世界予防接種週間:新型コロナで予防接種中断、はしか流行のおそれ【プレスリリース】
【2020年4月25日 ニューヨーク 発】
ワクチンが開発されるのを世界中が待っている間も、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは世界で広がり続けています。何百万人もの子どもたちが、予防接種サービスの中断により、はしか、ジフテリア、ポリオの予防接種を逃してしまうリスクに晒されています。WHO(世界保健機関)の発表した指針(注1)に従い、大部分の国がポリオの予防接種キャンペーンを中断し、25カ国がはしかの予防接種キャンペーンを延期しました。
COVID-19のパンデミック前でさえ、はしか、ポリオ、その他のワクチンは、毎年1歳未満の子ども約2,000万人に届いていませんでした。2018年には、世界で1歳未満の子ども1,300万人以上が予防接種をまったく受けておらず、その多くは保健システムの脆弱な国に暮らす子どもです。現在の混乱を考えると、これは2020年以降、壊滅的な大流行を招くおそれがあります。
「代償はこれまでにないほど大きくなっています。COVID-19が世界で広がり続ける中、子どもたちにワクチンを届けて命を守る活動は重要です」とユニセフの緊急保健支援上級アドバイザーであり予防接種部門チーフのロビン・ ナンディは述べました。「パンデミックがもたらした予防接種サービスの混乱により、何百万人もの幼い命が脅かされているのです」
【はしかの1回目の予防接種を受けなかった子どもの数/先進国上位10カ国(2010年–2018年)】(注2)
- 米国:286万8,000人
- フランス:68万人
- イギリス:58万5,000人
- イタリア:48万2,000人
- 日本:38万6,000人
- カナダ:36万3,000人
- ドイツ:19万5,000人
- オーストラリア:15万5,000人
- チリ:15万5,000人
- スペイン:14万1,000人
ユニセフの分析によると、2010年-2018年にはしかの1回目の予防接種を受けなかった子どもは世界で推定1億8,200万人(年間平均2,030万人)に上ります。これは、世界平均で1回目の予防接種率が86パーセントに留まっているからで、はしかの流行を防ぐために推奨される95パーセントをはるかに下回っています。予防接種を受けていない子どもが増えたことで、2019年には米国、イギリス、フランスなどの高所得国を含む国々で、はしかが流行しました。
低所得国の間では、COVID-19の前からはしかの予防接種率の低さはすでに憂慮されていました。2010年-2018年に、はしかの1回目の予防接種を逃した1歳未満の子どもの数が最も多かったのはエチオピアで、約1,090万人でした。続いて多かったのは、コンゴ民主共和国(620万人)、アフガニスタン(380万人)、チャド、マダガスカル、ウガンダ(それぞれ約270万人)でした。
ユニセフが新たにデータ化した地域別の予防接種率(注3)によると、はしかのみならず、予防接種率の低さはすでに深刻でした。アフリカでは、出生数の増加と予防接種サービスの停滞により、過去数年間で予防接種を逃した子どもの数は増えています。例えば、西部・中部アフリカはすべての地域の中で最も低く、ジフテリア、破傷風、百日咳の3種混合ワクチン(DTP3)の予防接種率が70パーセントに留まっています(ポリオは70パーセント、はしかは71パーセント)。これにより、コンゴ民主共和国などの国々ではしかやポリオが繰り返し流行しています。一方、南アジアでは、推定320万人の子どもが2018年に全く予防接種を受けませんでした。また、東部・南部アフリカでは、未接種の子どもの数は過去10年間ほぼ横ばいで、約200万人です。現在、これらの地域はいずれも、COVID-19と闘っています。
ユニセフは、通常の供給に追加して、流行のある地域に不可欠なワクチンを提供しています。例えばコンゴ民主共和国では、政府を支援し、北キブ州での予防接種活動を継続するためのワクチンと防護具を提供しています。北キブ州では1月1日以来、はしかの感染例が3,000件以上報告されています。また、ウガンダでは、1歳未満の子ども90万人に予防接種を行うため、二価経口ポリオワクチン(bOPV)を384万2,000回分調達しました。子どもたちは、1歳になる前にポリオワクチンを3回受けます。
世界が新しいCOVID-19のワクチン開発に向けて励む中、ユニセフとはしか・風疹イニシアチブ、GAVIアライアンスのパートナー団体は、各国政府と世界のご支援者に対し、以下のことを求めます。
- 医療従事者と地域の安全を守りながら、予防接種サービスを継続する
- パンデミック後に向けて、予防接種を逃したすべての子どもたちのために予防接種事業の強化計画を立てる
- 将来の予防接種プログラムをサポートするGAVIアライアンスを支援する。
- COVID-19のワクチンが利用できるようになったら、それを最も必要としている人々に届くようにする
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(注1) Protecting lifesaving immunization services during COVID-19: New guidance from WHO
https://www.who.int/immunization/news_guidance_immunization_services_during_COVID-19/en/
(注2) ユニセフとWHOによる、194カ国とパレスチナの2018年の国別予防接種率の推定値データに基づいています。 https://data.unicef.org/topic/child-health/immunization/
(注3) ユニセフは、世界の予防接種率の傾向などを地域別にまとめたPDF資料を発行しました。
https://data.unicef.org/resources/regional-immunization-snapshots/
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■ 新型コロナウイルスに関するユニセフの情報はこちらからご覧いただけます。
特設サイト: https://www.unicef.or.jp/kinkyu/coronavirus/
子どもの権利の危機を防ぐために: https://www.unicef.or.jp/news/2020/0069.html
はしか予防接種の中断: https://www.unicef.or.jp/news/2020/0081.html
コンゴ民はしか予防接種キャンペーン: https://www.unicef.or.jp/news/2020/0098.html
■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。( www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。( www.unicef.or.jp )
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