山田ルイ53世さんらひきこもり経験を語る 甲府市で理解広める全国キャ ラバン
見守りつつ「ほっとく勇気」
パルシステム連合会(本部:東京都新宿区大久保、理事長:渋澤温之)が企画委員を務める厚生労働省「ひきこもりに関する地域社会に向けた広報事業」の一環として、6都市を巡る「ひきこもりVOICE STATION全国キャラバン2026」が10月10日(土)、かいてらす(山梨県甲府市)とオンラインで開催され、総勢156人が参加しました。ひきこもりの経験を持つお笑い芸人の山田ルイ53世さんや支援活動をするソーシャルワーカーの芦沢茂喜さんらが登壇し、ひきこもりの経験や家族の声と思いを伝えました。

疲れ切ってからの「とりあえず」
イベントは、山田さんの人生の起伏を示す「人生ドラマグラフ」の紹介から始まりました。子どもの頃は、先生や大人に褒められることがモチベーションの全てだったという山田さんは、小学6年生の夏休み前に中学受験のため勉強に勤しむ友人の姿に感化され、自分も一目置かれたいと受験に臨み、難関校に合格しました。
中学校へ電車通学する近所の子はいない中、朝5時に起きて朝一番に登校し、成績優秀で部活でもすぐにレギュラーを取る絶好調の学校生活を送っていた山田さんは、中学2年生の登校中の失敗を機に家から出られなくなりました。山田さんは、失敗が原因だったのではなく、家に帰っても12時まで宿題をするような生活が続き、頑張り過ぎていた緊張の糸が切れたのであろうと自己分析します。
「きちんと頑張る」ことで中学受験の成功体験を得た山田さんは、勉強を始める前には、部屋の掃除をしてノートの角を揃えるなど30程度のルーティンをこなさないと何も身に付かないという完璧主義の強迫観念にとらわれるようになったと言います。
6年間のひきこもり生活を続けた20歳を前に、成人式のニュースを見て「同世代が遠くへ行ってしまう」と強い焦りを感じたそうです。これをきっかけに完璧を捨て「とりあえず玄関まで行こう」「靴につま先を入れてみよう」と「とりあえず」を積み重ねることで、外へ出られたと明かしました。


「リセット」はマイナスではない
アンバサダーを務めた芦沢さんは、当事者に寄り添う中で「とりあえず」のきっかけをつかむことは、簡単ではないと感じると話します。山田さんがひきこもり経験後、努力して大学に合格したのに周りに何も言わず中退して上京し芸人になるなど、人生の転換期で大きなリセットをしていることに着目します。
山田さんは、完璧主義のルーティンがバカバカしいと分かっているのにやめられず、極限まで疲れてしまったことをきっかけに、リセットして「とりあえず」に進めたと話します。過去の経験をゼロにして次に進むリセットは、決してマイナスなことではなく、偶然つかんだタイミングが大きな方向転換につながることもあると振り返ります。
芦沢さんは「どう声をかけたら響きますか」と聞かれますが、良い言葉をかけようと思っても見透かされると話します。社会とつながるタイミングは人それぞれで、きっかけになるかもしれないものを周りにばらまいておくしかないと話し、今回のイベントが1つの機会になればとしてトークを締めくくりました。
「別の人間」として「腹を括る」
続くパネルトークでは、南アルプス市のソーシャルワーカー池田理沙さんが加わり、芦沢さんが支援してきた佐藤さん(仮名)と母親がオンラインで登壇しました。佐藤さんは、小学生から不登校となり、40代までひきこもる生活をしていました。両親が高齢になり老人ホーム入居の検討をするなか、親の会に参加した母親が芦沢さんの話を聞き、「この人ならば」と思い支援を依頼したそうです。
家を退去することになった佐藤さんは、1カ月で1人暮らしの準備を進めて新居に移り、就労体験などから働き始めました。実家に居た時はもやもやとした気持ちを抱えていたと話しますが、今はがらりと生活が変わり工場に就職して数年が経ちます。仕事を始めたことで会員証を作る時に職業欄に記入でき嬉しかったと芦沢さんに伝えたエピソードなども紹介し、少しずつでもできることが増えていく喜びがあったと話します。
芦沢さんは母親に、急に1人暮らしをさせることに不安はなかったのかと問いかけます。母親は、不登校になった当初は自分で授業をするなど試みていたものの、これでは自分が疲れてしまうと思ったと話します。学齢期の間は、いろいろな所に連れ出そうとしていたけれど、気乗りしない様子だったと言います。
友人などに相談するなか「腹を括った方が良い」とアドバイスされ、親の会で初めて「このままでもいいか」と思えるようになったそうです。1人暮らしも「息子なら暮らしていける」と思い不安はなかったと話します。

