秋の特別展「文豪は戦の間に咲く―谷崎の戦争と平和」
㈱小学館集英社プロダクションが指定管理者として運営している芦屋市谷崎潤一郎記念館では、9月13日(土)より秋の特別展「文豪は戦の間に咲く―谷崎の戦争と平和」を開催します。

鹿鳴館のざわめき華やかな東京に、谷崎潤一郎(1886~1965)は生まれます。「脱亜入欧」の明治国家は、植民地となる危機を背に、列強と対等自立の関係を築こうとしていました。武力を背景に、周辺アジア諸国への支配をともなう「帝国日本」の自立への道です。
20代半ばの谷崎が「刺青」(1910)で文壇デビューを果たす頃、日本は帝国の輪郭をようやく明らかにします。欧米列強に連なった日本は、やがて、人類はじめての世界戦争、第1次世界大戦(1914~18)に参戦し戦勝国となります。ヨーロッパが主戦場のこの大戦では、日本の損害は小さく、大きな経済的恩恵がもたらされました。その好景気も背景に、近代化が進展。都市大衆社会が勃興し、「郊外」という新たな居住圏も出現して、新しい生活様式と文化が発展していきます。大正デモクラシーとその文化を謳歌した、戦後平和の時代でした。一方で、帝国支配の展開は、日本社会の視界を広げ世界観を多様にしながらも、やがて国際的な摩擦を生み出していきます。そのような動きの下、谷崎は作家活動を本格化させていきました。
そして、「細雪」は、郊外に暮らす新しい中産市民の、穏やかで豊かで美しい日常を描いて谷崎生涯の代表作となります。この名作は、第1次大戦以降の日本と世界の変容を家族の日常の中にとらえ返し、普遍的価値にまで昇華させたのでした。物語は、日本と中国との戦争が始まる前年の1936年秋に始まり、1941年春に幕を降ろします。その冬、日本は第2次世界大戦に参戦、この世界戦争は日本の破局的な敗北によって終結しました。が、「細雪」の生活世界は、戦争の奔流をも埋没させ生き残って、新たな時代を導いていく力さえ秘めていたのです。
戦争と平和との間、大きく揺らぐ日本と世界の有り様を受けとめ、花開いていった文豪谷崎潤一郎。その豊かな作品世界を読み解きます。
◆関連イベント
学芸員が語る特別展「谷崎の戦争と平和」
日時:10月26日(日)14:00~15:00
場所:当館講義室
講師:井上勝博(当館学芸員)
定員:20名〈要予約〉※観覧料のみでご参加いただけます
【会 期】2025年9月13日(土)-12月7日(日)10:00-17:00(入館は16:30まで)
【休館日】月曜日(祝休日の場合は翌平日)
【観覧料】一般600(480)円、大高生400(320)円、中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金
※ 65歳以上、または身体障がい者手帳・精神障がい者保健福祉手帳・療育手帳をお持ちの方、ならびにその介護者の方1名は半額
※11月8日(土)、9日(日)は観覧無料
会場:芦屋市谷崎潤一郎記念館 主催:芦屋市谷崎潤一郎記念館
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像