オンラインミーティングで男性メイクが及ぼす影響を脳波・心拍測定により可視化。 男性メイクが印象を有意に上昇させることが判明
昨今、相手に健康的な印象を与えるためにBBクリームやリップクリームを用いたり、自分がなりたいイメージに合わせて眉の形を整えるなど、メイク意識の高い男性が増えています。また、新生活様式の下、オンライン上のコミュニケーションが増えたことで、画面に映る自分の印象に気を配る男性も増えてきているようです。
このような背景をきっかけに、資生堂のメンズヘアケア&スキンケアブランド「ウーノ」は、生体反応データを分析して顧客のインサイトを可視化、マーケティング戦略やコンテンツの企画開発をするSOOTH株式会社(東京都中央区・代表取締役 額田康利)とともに、急増するオンラインミーティングにおいて男性メイクが与える心理的影響を可視化する検証実験を行いました。
実際に面会することに比べ相手の印象を判断しにくいオンラインミーティングにおいて、男性が身だしなみの延長線上にある男性メイク(肌の色むらやキメを整えて見せるBBクリーム、眉の形を整えるアイブロウ、血色をよくみせるリップクリーム)をする場合とメイクをしない場合とで、インタビュイー(その男性自身)とインタビュアー(デジタル画面を通してインタビューする相手側)に及ぼす心理的効果の差異を検証(※)しました。
※生体反応データ(脳波・心拍)の測定とアンケートにより検証 ※実験詳細は最終項参照。
簡易型脳波計と耳朶(じだ)装着型心拍計測機を装着し、被験者がどのような感情を抱いているかをリアルタイムで可視化できるSOOTH独自のアプリケーション「脳内モニター」を用いて、オンラインミーティング中の対象者(男女6名)の生体反応(脳波・心拍)を測定。また、インタビュアー・対象者)/インタビュイー双方に、ミーティング終了直後にインタビューの印象について問うアンケートを実施。対象者6名の生体反応(脳波・心拍)データ、及び、インタビュアー・対象者、インタビュイー全員が回答したアンケート結果より、男性メイクがオンラインミーティングに及ぼす心理的影響を明らかにしました。
<実験結果のサマリー>
(1)オンラインミーティングでの第一印象も、ミーティング全体を通しての印象も、メイクをしているほうが有意に高評価の傾向。
(2)脳波・心拍測定の結果、メイクをした相手への印象上昇には「心地よく、心が沈静化した状態=リラックスした感情」が関与している。
【実験監修】 大倉 典子 (おおくら・みちこ)
芝浦工業大学 名誉教授・SIT総研 特任教授
東京大学工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科計数工学専門課程修士課程修了。日立製作所中央研究所等を経て(その間、東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻後期博士課程修了。博士(工学))、1999年より2019年まで芝浦工業大学工学部教授。2006年輸液バッグのデザインでグッドデザイン賞、2007年日本感性工学会技術賞、2017年日本感性工学会出版賞等受賞。日本バーチャルリアリティ学会フェロー、日本学術会議第三部会員。研究分野:バーチャルリアリティを利用したインタラクティブシステム、感性情報処理、医薬品インターフェース、感覚情報・知識情報・生体情報処理および「人に優しい」情報呈示法の研究。
大倉先生による実験総括
対面によるミーティングでは、周囲の机や壁などの視覚情報、雑音などの聴覚情報、さらに匂いなどの様々な要因が複合刺激となり「相手の外見」から受ける印象を判断しにくいと考えられます。今回、オンラインミーティングであるからこそ、相手の印象に影響する情報が限られ、顔の外見の情報から評価する比重が高まり、「メイクの有無に対する直接的な印象の差異」がより顕著に出たと考えられます。しかし、恐らくメイクの有無による印象の差異は、リアルに対面するときにも少なからず生じていると推測します。
加えて、インタビュアーとともにオンラインミーティングを客観的に見ている対象者から、明確なアンケート結果と有用な生体反応が得られた点からも、この取り組みは非常に画期的で、成果も極めてすばらしいと考えます。
