新型コロナウイルス:子どもの99%が移動制限下~深刻な影響防ぐ、ユニセフ行動指針【プレスリリース】
【2020年4月9日 ニューヨーク 発】
ユニセフ(国連児童基金)事務局長のヘンリエッタ・フォアは、新型コロナウイルス(COVID-19)に対するユニセフの行動指針について以下の声明を発表しました。
* * *
世界はいま、共にウイルスという見えない敵と闘っています。私たちはCOVID-19の感染を回避し治療することに集中して取り組んでいるものの、現在のパンデミックの状況以上に深刻で、隠れた影響についてはまだ頭にありません。しかしそれにも向き合わなければならないのです。
COVID-19に感染している子どもや若者に限らず、すべての子どもたちは深刻な影響を受けています。パンデミックの子どもへの影響に対処するために今行動を起こさなければ、その影響は私たちの共通の未来に永久的に及んでしまうでしょう。
分析によると、世界の18歳未満の子どもと若者の99パーセント(23億4,000万人)が、COVID-19により何らかの移動制限を受けている186カ国のいずれかに暮らしています。また、すべての子どもの60パーセント(14億人)が、完全(7%)または部分的(53%)にロックダウンされている82カ国のいずれかに暮らしています。
私たちは、どのような危機においても、最も弱い立場にある子どもたちが過度に苦しむことを知っています。このパンデミックも例外ではありません。すべての子どもを苦しみから守り、命を救い、健康を守る責任があります。また、二次的な影響を防ぎ、最小限に抑えるため、また影響が長引かないよう緩和対策をとるために、COVID-19対策における判断が、入手可能な最良のデータ、リスク情報に基づいて行われなければなりません。
COVID-19の感染拡大により世界レベルでの景気後退の恐れがあっても、将来への投資の優先順位を下げてはなりません。教育、保護、保健と栄養、水と衛生への投資をいま増やすことで、この危機がもたらす影響を軽減し、将来の危機を回避する助けになります。世界が再び開かれた時、最も弱い保健システムのレジリエンス(回復力)が、将来の脅威をどれだけ乗り越えていけるかを示す基準になります。
そして、この危機に対応するために、世界中の国と地域社会が協力しなければなりません。過去2カ月間の苦しみから学んだように、ワクチンができるまで、コロナウイルスは世界中の人々にとって脅威になるでしょう。世界各国で、保健システムやその他の子どものための社会サービスを強化し、世界の開発目標の優先順位を守り取り組まなければなりません。
今週、ユニセフは最も弱い立場に置かれた子どもたちを守るための行動指針を打ち出しました。指針は以下の6つの柱からなります:
- 子どもの健康を保つ
- 子どもたちの継続した学びを支援する
- 子どものいる家庭を支援する
- 暴力、搾取、虐待から子どもを守る
- 弱い立場に置かれた子どもに水と衛生の支援を提供する
- 難民や移民の子ども、紛争の影響を受ける子どもたちを保護する
今行動を起こさなければ、この公衆衛生危機は子どもの権利の危機になるリスクがあります。私たちが連携して取り組むことによってのみ、何百万人もの子どもたちの健康、安全、学びを守ることができるのです。
* * *
【新型コロナウイルス(COVID-19)に対するユニセフの行動指針】
1.子どもの健康を保つ
保健システムを強化するための国際的な取り組みは、ウイルスと闘う上で大きな役割を果たします。具体的には、物資や防護具を影響を受けるコミュニティに確実に届くようにすることや、COVID-19を予防、診断、治療することにおいて医療従事者を訓練することが含まれます。しかし、過度な負担がかかった医療システムは、COVID-19の感染者よりも脅威晒されているとも言えます。
世界の最も貧しい地域では、肺炎、マラリア、下痢などの病気から身を守るためのサービスを含む、基本的かつ不可欠なサービスを必要とする子どもたちが、それを受けられないリスクがあります。保健医療システムの対応能力が限界をむかえると、乳幼児は予防可能な原因で命を落としてしまいます。
ユニセフは、政府とパートナー団体に向けて、妊産婦や新生児、子ども向けの保健サービスを維持することを求めます。これは、COVID-19による緊急のニーズを引き続き満たしながら、子どもの生存と成長を保障する予防接種への資金確保など重要な取り組みを推進することを意味します。COVID-19への対応は、長期的に保健システムを強化するものでなければなりません。
2.子どもたちの継続した学びを支援する
COVID-19の蔓延を防ぐため、世界中の学校が休校措置をとっています。保護者や教育関係者は、子どもたちが勉強を続けられるように新たな方法を模索し、対応に追われています。しかし、それでもすべての子どもがインターネット、本や学用品を利用できるわけではありません。
