ユニセフ新報告書:先進国の育休、保育政策等をランキング【プレスリリース】
日本は育休1位、保育の質や料金では中位
【2021年6月18日 イノチェンティ(イタリア)/ニューヨーク発】
世界の豊かな国々においてもその多くでは、無理なく払える料金で質の高い保育サービスを受けることができない、とユニセフ(国連児童基金)は本日発表した新しい報告書『先進国の子育て支援の現状(原題:Where Do Rich Countries Stand on Childcare?)』の中で指摘しています。子育て支援政策を比較したランキングで上位だったのはルクセンブルク、アイスランド、スウェーデン、ノルウェー、ドイツで、一方、スロバキア、米国、キプロス、スイス、オーストラリアが下位でした。
本報告書は、経済協力開発機構(OECD)および欧州連合(EU)加盟国を対象に、各国の保育政策や育児休業政策を評価し順位付けしたものです。その政策とは、学齢期までの子どものための保育サービスへの参加率、料金の手頃さ(affordability)、質などを含みます。
日本は、育児休業で1位、保育への参加率で31位、保育の質で22位、保育費の手頃さで26位でした(保育の質のみ33カ国中、ほかは41カ国中の順位)。日本については、父親に認められている育児休業の期間が最も長いこと、取得率は低いものの改善に向けた取り組みが進められていること、保育従事者の社会的立場の低さなどが言及されています。
ユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは、「子どもたちが人生の最良のスタートを切るためには、親が愛情を持って育児ができる環境を構築する支援が必要です。子どもたちの学習、心の安定、社会的な発達には、そうした環境が不可欠なのです」と述べています。「育児支援を含む家族にやさしい政策に政府が投資することで、親は子どもの成長のあらゆる段階で子どもを支えるために必要な時間、リソース、サービスを得ることができます」(フォア)
報告書の順位表で上位に位置付けられた国々は、保育の質と手頃な料金の両方を兼ね備えています。同時に、母親と父親の両方に長期の、十分な給付が受けられる育児休業を提供し、両親がどのように育児をするか選択できるようにしています。
給付の得られる産前産後休業・育児休業は、両親が赤ちゃんとの絆を深めることを可能にし、子どもの健全な発達を支え、母親の産後鬱を軽減し、ジェンダーの平等を促進します。しかし、報告書は、母親に少なくとも32週間の(賃金と同等の給付が受けられる期間に換算して)育児休業を提供している国は半数にも満たないことを指摘しています。また、父親の育児休業が提供されるとしても、大幅に期間が短く、職業上や文化的な障壁のため、取得する父親は多くありませんが、この傾向は変わりつつあります。
適切に設計された育児休業が、子どもが生まれて間もない時期の親を支え、このサポートが終了し親が仕事に復帰できるようになった後は、保育サービスが、親たちが育児と仕事、そして自分自身の心身の健康のバランスを確保するのを助けます。しかし、育児休業の終了と手頃な料金の保育サービスを受けられるようになる時期が一致することはあまりなく、家族はこのギャップを埋めるのに苦労しています。
手頃な料金で利用できる保育サービスがないことも、親にとっては大きな障壁となっており、国内の社会経済的不平等を助長しています。高所得世帯では、3歳未満の子どもの約半数が幼児教育や保育サービスを受けているのに対し、低所得世帯では3人に1人にも満たない状況です。アイルランド、ニュージーランド、スイスでは、平均的な収入の夫婦が2人の子どもの保育サービスを利用するには、1人分の給料の3分の1から2分の1をその料金に費やす必要があります。ほとんどの高所得国では、脆弱な家庭に対し保育料の補助を十分にしていますが、スロバキア、キプロス、米国では、低所得のひとり親の場合、それでも給料の半分程度の負担が必要となります。
報告書はまた、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による保育施設の休園や閉園が、幼い子どもを持つ家庭をさらに厳しい状況に追い込んでいると指摘しています。多くの親が育児と仕事の両立に苦労しており、仕事を完全に失ってしまった人もいます。
ユニセフは、少なくとも6カ月間の給付のある育児休業と、出生時から小学校入学までの間、質の高く手頃な料金の保育サービスに誰もがアクセスできるようにすることを提唱しています。ユニセフは、家族への投資拡大を推進するため、政府、市民社会、専門家、そして政策に影響を与える重要な役割を果たしている民間部門と協力して活動しています。
この報告書では、政府や民間企業がどのように保育や育児休業の政策・制度を構築したらよいか、以下のようなガイダンスを提供しています。
- 産前産後および子どもが生まれてからの1年間、母親と父親が取得できる給付付きの産前産後休業や育児休業制度の組み合わせ
- どちらの親にも家事負担がかかりすぎないよう、ジェンダーに配慮した平等な育児休業制度
- 正社員だけでなく、パートタイムなどの非正規雇用の人も利用できる休業制度や、無保険者など他の生活環境にある親の出産や育児に関わる費用を含む支援
- 子育て支援を受けられない期間がないよう、育児休業終了と同時に開始される手頃な料金の保育サービス
- 家庭環境に関わらず、すべての子どもに開かれた、利用しやすく柔軟性があり、手頃な料金で質の高い保育サービス
- 公的な、あるいは公的基準に基づいた保育サービスによって、低所得者層の利用を促進し、サービス提供の水準を確保すること
- 可能な限り高い水準の保育を提供するために、保育従事者、その資格や労働条件に投資すること
- 雇用主に対して、誰もが取得できてジェンダーに配慮した給付のある育児休業制度、柔軟な勤務形態、育児支援制度を提供するよう奨励すること
- 保育サービスを、一律の児童手当などの他の家族支援政策と連携させ、子どもたちの間にすでにある不平等が公的保育の場で再現されるリスクを低減する
「子どもたちがしっかりとした基礎を築くために必要な支援を親に提供することは、良い社会政策であるだけでなく、良い経済政策でもあります」(フォア)
※ 補足
本報告書では、OECD、EU統計局、UNESCO(国連教育科学文化機関)の2018年、2019年、2020年のデータを用いて、育児休業、また、出生から学齢期までの子どもの保育サービスへの参加、質、料金に焦点を当てています。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/
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