シリア紛争9年:紛争下に生まれた子ども、480万人【プレスリリース】

過去5年で9,000人死傷

この5年間はマンビジに避難しており、子どもたちのために十分な食べ物を手に入れることができなかったと話すアラーさん。(2020年2月13日撮影) © UNICEF_UNI310539_Al-Issaこの5年間はマンビジに避難しており、子どもたちのために十分な食べ物を手に入れることができなかったと話すアラーさん。(2020年2月13日撮影) © UNICEF_UNI310539_Al-Issa

【2020年3月15日 アンマン(ヨルダン)/ニューヨーク 発】

ユニセフ(国連児童基金)は本日、9年前にシリアで紛争が始まって以降、この国に生まれた子どもはおよそ480万人に上り、さらに100万人が難民としてシリア周辺の国々で生まれたと発表しました。こうした子どもたちは、今もこの残酷な紛争によって深刻な影響を受け続けています。

先週シリアを訪問したユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォアは、こう述べました。「シリア紛争は今日、さらに不名誉な節目を迎えました。紛争が10年目に入り、何百万人もの子どもたちにとって、戦い、暴力、死、避難に直面している生活が、この先も続いていくのです。かつてないほどに平和が求められています」

公式なモニタリングが始まった2014年以降の確認されたデータによると、2019年までに
  • 9,000人以上の子どもが紛争で命を落としたり、けがをしたりしました
  • 7歳の幼い子どもを含む5,000人近い子どもたちが、戦闘に徴用されました
  • 学校や保健医療施設1,000カ所近くが攻撃に遭いました

これらは確認された数字ですが、子どもたちへの紛争の影響の実態はより深刻です。

「シリアは今、世界で最も複雑な状況を抱えた国のひとつです。子どもたちに深刻な影響を与えている北西部を含む複数の地域では、悲しいことに暴力と激しい紛争が続いていますが、一方でその他の地域では、子どもたちが、失った子ども時代を少しずつ取り戻し、ゆっくりと人生を立て直しつつあります」とフォアと共にシリアに入ったユニセフ中東・北アフリカ地域事務所代表のテッド・チャイバンは報告しました。「しかし、9年にわたる残酷な戦闘によって、この国が瀬戸際まで追い詰められているのは明らかです。私たちが出会った家族たちは、極端な場合、子どもを働かせたり結婚させたりせざるを得ない、と話していました。親がそのような決断を迫られることがあってはなりません」
 

2月26日の攻撃で破壊されたカンサフラ(Kansafra)小学校の教室。(2020年3月8日撮影) © UNICEFUNI310496_Suleiman2月26日の攻撃で破壊されたカンサフラ(Kansafra)小学校の教室。(2020年3月8日撮影) © UNICEFUNI310496_Suleiman

シリア北西部では、急激に低下する気温と厳冬の気候がすでに切迫している人道危機に加わって、何十万人もの子どもや家族が甚大な犠牲を強いられています。2019年12月1日以降に家を追われた人々は、57万5,000人の子どもを含む96万人以上に上ります。

さらに北東部では、出身国が60カ国以上に上る少なくとも2万8,000人の子どもたちが、最も基本的なサービスさえ利用できない避難民キャンプに留め置かれたままです。今年1月の時点で、母国に帰還した子どもはわずか765人です。

10年近い紛争が及ぼした広範囲にわたる影響には、以下が含まれます。
  • 学校の5校に2校は、破壊されたり損傷したり、または避難所や軍用施設として使われているため、使用することができません
  • 保健施設の半数以上が、閉鎖されています
  • シリア国内と近隣諸国で学校に行けない子どもは280万人以上に上ります
  • 身体的もしくは精神的障がいのある子どもの3分の2以上が、居住地域で必要なサービスを受けることができません
  • 生活必需品の価格は、紛争開始以来20倍に高騰しました

「シリア紛争の当事者や彼らを支援する人々は、この国の大量殺りくを止めることができずにいます。私たちの訴えは、はっきりしています。学校や病院への攻撃を止め、子どもたちを殺し傷つけるのを止めること。そして私たちが国境や境界線を越えて支援を待つ人々の元へ向かうためのアクセスです。あまりにも多くの子どもたちが、あまりにも長い間苦しみ続けています」とフォアは述べました。

ユニセフは、シリア国内と周辺諸国で広いネットワークを生かして子どもたちへの支援を続けています。昨年ユニセフは、
  • 75万人近い子どもたちに、はしかの定期予防接種を支援しました
  • 100万人以上の子どもたちに、心理社会的支援を提供しました
  • 300万人近い子どもたちに、公式/非公式の教育支援をしました
  • 給水システムを改善し、530万人以上の人々が安全な水を利用できるよう支援しました
  • 200万人近くの人々に、水やトイレ、衛生設備やサービスの支援をしました
 

イドリブ県北西部Ared al-Jeb難民キャンプで、ユニセフが支援する教室の前に座る12歳のウェアムさん。4歳のときに始まった紛争の記憶しかない。(2020年1月16日撮影) © UNICEF_UNI307512_anonymousイドリブ県北西部Ared al-Jeb難民キャンプで、ユニセフが支援する教室の前に座る12歳のウェアムさん。4歳のときに始まった紛争の記憶しかない。(2020年1月16日撮影) © UNICEF_UNI307512_anonymous

ユニセフは現在、こうした命を守るための支援プログラムを継続するために6億8,200万米ドルを必要としていますが、資金は不足しています。

「シリア紛争は、外交手段をもって解決するしかありません」とチャイバンは述べます。「人道支援によって戦いを終わらせることはできません。しかし、生きようとする子どもたちの命を守ることはできます。この地域、そして世界中で危機が起こっていますが、シリアの子どもたちを支え続けるために、支援者のみなさまの寛大なご支援を願っています」

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。( www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。( www.unicef.or.jp )

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会社概要

URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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