ベネッセ高等学院 中等部がベネッセ教育総合研究所と連携 不登校生徒の「主体的な学び」の支援に向けた、生成AI活用の研究成果を公開
AIのフィードバックにより生徒の「計画・振り返り」を後押し
株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山県岡山市、代表取締役社長:岩瀬大輔、以下:ベネッセ)が運営する、中学生向けフリースクール「ベネッセ高等学院 中等部」は、ベネッセ教育総合研究所と連携し、生徒の「主体的な学び」を支える、AI活用の可能性を検証する実践研究に取り組んでいます。
本実践研究では、「ベネッセ高等学院 中等部」で生徒の「主体的な学び」を進めるために行っている、日々の計画・振り返りに生成AIを組み込みました。生徒は朝にその日の計画を立て、夕方に一日の活動を振り返り、その際にAIからフィードバックを受けます。AIのフィードバックの内容によって、計画・振り返りの記述にどのような違いが生まれるのかを検証しました。
研究では、生徒をA)「AIが定型の挨拶のみを返した」グループ(挨拶のみ群)、B)「AIが生徒の記述内容に応じたヒントを示した」グループ(ヒント提示群)、C)「AIが生徒の記述内容に応じた例文を示した」グループ(例文提示群)の3グループに分け、これらを比較しました。その結果、B)ヒント提示群およびC)例文提示群では、A)挨拶のみ群に比べて、計画や振り返りの内容を書けた日の割合が高い値を示しました。また、夕方の振り返りに具体的な内容を書けた日の割合にも違いがみられました。これらの結果はAIのフィードバックが、「計画・振り返りの内容を書き始める一歩を支える」こと、そして、「生徒の振り返りを具体的にする手がかりとなる」可能性を示しています。
不登校を経験した生徒の中には、生活や学習のペースを整えることに難しさを感じる生徒もいます。一人ひとりが「主体的な学び」を進めるためには、自ら目標を立て、状況に応じて行動を調整し、振り返りながら次の一歩につなげる「自己調整」の力が重要です。今回の結果は、こうした計画や振り返りを生成AIがサポートできる可能性を示唆しています。一方、AIに答えを委ねたり、生徒支援をAIだけに任せたりするのではなく、生徒の取り組みや状態を教職員が見取り、必要に応じて人の支援につなげることも重要です。「ベネッセ高等学院 中等部」では、今回の実践を通じて、人とAIがそれぞれの強みを活かしながら、子どもたち一人ひとりの「主体的な学び」を支える新たな支援のあり方を検証し、運営に活かしていく予定です。
実践研究のサマリー
1.B)ヒント提示群およびC)例文提示群では、計画・振り返りの内容を書けた日の割合が高い
生徒の記述内容に応じてAIがフィードバックを返すヒント提示群・例文提示群では、計画や振り返りに関する内容を1つ以上書けた日の割合が、挨拶のみ群より高い値を示しました。特に夕方の振り返りでは、挨拶のみ群の64.6%に対し、ヒント提示群は94.3%、例文提示群は94.6%でした。