池田さんは「お母さんが腹を括ると思えたのは、すごいことです」と受け止めます。支援をするなか多くの母親は、自分が何とかしなければと先回りして行動し、うっとうしがられて家庭不和につながることも多くあると話します。親子であっても「別の人間」という意味で「他人」であり、それぞれの人生の喜びや悲しみがあると思えるまでが大変だと言い「今後の人生も、まずお母さん自身を大切にして欲しいです」と言葉をかけました。
芦沢さんは「相談はエネルギーや勇気がいることですが、本人だけで抱えるのには限界があります。今日をきっかけに、みんなに支えてもらえばいいと思って欲しいです」と話し、トークを終えました。
会場で参加したパルシステム山梨 長野(本部:山梨県甲府市)の古家滋子理事長は「学校関係の仕事をしていた時、不登校へのイメージはネガティブで理解が広がっていないと感じていました。母親が笑顔でいることが大切という話もありました。地域の居場所づくりにも取り組む生協として、話を聞くだけなどでもできることがあればと思います」と感想を述べました。
ひきこもりボイス川柳で伝える思い
会場では、現在オンラインで募集をしている「ひきこもりボイス川柳」で作る「ひきこもりボイスカルタ」を紹介しました。当事者や家族の思いを川柳で表現し、一人ひとりの経験が誰かの気付きや理解を広げるきっかけになることを目指しています。
参加者はワークショップで、トークセッションの感想を共有し「私やあなたの生きづらさ」をテーマにした川柳を共同作業で作成しました。参加者それぞれが、何を感じ生きてきたのか話し合いながらキーワードを出し、様々な思いや経験を川柳にしたためました。
部屋にひきこもり、風呂にも入れないでいた家族を思い「久々の洗濯物に涙ぐみ」と1着分だけの着替えに長い時間と深い思いを込めた句や「夜散歩言葉にできない時を待つ」とひきこもりの息子と夜に歩き、時々発してくれる言葉に感じる喜びを詠んだ句など、それぞれの体験や心が動いた場面を伝え合いました。
残す2都市で34会場に
全国キャラバンは2022年から開始され、2025年度までに28都市で開催しており、今年度は大阪を皮切りに青森、山梨、岐阜、岡山、宮崎の6都市を巡っています。誰もが生きやすい社会を目指して当事者の多様な声を届けるため、各都市を訪れます。キャラバンは残す2つの都市で開催し、今年度で34会場に達します。

ひきこもりVOICE STATION全国キャラバン開催概要
【開催日時、開催都市@会場】
10月17日(土)岡山県岡山市@岡山国際交流センター/イベントホール
11月14日(土)宮崎県宮崎市@ひなたキャンパス/講堂
【スケジュール】
セッション1 13:00~14:20 パネルトーク
・ひきこもり経験者の体験談を通して当事者の声を聞き、理解を深める。
セッション2 14:30~16:00 ワークショップ
・生きづらさをテーマにグループで対話し、キーワードを拾い出し川柳にしたためる。
セッション3 16:10~16:30 参加者同士の交流タイム「ひきこもりボイスパーク」
・みんなで自由にゆるっと話せる交流の場。リラックスして感想や思いをシェア。
【申込はこちら】
【申込締切】各会場開催日前日17時
パルシステムはこれからも、多様な人たちとのつながりにより、さまざまな状況に置かれる人たちの声に耳を傾け、誰もが暮らしやすい地域づくりを進めていきます。
パルシステムの情報メディアKOKOCARA
https://kokocara.pal-system.co.jp/keyword/homebody/

パルシステム生活協同組合連合会
所在地:東京都新宿区大久保2-2-6 ラクアス東新宿、理事長:渋澤温之
12会員・統一事業システム利用会員総事業高2,689.6億円/組合員総数177.0万人(2026年3月末現在)
会員生協:パルシステム東京、パルシステム神奈川、パルシステム千葉、パルシステム埼玉、パルシステム茨城 栃木、パルシステム山梨 長野、パルシステム群馬、パルシステム福島、パルシステム静岡、パルシステム新潟ときめき、パルシステム共済連、あいコープみやぎ
HP:https://www.pal-system.co.jp/
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