はしか死者、2019年は20万人以上、予防接種率停滞への危機感高まる【プレスリリース】

2016~19年で、はしか死者は50%増

公益財団法人日本ユニセフ協会

首都カブールの小児科病院ではしかの予防接種を受ける2歳のムバシャーちゃん。(アフガニスタン、2020年9月撮影) © UNICEF_UNI368583_Fazel首都カブールの小児科病院ではしかの予防接種を受ける2歳のムバシャーちゃん。(アフガニスタン、2020年9月撮影) © UNICEF_UNI368583_Fazel

【2020年11月12日 ニューヨーク/ジュネーブ/アトランタ 発】
はしかは2019年に世界的に急増し、報告された症例数は過去23年間で最多となりました。 世界保健機関(WHO)と米国疾病管理予防センター(CDC)が発表したデータの中で強調されているのは、2019年の世界のはしかの症例が1996年以来最多の86万9,770人にまで増加したこと、またこうした増加はすべての地域で見られたということです。世界のはしかによる死亡者数は、2016年から50%近く増加し、2019年だけでも推定20万7,500人の命を奪っています。
 

アジス・アベバで実施したはしかの予防接種キャンペーンで、予防接種を受ける2歳のベムネットちゃん。(エチオピア、2020年7月撮影)© UNICEF_UNI353180_Tesfayeアジス・アベバで実施したはしかの予防接種キャンペーンで、予防接種を受ける2歳のベムネットちゃん。(エチオピア、2020年7月撮影)© UNICEF_UNI353180_Tesfaye

はしかの症例数は、2010年から2016年までは着実な成果がみられていましたが、その後2019年に向けて徐々に増加しました。歴史的に少ない症例数を記録した2016年と、2019年のデータとを比較した著者らは、はしかを含むワクチン(MCV1とMCV2)の2回接種を適切な期間内に子どもたちに接種しなかったことが、症例数と死亡者数の増加の主な要因であると指摘しています。

はしかの流行は、ウイルスから保護されていない人々が感染し、ワクチンを接種していないもしくは接種率の低い集団に感染を広げることで起こります。 はしかを制御し、流行と感染による死亡を防ぐためには、必要なMCV1とMCV2のワクチン接種率を95%に引き上げ、国レベル、地方レベルで維持されなければなりません。 MCV1の接種率は、世界的には10年以上にわたって84~85%で停滞しています。 MCV2の接種率は着実に上昇していますが、現時点でまだ71%です。 どちらの接種率も、はしか流行の抑制と感染による死亡を防ぐために必要とされる95%以上の接種率をはるかに下回ったままです。 

■新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックへの世界的な対応が、はしかの危機を悪化させてはならない

肺炎とはしかの症状があり、ヨラの診療所で血液検査を受ける2歳アダムちゃん。(ナイジェリア、2020年1月撮影) © UNICEF_UNI279429_Modola肺炎とはしかの症状があり、ヨラの診療所で血液検査を受ける2歳アダムちゃん。(ナイジェリア、2020年1月撮影) © UNICEF_UNI279429_Modola

報告されたはしかの症例数は2020年には減少していますが、COVID-19を抑制するために必要な努力は、予防接種の中断をもたらし、はしかの流行を予防し最小限に抑える努力を麻痺させています。11月時点で、26カ国でのはしかキャンペーンの休止により9,400万人以上の人々がワクチンを接種できないリスクにさらされています。これらの国の多くで、はしかの流行が続いています。 2020年に予定されていた予防接種キャンペーンが延期された国のうち、当初の延期後にキャンペーンを再開したのは8カ国(ブラジル、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、エチオピア、ネパール、ナイジェリア、フィリピン、ソマリア)のみでした。

「コロナウイルスの危機が起こる前、世界ははしかの危機に直面していました。それは過ぎ去ってはいません」とユニセフ(国連児童基金)事務局長のヘンリエッタ・フォアは述べています。「COVID-19のパンデミックによって医療システムはひっ迫していますが、ひとつの命に関わる病気との闘いによって他の病気との闘いを犠牲にしてはなりません。これは、拡大するCOVID-19パンデミックに対処すると同時に、ワクチンで予防可能なすべての病気に対する予防接種キャンペーンを継続するための資源を確保しなければならないということです」

■はしかの抑制ができない原因はいくつもあり、対処する必要がある
 

はしかの予防接種を受けた10歳のライッサさん(左)と7歳のメレくん(右)と生後1カ月のジェウちゃん(真ん中)。母親のブワンガさんははしかが原因で2人の子どもを亡くしている。(コンゴ民主共和国、2020年1月撮影) © UNICEF_UNI308205_Brはしかの予防接種を受けた10歳のライッサさん(左)と7歳のメレくん(右)と生後1カ月のジェウちゃん(真ん中)。母親のブワンガさんははしかが原因で2人の子どもを亡くしている。(コンゴ民主共和国、2020年1月撮影) © UNICEF_UNI308205_Br

世界の予防接種事業に取り組むパートナーは、影響を受けた国やリスクの高い国々の指導者や公衆衛生の専門家と連携し、はしかワクチンの入手と安全な輸送に取り組んでいます。 2020年11月6日、ユニセフとWHOは、はしかとポリオの流行防止と対応のための行動を緊急に呼びかけました。

はしか・風しんイニシアチブ(M&RI)は、ユニセフ、米国赤十字社、国連財団、CDC、WHO、そしてGaviやワクチンアライアンス、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などの世界的な予防接種パートナーが参加するパートナーシップで、現在のはしか危機に対処し、世界のあらゆる地域ではしかやその他すべての予防接種事業の遅れに対処するためのリソースを確保するために活動しています。M&RIが発表した戦略「はしか・風しん戦略フレームワーク2021-2030」は、予防接種を届けることで子どもたちを守ることができる国の予防接種システムを強化し、はしか撲滅に向けた世界の前進が損なわれる状況に対処するのに役立つでしょう。このパートナーシップによる戦略的転換は、すべてのワクチンの定期的な接種を強化し、はしかの流行を迅速かつ効果的に見つけ対応することに焦点を当てます。 

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■   ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org)
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■   日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(www.unicef.or.jp)

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会社概要

URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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