2.B)ヒント提示群およびC)例文提示群では、夕方の振り返りに具体的な内容を書けた日の割合が高い
夕方の振り返りで、「その日に何をしたか」を具体的に書けた日の割合は、挨拶のみ群が53.7%であったのに対し、ヒント提示群は76.8%、例文提示群は84.2%でした。「自分の状態や取り組み方を振り返る内容(自己モニタリング)」を書けた日の割合も、挨拶のみ群が54.0%であったのに対し、ヒント提示群は74.8%、例文提示群は76.5%でした。
■実践研究開始の背景
小・中学校の不登校児童生徒数は35万人を超え、多様な学びの充実や、一人ひとりに応じた学習支援の重要性が高まっています。一方、一人ひとりの状況に応じたきめ細かな支援を継続的に行うには、時間や体制上の限界もあります。こうした個別最適な支援を補完する手段の一つとして、生成AIに着目しました。教育現場でも生成AIの活用は広がっていますが、その多くは教材作成や授業支援などを目的とした活用が中心となってきました。こうした背景から、「ベネッセ高等学院 中等部」では、ベネッセ教育総合研究所と連携し、生成AIを生徒自身が考え始めるための「伴走者」と位置づけ、日々の計画や振り返りを支援する実践研究に取り組んでいます。なお、不登校または登校が難しい生徒や多様な進路・学習ニーズをもつ中学生を対象に、AIを活用して自己調整を支援する実践研究は、国内外でも先進的な取り組みの一つです。
■AIを活用した実践研究の概要
本実践研究では「ベネッセ高等学院 中等部」の生徒が日々の心の様子やその日の計画・振り返りを記録する「Beログ」に生成AIを組み込み、生徒を次の3グループに分けて生徒の記述内容にどのような違いが生まれるかを検証しました。
・「AIが定型の挨拶のみを返した」グループ(挨拶のみ群)
・「AIが生徒の記述内容に応じたヒントを示した」グループ(ヒント提示群)
・「AIが生徒の記述内容に応じた例文を示した」グループ(例文提示群)
<実践研究概要>
・実施期間:2026年6月22日(月)~7月3日(金)
・対象:ベネッセ高等学院 中等部の生徒 92名
・実践内容:
o 朝「今日の計画」、夕方「今日の振り返り」を記録シート「Beログ」に入力
o 生徒はWebアプリにログインし、自身の記録に応じて成長する植物へ水やりを行う
o 植物のAIが生徒の記述内容に応じてフィードバックを提示
o フィードバックは「挨拶のみ群」「ヒント提示群」「例文提示群」の3パターンで比較
・分析対象:703件の記録(朝418件・夕方285件)を分析
・記述分析の方法:生徒が記録した文章は、自己調整につながる内容が含まれているかという観点か
ら分類・採点。朝の計画は「何をするか」「実行できる内容か」「時間や量が示されているか」
「自分の状態を踏まえているか」の4観点、夕方の振り返りは「何をしたか」「その理由」「自分
の状態や取り組み方」「次に工夫すること」「次の行動」の5観点で分析。

