貴重な情報を提供してくれるからです。このような意義から、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所の「子どもの生活と学びに関する親子調査」では、毎年、子どものなりたい職業を調べています。

●2024年調査の結果: 最新の2024年調査の結果をみると、小4~6の人気No.1は「プロスポーツ選手」で、2位に「店員(花屋・パン屋など)」、3位に「教員」がランクインしました。中学生では「教員」と「プロスポーツ選手」が同率1位、高校生では「教員」が1位となり、中高生では教員人気が高いことが明らかになりました。
●男女による違い:選択する職業には、男女で違いがみられます。小4~6では、男子の25%が「プロスポーツ選手」を選ぶなどダントツの人気で、これに「YouTuber・VTuber」「研究者・大学教員」が続きます。一方、女子は「店員(花屋・パン屋など)」が1位で、「看護師」「パティシエ」「保育士・幼稚園教員」が上位に入りました。中学生では、男子は「プロスポーツ選手」が小学生に引き続き1位で、「教員」「医師」「ゲームクリエイター」などがランクインしています。女子は「教員」が支持を集め、「看護師」「保育士・幼稚園教員」「医師」が続きます。高校生では男女ともに「教員」が1位であることに変わりありませんが、男子は「SE・プログラマー」や「医師」、女子は「看護師」や「保育士・幼稚園教員」などが上位です。
●経年による変化:2015年と2024年の調査結果を比較すると、子どもたちのなりたい職業には新しい傾向が現れています。たとえば、小学生では「YouTuber・VTuber」がランク外から4位に、高校生では「SE・プログラマー」が13位から6位に上昇しました。デジタル社会の進展を背景に、IT関連職が注目されるようになったことがうかがえます。一方で、人気職業は大きく変わらない部分もあります。「プロスポーツ選手」は小学生から中学生にかけての男子には、安定して上位にランクインしています。また、とくに「教員」が中高生の間で人気があり、この10年間一貫して1位を維持しています。
●教員が人気の理由:教員が人気の理由としては、まず子どもたちにとって最も身近な職業である点が挙げられます。また、男女ともに偏りなく人気があることも特徴的です。さらに、中学生・高校生と学年が上がるにつれて、夢を追う職業から資格を要する現実的な職業への志向が強まる点も、教員の人気が高まる背景にあります。一方で、近年では教員の採用倍率が低下しており、なり手不足が社会的な課題として指摘されています。その課題を解消するためにも、労働環境や処遇の改善を進めることで、教員という職業の魅力を高める必要がありそうです。
●さいごに:私たち研究プロジェクトでは、先に発信したプレスリリースで、なりたい職業を早期に決め、それが一貫していることが重要ではないとお伝えしました。職業をめぐる環境の変化が激しい今日、いま知っているわかりやすい職業を選ぶことが良いかもわかりません。それよりもむしろ、自分の多様な可能性を考え、いろいろな観点から進路について深く考える経験が大切です。そのような経験は、子どもの学習意欲や行動にプラスの関連があることが明らかになっています。子どもたちの進路は一人ひとり異なり、多様です。私たち大人にできるのは、子どもを型にはめるのではなく、考えるきっかけを与え、選択肢を広げ、ともに悩み、応援することです。今回の調査結果が、子どもたち自身が未来を考えるうえでの契機となり、周囲の大人がその過程を支えるためのヒントとなれば幸いです。
ベネッセ教育総合研究所のホームページから、調査結果をまとめたレポートをダウンロードできます。

【調査概要】
名称:「子どもの生活と学びに関する親子調査2015-2024」(第1-10回)
調査テーマ:
【子ども調査】 子どもの生活と学習に関する意識と実態
【保護者調査】 保護者の子育て・教育に対する意識と実態 ※小1~3生は保護者のみ実施
調査時期:各年7~9月
調査方法:2015年は郵送調査とWEB調査の併用。2016~20年は郵送調査、2021年は郵送調査とWEB調査の併用、2022~24年はWEB調査
調査対象:全国の小学1年生~高校3年生の子どもとその保護者(小1~3生は保護者のみ回答)
*本研究プロジェクトの調査モニター対象。以下は、各年のサンプルサイズ(親子ペア)。回収率は%。

「子どもの生活と学び」研究プロジェクトメンバー(所属・肩書は2025年5月時点):
●プロジェクト代表者
藤原翔(東京大学教授)、野澤雄樹(ベネッセ教育総合研究所所長)
●プロジェクトメンバー
耳塚寛明(お茶の水女子大学名誉教授)、秋田喜代美(学習院大学教授、東京大学名誉教授)、松下佳代(京都大学教授)、大野志郎(東京大学特任准教授)、木村治生(ベネッセ教育総合研究所主席研究員)、松本留奈(同主任研究員)、岡部悟志(同主任研究員)、朝永昌孝(同研究員)、小川淳子(同研究員)、佐藤昭宏(同主席研究員)
●ワーキンググループメンバー
小野田亮介(山梨大学大学院准教授)、数実浩佑(龍谷大学准教授)、猪原敬介(北里大学講師)、豊永耕平(近畿大学講師)
●アドバイザリーボードメンバー
石田浩(東京大学名誉教授・客員教授)、佐藤香(元東京大学教授)、香川めい(大東文化大学准教授)、大﨑裕子(日本社会事業大学准教授)
●スタッフ
中島功滋(ベネッセ教育総合研究所主任研究員)、大内初枝(同スタッフ)、渡邉未央(同スタッフ)
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