紛争下に生まれた新たな命2,900万人~2018年生まれの5人に1人が、武力と混乱の中で誕生【プレスリリース】

幼少期の環境による長期的な影響も懸念

病院内の子どもケアセンターで遊ぶ1歳7カ月のイエメンの男の子。(2019年1月撮影) © UNICEF_UN0280859_Huwais AFP Services病院内の子どもケアセンターで遊ぶ1歳7カ月のイエメンの男の子。(2019年1月撮影) © UNICEF_UN0280859_Huwais AFP Services

【2019年9月20日 ニューヨーク発】

本日、ユニセフ(国連児童基金)は、2018年に紛争の影響を受けている地域で生まれた子どもは2,900万人以上にのぼると発表しました。

アフガニスタン、ソマリア、南スーダン、シリア、イエメンを含む国々で続いている武力を用いた暴力により、2018年1年間で、世界で生まれた赤ちゃんの5人に1人以上が、紛争で混乱し非常に危険でストレスの多い環境下で人生の最初の時間を過ごしたことになります。

「すべての保護者は、子どもが生まれた最初の瞬間を大切にすることができるべきです。しかし、紛争下に生きる何百万もの家族にとって、現実は非常に厳しいものです」と、ユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォアは述べています。「世界では、暴力的な紛争によって親や乳幼児への不可欠なサービスが非常に限られています。栄養のある食料、安全な水、トイレ、子どもの成長や家族の絆を育む安全で健全な環境を得られない家族は、何百万にも上ります。すぐそこにある、明らかな危険だけでなく、こうした状況で人生をスタートした影響は、長期的に、悲劇を生み出す可能性を秘めています」

幼い子どもが、有害でトラウマとなるような出来事を、長期にわたりあるいは繰り返し体験すると、ストレスを管理する脳のシステムが休むことなく活動し続けるため、「毒性ストレス」(toxic stress)状態に陥ります。徐々に、ストレス化学物質は既存の神経結合を破壊し、新しいものも形成されないようにします。その結果、子どもたちは、学習、行動、身体的かつ精神的健康などに、長期的な影響を受けます。

乳幼児への紛争の影響の例として、紛争地域で働くユニセフ職員は以下のようなことをあげています。

「恐怖から震えが止まらない状態が何時間も続く、幼い子どもたちがいます。彼らは眠ることができず、すすり泣きをしているのも聞こえます。普通の泣き方とは違い、その声は、哀しく、弱々しいのです。また他には、深刻な栄養不良とトラウマに晒され、世界や周囲の人々から感情的に断絶されている子どもたちもいます。そうした子どもたちはうつろで、家族との交流さえできなくなります」と、イエメンのユニセフ職員は語っています。

「5歳の私の息子が過ごしているのは、爆発音、煙の匂い、それとともに聞こえてくる人々の悲鳴、パトカーや救急車のサイレンや負傷者を病院へ運ぶ車やバイクの鳴り止むことのないクラクションの音に囲まれた環境です。夜中にトラックが速度をあげて家の横を通り過ぎ、窓が振動で揺れると、息子は攻撃だと思い恐怖で目を覚まします」と、アフガニスタンのユニセフ職員は話しました。

「中には、何かを恐れ、とても不安でいっぱいの様子をした子どもたちがいます。一方で、非常に攻撃的な子どもたちもいます。彼らは、訪問者を恐れ、車両を目にするとすぐに逃げます。車は、戦闘を思い出させる、逃げなくてはならない戦争の兵器なのです」と、ソマリアのユニセフ職員は述べました。

「南スーダンで、暴力のために村を離れなければならなかった子どもたちへ人道支援を提供するために、最も到達するのが困難な地域に行ったことがあります。基礎的なサービスや医療・保健設備がなく、衛生環境に乏しく、食料もなく、トラウマの深い傷を負いながら、家族は生き延びるために奮闘しています。出会う子どもたちの目は、絶望を湛えています。紛争は、彼らから子ども時代を奪ったのです」と、南スーダンのユニセフ職員は訴えました。
 

 

パレスチナ・ガザ地区に設置されたユニセフのECDセンターで、保健員に笑顔を見せる生後10カ月の赤ちゃん。(2019年1月撮影) © UNICEF_UN0275530_Albaba AFP-Servicesパレスチナ・ガザ地区に設置されたユニセフのECDセンターで、保健員に笑顔を見せる生後10カ月の赤ちゃん。(2019年1月撮影) © UNICEF_UN0275530_Albaba AFP-Services

子どもの権利条約は、今年で採択から30年を迎えます。条約において、政府は紛争下にある子どもたちへの保護やケアを約束しています。しかし、国内外の紛争に見舞われている国が、過去30年のなかで最も多いのが現状です。そして、何百万人もの子どもたちの安全と幸福を脅かしています。近年、世界の紛争地域では、病院、保健センター、子どもにやさしい空間など、赤ちゃんや保護者へ不可欠なサービスを提供する施設が、攻撃を受けています。

紛争を生き延びた家族や幼い子どもたちへ安全な空間を提供し、そこで子どもたちは遊びや学びを通じてトラウマを癒すこと、さらに子どもたちへ心理社会的な支援を提供することは、ユニセフが行っている重要な人道的支援です。

養育者に対し、トラウマと向き合い対処していくのに必要な支援を提供することで、彼らが子どもたちと周囲の混沌とした環境との間の「バッファー(緩衝材)」の役割として機能し、子どもたちに健全な脳の発達に必要なケアを提供する、最良の機会につながります。

「保護者は、赤ちゃんと触れ合い関わることで、紛争による悲観的な神経学的影響から彼らを守ることができます。しかし、紛争下では、保護者自身も余裕がないことがほとんどです」と、フォアは話します。「まさに、家族に必要なのは平和です。しかし平和が訪れるまで、保護者も子どもも、直面している悲劇的な状況に対処するために、さらなる支援を切に必要としています。2,900万の新たな命と将来が、そこにかかっているのです」。

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■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。( www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する34の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■日本ユニセフ協会について公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国34の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。( www.unicef.or.jp )

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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