新型コロナウイルス:4分の1の医療施設で水設備なし~医療従事者の感染リスク高まる【プレスリリース】

公益財団法人日本ユニセフ協会

アビジャン郊外にある保健センターで、COVID-19から身を守るためにマスクと手袋を着用し、定期的に手を洗う看護師。(コートジボワール、2020年4月撮影) © UNICEF_UNI316667_Frank Dejonghアビジャン郊外にある保健センターで、COVID-19から身を守るためにマスクと手袋を着用し、定期的に手を洗う看護師。(コートジボワール、2020年4月撮影) © UNICEF_UNI316667_Frank Dejongh

【2020年12月14日 ジュネーブ/ニューヨーク 発】

約18億人の人々が、基本的な水設備のない保健医療施設を利用したり、そこで働いたりしているため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やその他の病気にかかるリスクが高まっていると、ユニセフ(国連児童基金)とWHO(世界保健機関)は警鐘を鳴らしました。

報告書「保健医療施設における水と衛生に関する世界の進捗状況:基礎的なことを第一に」(原題:Global progress report on WASH in health care facilities: fundamentals first)は、COVID-19によって明らかになった、不十分な感染予防・管理を含む保健システムにおける重要な脆弱性について指摘しています。

水と衛生サービスは、医療従事者と患者の安全を守るために不可欠であるにもかかわらず、それが優先されていないのが世界の現状です。世界の4分の1の保健医療施設は水道サービスを利用できず、3分の1はケアが提供されている場所で手指衛生を利用できません。10カ所に1カ所は衛生サービスを利用できず、また3分の1は廃棄物を安全に分別していないと言われています。

「医療従事者や治療を必要とする人々を、清潔な水も、安全なトイレも石けんもない施設に送ることは、彼らの命を危険にさらすことになります」とユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは述べました。「パンデミック以前にもこのような状況は確認できましたが、今年は特に、この不均等をそのままにしてはおけませんでした。COVID-19後の世界を再創造していく中で、子どもや母親が適切な水と衛生設備を備えた場でケアを受けることは、単に、できることやすべきことではなく、絶対に必要なことなのです」
 

予防接種を受けにきた子どもたちのために、保健センターに設置された手洗い設備。(ウガンダ、2020年10月撮影) © UNICEF_UN0357138_Kabuye予防接種を受けにきた子どもたちのために、保健センターに設置された手洗い設備。(ウガンダ、2020年10月撮影) © UNICEF_UN0357138_Kabuye

後発開発途上国(LDCs)47カ国は、最も悪い状況です。2つに1つの保健医療施設で基本的な飲料水がなく、4つに1つの保健医療施設に手指衛生設備がなく、5つに3つは基本的な衛生設備がありません。

しかし、これは改善できます。報告書の示す仮推定値によると、47カ国すべてが保健医療施設で基本的な水環境を整えるためには、一人当たり約1米ドルのコストがかかります。平均すると、サービスの運営と維持の費用は、毎年一人当たり0.20米ドルです。

水と衛生設備への即時かつ段階的な投資は大きな利益をもたらすと報告書は指摘します。保健医療施設の衛生環境を改善することは、抗菌薬耐性に取り組むうえで最もとるべき手段です。結果として、院内感染など医療関連感染を減らすことができ、医療費を削減できます。医療従事者が手指衛生のために水を探す必要もないため、時間の節約にもなります。また、衛生環境が改善されると、サービスの利用率も向上します。これらをまとめると、投資した1ドルにつき1.5米ドルの利益になります。

水と衛生設備は、妊娠中の母親、新生児、子どもなど不利な立場に置かれた人々にとって特に不可欠です。保健医療施設における水と衛生環境の改善は、敗血症のような予防可能な疾患を含め、あまりにも多くの母親と新生児が苦しみ、命を落としている出産の場において特に重要であり、100 万人の妊婦と新生児の命を守り、死産を減らすことができるのです。

報告書では主に、以下の4つの主な提言を行っています:
  • 適切な資金調達を伴う国のロードマップを実施する
  • 水と衛生サービス、実践、環境改善の進捗状況をモニタリングし、定期的に評価を行う
  • 水と衛生サービスを維持し、良好な衛生習慣を促進し、実践するための医療従事者の能力を育てる
  • 質の高いサービスを提供するために COVID-19対応と復興を含む、水と衛生の取り組みを通常の保健分野における計画、予算編成、プログラム作りに組み込む
 

アディスアベバの保健センターに入る前に、石けんを使って手を洗う4歳のネイサンちゃん。(エチオピア、2020年5月撮影) © UNICEF_UNI335607_アディスアベバの保健センターに入る前に、石けんを使って手を洗う4歳のネイサンちゃん。(エチオピア、2020年5月撮影) © UNICEF_UNI335607_

世界の、そして国レベルの保健医療施設における水と衛生の目標を達成するために、世界の水と衛生および保健パートナーと連携して取り組んでいます。2020年までに130以上のパートナーが支援を約束し、そのうち34のパートナーが総額1億2,500万米ドルの資金提供を決めています。

それにもかかわらず、保健医療施設における水と衛生に関する2019年世界保健総会決議の履行状況は各国でばらつきが見られます。ユニセフとWHOがデータを持つ約50カ国の86パーセントの国が基準を更新、70パーセントの国が初期評価を実施しており、概ね軌道に乗っていることが分かります。しかし、国の保健医療施設における水と衛生ロードマップの費用を計上している国は3分の1に留まり、国の医療システムのモニタリングに水と衛生の指標を盛り込んでいる国は10パーセントに過ぎません。

医療従事者と患者の安全を守るためには、国際社会における資金調達、技術支援、国内資源が必要です。これまでの取り組みを基盤に、保健医療施設における水と衛生をすべての国のCOVID-19計画、ワクチン配布、経済復興のプログラムに盛り込むべきです。

WHOが10月に発表したデータによると、医療従事者のCOVID-19感染は一般の人々よりもはるかに多いことが示されています。医療従事者は人口の3パーセント未満ですが、WHOに報告された世界のCOVID-19症例の14パーセントを占めています。医療従事者が自分自身、患者、家族、子どもたちの安全を守るためには、基本的な水と衛生環境を確保することが不可欠です。

注記:
報告書には、165カ国の76万カ所の医療保健施設を対象とした調査から得られた統計データが含まれる(昨年の基調報告書で調査された125カ国、56万箇所の施設から増加)。世界保健総会決議の履行における進捗データは47カ国を対象にしている。これらのデータがまとめられ、分析されたのは初めてのことである。

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■ 新型コロナウイルスに関するユニセフの情報はこちらからご覧いただけます。
特設サイト: https://www.unicef.or.jp/kinkyu/coronavirus/

■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。(www.unicef.org)
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(www.unicef.or.jp)

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本社所在地
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電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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