具体的には、インタビュイーの達成度実感に関しては全員が「メイク時のほうがミーティングの達成度が高かった」と全員が回答(右図)。メイク時は本人も自信を持って話ができたと推定できます。
さらにインタビュイーの内面から醸成された自信が相手に伝わり、「内面の印象」の評価をポジティブにしたと推察します。
さらに注目すべきは、「メイクをしているか否か」を判断できない場合でも(※)、実際にメイクをしているほうが好印象に映っているケースが多数であった点。これはすなわち、「メイクをしていること」に対して好印象を抱かせたわけではなく、メイクをした顔自体が視覚的に好印象に映ったということです。
新しい生活様式が求められているこれからの時代には、オンラインでもいかに相手とフランクに会話できるかが重要なスキルの一つになると思います。今回の取組みから、「相手をリラックスさせること、相手が話しやすくなる“余裕感”のようなものを感じさせること」が好印象を与え、内面の印象に関してもポジティブに見なしてもらえることに繋がるので、オンラインでのコミュニケーションのテクニックのひとつとして、メイクを取り入れてみるのもいいかもしれません。
※「インタビュイーがメイクをしていると思うか」という設問で、「メイクあり」のインタビュイーを「メイクなし」と誤って推測したケースにおいても、そのインタビュアーを好印象と評価するケースが多かった。
●第一印象は「メイクあり」のほうが有意に高評価
「第一印象」を、「とても好感をもった」(100%)から「まったく好感を持てなかった」(0%)の100段階で評価した平均値は、「メイクあり(71.04%)」の方が「メイクなし(47.71%)」より平均値として23.33pt高いという結果となっています。
インタビュイー個別の評価をみても、4人全員において「メイクあり」のほうが「メイクなし」よりも評価が高くなっています。
●インタビュー全体を通しての印象に関しても、「メイクあり」のほうが有意に高評価
その回のミーティング全体に対する印象評価を「メイクあり・なし」で比較しても、インタビュイーへの全評価24評価(4名への評価×インタビュアー6名分)中、15評価(62.5%)において「メイクあり」の回のほうが「メイクなし」の回よりも有意に好印象という結果になりました。
●メイクをすることで相手の感じる印象が、「外見の印象」、「内面の印象」ともにポジティブに有意に上昇する。
「外見」に対する印象、「内面」に対する印象を「まったく受けなかった」から「とても受けた」への6段階で聞いたところ、メイクをすることで全ての項目において有意にポジティブに上昇することがわかりました。
◎評価項目
<外見への印象(ヴィジュアル要素)>
・第一印象に好感を持った/持たなかった
・清潔感を感じる
・肌がきれい
・目ヂカラがある
<内面への印象(ムード要素)>
・安心感がある
・元気がある
・会話をもっとしたい
・堂々としている
・自信がある
・垢抜けている
外見の印象(ヴィジュアル要素)と内面の印象(ムード要素)、カテゴリーそれぞれに対する評価の平均値の差を比較すると、外見の印象においては「メイクあり」平均5.59点に対し「メイクなし」平均が3.43点、内面の印象においては「メイクあり」平均が4.95点なのに対し「メイクなし」平均は3.42点。
メイクが外見の印象評価においてポジティブな影響を与えているにとどまらず、内面の印象評価においてもポジティブな影響を与えるという結果が出ました。
●男性メイクの有無が及ぼす印象に関する具体的なコメント
「メイクあり」の際の「外見」の印象に対する定性的なコメントとしては、「健康的な印象」「さわやかそう」「清潔感を感じる」「すっきり」「若々しい」「華やか」などがあがり、「内面」の印象に関する定性的なコメントでは「凛々しい」「信頼できそう」「優しそう」「話しやすそう」などのワードがあげられていました。
●脳波による男性メイクの影響の可視化
取得した脳波データを感情スコアでリアルタイムにビジュアル化するアプリケーション「脳内モニター」を活用し、男性メイクがオンラインミーティングに及ぼす影響を検証。
●メイク時の印象アップには【快/鎮静】傾向が関係している
生体反応において「メイクなし」時と「メイクあり」時の感情スコア出現率を比較すると、「メイクあり」時のほうが「穏やか」や「心地よい」といった【快/鎮静】の傾向を現す象限(喜怒哀楽の「楽」)の出現率が高まる傾向がありました。