※研究期間中は、利用できるAIフィードバックの内容がグループによって異なっていたため、公平性に配慮し、研究終了後に約2週間自由に利用できる機会を設けました。なお、この期間に得られたデータは、研究の分析には使用していません。
■実践結果①:ヒント提示群・例文提示群では、計画・振り返りの内容を書けた日*1の割合が高い
朝の計画では、挨拶のみ群が55.6%であったのに対し、ヒント提示群、例文提示群では71.3%、70.3%となりました(図1)。また、夕方の振り返りでは、挨拶のみ群が64.6%であったのに対し、ヒント提示群、例文提示群では94.3%、94.6%となりました(図2)。特に、夕方の振り返りでは、記述内容に応じたAIのフィードバックが、生徒が一日の出来事や学びを言葉にする第一歩を後押しした可能性があります。
*1:「内容を書けた日」とは、朝は「何をするか」「いつ・どのくらい行うか」など、夕方は「何をしたか」「どう感じたか」「次にどうするか」など、計画や振り返りに関する内容を1つ以上記入できた日を指します。


※朝の計画は84名、夕方の振り返りは64名を対象に、実際に記録した日のうち、計画や振り返りに関する内容を1つ以上書けた日の割合を、生徒ごとに算出しました。例えば70%の場合、記録した日の約7割で、計画や振り返りに関する内容を1つ以上書けたことを示します。
■実践結果②:ヒント提示群・例文提示群では、夕方の振り返りに具体的な内容を書けた日の割合が高い
さらに、夕方の振り返りに焦点を当て、「何をしたか」が具体的に書かれているか、「自分はどうだったか」を振り返っているかという、記述内容の違いを観点別に分析しました(図3・4)。「その日に何をしたか」を具体的に書けた割合は、挨拶のみ群が53.7%であったのに対し、ヒント提示群、例文提示群では76.8%、84.2%となりました(図3)。
また、「集中できた」「思ったより取り組めた」「途中で疲れてしまった」など、その日の自分の状態や取り組み方を振り返る内容(自己モニタリング)を書けた割合は、挨拶のみ群が54.0%であったのに対し、ヒント提示群、例文提示群では74.8%、76.5%となりました(図4)。記述内容に応じたAIのフィードバックが、生徒自身の出来事や状態を言葉にする手がかりになった可能性があります。


※夕方の振り返りを分析できた64名を対象に、実際に記録した日のうち、出来事の具体性(何をしたか)、自己モニタリング(自分はどうだったか)を書けた日の割合を、生徒ごとに算出しました。例えば70%の場合、記録した日の約7割で、その内容を書けたことを示します。

※実際の生徒の記録をそのまま掲載したものではなく、本実践研究の内容をもとに作成したイメージです。
■ 研究結果を受けて ベネッセ高等学院・中等部 学院長 上木原 孝伸 コメント
子どもたちと日々接していると、「何から始めればいいかわからない」「振り返ろうと思っても言葉にならない」という場面を数多く目にします。だからこそ、子どもたちが自分の気持ちや行動を少しずつ言葉にし、「今日はこれをやってみよう」「次はこうしてみよう」と、自分で次の一歩を考えられるようになることが大切だと考えています。
今回の実践を通じて、生成AIはその最初の一歩を後押しできる可能性を感じました。一方で、子どもたちの小さな変化に気づき、不安や迷いに寄り添いながら励ますことは、私たち教職員の役割です。AIが担えること、人だからこそ担えること。その両方を活かしながら、一人ひとりが「自分のペースで学び、自分で未来を選んでいける力」を育めるよう、これからも新しい支援のあり方を追求していきたいと考えています。

■「ベネッセ高等学院」および「ベネッセ高等学院 中等部」について
多様化する学びのニーズに応えるためにベネッセが2025年から取り組みを開始しました。高校生を対象とした通信制サポート校「ベネッセ高等学院」と、中学生を対象としたフリースクール「ベネッセ高等学院 中等部」の2つのプログラムを提供しています。生徒には、ベネッセがこれまで培ってきた教育サービスのノウハウを活用し、担任やメンターによるサポート体制のもと、日々の学習や将来の進路について支援します。
「ベネッセ高等学院」および「ベネッセ高等学院 中等部」では、本事業を通じて、学びの多様性に対応し、子どもたち一人ひとりが自分らしい学びの場と学び方を選び取り、将来の可能性を大きく広げていくことを支援してまいります。
【関連情報】
ベネッセ高等学院Webサイト:https://gakuin.benesse.co.jp/
ベネッセ高等学院 中等部 Webサイト:https://gakuin.benesse.co.jp/chu
Xアカウント:https://x.com/begakuin0417
【参考情報】
2026年8月30日開催「多様な学びカンファレンス2026」では、本実践研究に参加した生徒も登壇。
不登校支援におけるAI活用の可能性を議論
ベネッセは、2026年8月30日(日)に一般社団法人ICT CONNECT21が主催する「多様な学びカンファレンス2026」に参画します。本実践研究をもとに、「~デジタル・テクノロジーの活用~ 自律的な自己調整力を育む不登校支援」をテーマとしたパネルディスカッションを実施し、不登校児童生徒の主体的な学びを支えるAI活用の可能性について、教育現場・研究・当事者それぞれの立場から議論します。当日は、ベネッセ代表取締役社長・岩瀬大輔がファシリテーターを務め、ベネッセ高等学院・中等部学院長の上木原孝伸に加え、本実践研究に参加した生徒も登壇予定です。

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