すべての子どもが平等に教育を受け続けられるようにするためには、もっと多くのことに取り組まなければなりません。ユニセフは、新技術がなくとも実現できる手段を含め、家庭学習の手段を拡充し、遠隔地および農村地域でのインターネット接続に優先して取り組むよう政府に求めます。 8億人以上の子どもが学校に通えていない今、教育予算を別の目的に転用するべきではありません。ユニセフはパートナー団体とともに、デジタル・ディバイドを埋め、子どもたちがどこにいても学習を続けられるよう、取り組みを継続します。
3.子どものいる家庭を支援する
COVID-19の社会経済的影響は、世界で最も弱い立場に置かれた子どもたちに最も強く及んでいます。以前より貧困状態にあった多くの子どもたちは、COVID-19への対応の結果、さらなる困難に直面するリスクがあります。
何百万人もの保護者が生計を立てるのに苦労しています。政府は社会保障、つまり命を守る保健ケア、栄養、教育支援を得られるプログラムや施策を拡充しなければなりません。
社会保障には、現金給付、食料や栄養面でのサポートが含まれます。これには、政府が雇用を守り、働く親を適切に支援するため企業と協力することも含まれます。
COVID-19の流行とそれへの対応による社会や経済への影響を軽減するために直ちに行動をとらなければ、すでに苦難に直面している数千万人の子どもたちが貧困に陥るでしょう。
4.暴力、搾取、虐待から子どもを守る
社会や経済の混乱によって、すでに暴力、搾取、虐待の危険に晒されている子どもたちは、さらに脆弱になります。孤立していると、家庭やオンラインで暴力に直面している子どもたちは助けを得にくくなります。そして、感染症と経済的困難によるストレスや偏見・差別は、家族の置かれている不安定な状況をさらに悪化させます。
このパンデミックが子どもの保護の危機になることを防がなければなりません。政府は、社会的距離およびその他のCOVID-19への対応を計画する際に、偏見・差別に直面している子どもたちを含む、弱い立場に置かれた子ども特有のリスクを考慮する必要があります。また、この病気により一時的に親から離れることになる子どもを支援し、暴力からの保護やこころの健康へのサポートを求める子どもたちの増加にも対応できるよう、連携する必要があります。
5.弱い立場に置かれた子どもに水と衛生の支援を提供する
適切な手洗いと衛生習慣を通じて自分自身と他の人を守ることは、これまでになく重要になっています。しかし、多くの子どもにとって、基本的な水と衛生設備は手の届かないところにあります。
遠隔地や、水が未処理または汚染されている場所に暮らし、安全な水を得ることができない子どもたちがいます。また、家がなく、スラム街や路上に暮らし、水や衛生設備を利用できない子どもたちもいます。
ユニセフは、これらの子どもを優先して支援するよう政府に呼びかけます。また、より多くの子どもたちが基本的な水と衛生設備を利用できるように、資金と支援を緊急に要請しています。
6.難民や移民の子ども、紛争の影響を受ける子どもたちを保護する
難民・移民の子ども、そして紛争の影響を受ける子どもは、パンデミックがなくても、日々、安全や幸福への言い表せないほどの脅威に直面しています。これらの多くの子どもたちにとって、基本的な保健ケアと施設へのアクセスは非常に制限されているとともに、密集した生活環境によって社会的距離を保つことが難しくなっています。
* * *
■ 新型コロナウイルスに関するユニセフの情報はこちらからご覧いただけます。
30億人が家で手洗いできず: https://www.unicef.or.jp/news/2020/0047.html
中南米、休校で9割以上が学校通えず: https://www.unicef.or.jp/news/2020/0056.html
コンゴ民、医療システムの崩壊: https://www.unicef.or.jp/news/2020/0063.html
南アジア、教育継続に多様な施策を: https://www.unicef.or.jp/news/2020/0070.html
ユニセフ日本人職員ビデオメッセージ: https://www.unicef.or.jp/news/2020/0068.html
■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。( www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。( www.unicef.or.jp )
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザーログイン既に登録済みの方はこちら
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像