このことから、メイクをした男性と画面越しに接する際に相手方の緊張感が抑えられ、「心地よく」「穏やかな」な気持ちで接することができているという可能性を示唆することができます。
●メイクあり時のほうが、相手のリラックスした感情がアップする傾向
「リラックス」状態(Meditationスコア)の数値を、メイクあり・なしで比較すると、メイクあり時のほうが相手をリラックスさせていることがわかります。
メイクをすることでリラックス度が6.41pt高まっていることから、「メイクをすることで相手へリラックス効果を与えることができる。つまり、話し心地の良さを感じている」という可能性を示唆しています。
また、心拍の測定結果を見ても、メイクあり時と比較しメイクなし時は「0.6pt」下がっています。
(心拍数は低いほどリラックスしていることを示す)
以上の結果から、「メイクをすることで相手の緊張感を緩和することができる」という可能性を示唆することができます。
<感情スコアの説明>
【前提】取得した脳波データを二軸四象限の感情マトリックスにプロット。
左前頭極部から取得された脳波データは、「脳内モニター」において「感情スコア」と呼ばれる2軸4象限の感情マトリックスにその値をプロットし、どういった感情傾向が現れているかを可視化します。
また、EEG(脳波)アルゴリズムから解釈された「集中」、「リラックス」がどのような状態であるかも判別。約1秒間隔で算出される数値から、出現頻度の高い象限を割り出すことでその人の感情や状態がどうあるかの示唆を導き出す。
●ロジック1:
x軸を「快と不快のどちらに感情が振れたか」、y軸を「活性の度合い(覚醒している・鎮静している)」とし、それぞれの数値を掛け合わせ、8つのカテゴリーに分け解釈。
●ロジック2:四象限を「喜・怒・哀・楽」にプロットする。
第一象限(快/覚醒) =『喜』
第二象限(不快/覚醒)=『怒』
第三象限(不快/鎮静)=『哀』
第四象限(快/鎮静) =『楽』
<実験概要と手法>
実施日:2020年6月27日(土)/7月4日(土)
生体反応データ取得対象者:男性を画面を通して閲覧する対象者6名(男性3名/女性3名)
メイクしミーティングに臨む男性:4名 ※化粧水使用実績、及びメイク経験のある20代男性
インタビュアー:1名(女性) ※面接官経験あり
(1)オンラインミーティングの手法
・インタビュイー男性の「メイクあり」・「メイクなし」でのミーティングを、1週間のインターバルを設けた2日程で行う
・インタビュアー1名がインタビュイーとパソコン画面を通して会話。
・男性インタビュイーが映っている画面を、対象者6名がモニターで視聴。
(男性3名・女性3名ずつに分けて行う。1タームは15分間)
※インタビュアー以外は発言しない。
・1日目・2日目の差が「メイクの有無の差であること」を対象者6名へは知らせずに実施。
(2)検査手法
・メイクの有無による対象者の潜在的な無意識の評価を生体反応から捉える。
モニター越しで見ている対象者がインタビュイーに対してどう感じたかに着目。
インタビュアーの横で着席した6名(各回男性3名、女性3名)を生体反応データ取得対象とする。
取得生体反応データ:EEG(脳波)/Heart Rate(心拍)
・メイクの有無による対象者の顕在化されている気持ちや感じる印象の差異をアンケートから捉える。
●アンケート項目
・インタビュイー回答項目:
インタビュー終了後の「インタビューの達成度」(5段階評価)/
定性的な感想のフリーアンサー
・インタビュアー・対象者回答項目:
インタビュー終了後の「第一印象に好感を持った・持たない」の(10段階評価)/
外見の印象に関する設問(「清潔感を感じる」「肌がきれい」「目ヂカラがある」)、及び、
内面の印象に関する設問(「安心感がある」「元気がある」「会話をもっとしたい」
「堂々としている」「自信がある」「垢抜けている」)の5段階評価/
定性的な感想のフリーアンサー
▼ ウーノ ブランドサイト
https://www.shiseido.co.jp/uno/?rt_pr=trg67
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