ヨコハマ海洋市民大学2023年度講座第2回「南極の海でペンギンを調査研究したお話」を開催しました!
2023年7月6日【横浜市西区 帆船日本丸・横浜みなと博物館 訓練センター第3会議室】
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
イベント概要
・「横浜の海が抱える社会課題を自ら考え、解決できる市民(海族・うみぞく)」を育成するヨコハマ海洋市民大学2023年度講座(年10回開催)の第2回目「南極の海でペンギンを調査研究したお話」を開催。
・開催日時:令和5年7月6日
・開催場所:横浜市西区 帆船日本丸・横浜みなと博物館 訓練センター第3会議室
・参加人数:76名(会場受講生34名、オンライン受講生34名、ゲスト1名、講師・実行委員7名)
・共 催:日本財団 海と日本プロジェクト
・後 援:横浜市、海洋都市横浜うみ協議会
南極の海でペンギンを調査研究したお話
7月6日(木)は国立極地研究所に勤務し、南極観測隊の支援を担当する伊藤健太郎(いとう けんたろう)氏による講座「南極の海でペンギンを調査研究したお話」を開催いたしました。講師は東京海洋大学の事務職員として働きながら独学で勉強を続け、38歳で総合研究大学院大学に入学し、第58次日本南極地域観測隊 ペンギン調査チームの一員として南極でアデリーペンギンの行動調査を行いました。その後は勤務していた大学を退職し、南極調査で得られたデータを基に研究を進め、理学博士の学位を取得しました。
現在はペンギンの研究だけでなく、南極観測隊として調査に参加した経験を生かし、南極観測隊の支援を行う業務を担当する等、幅広い分野で活躍しています。講座では南極観測隊に参加するまでの経緯や南極での調査、また調査で得られた膨大なデータの解析等、興味深いお話を聞くことができました。
南極での快適な生活
講師を含むペンギン調査チームは、南極観測基地として有名な「昭和基地」から約25キロ離れたアデリーペンギンの繁殖地で調査を行いました。調査中は各自テントなどで生活し、昭和基地との連絡手段は無線のみで、暖房はもちろんお風呂やトイレも無い環境で約1か月過ごさなければなりません。外界からも離れた過酷な環境での調査ですが、北海道出身の講師にとっては真夏の南極は日差しも強く、思いのほか過ごしやすく快適だったようです。テントからアデリーペンギンの繁殖地も近く、調査に適した環境で充実した日々を過ごしていたことが伝わりました。
バイオロギング〜ペンギンが見た世界〜
調査はアデリーペンギンの海での行動を明らかにすることを目的に、二つの繁殖地で行われました。調査方法はアデリーペンギンの体にデータロガー(小型記録計)を装着し、水中での行動をとらえるバイオロギングという手法が使われました。データロガーには多くの種類があり、潜水深度、加速度、動画、GPS等のデータを取ることができますが、ペンギンの負担を避けるため一個体に一度しか装着できません。そのため、たくさんのペンギンからデータを取ることになります。講座ではペンギンの背中に装着したデータロガーにより撮影された動画も紹介され、海に潜るペンギンの目線を体験することができました。
また、南極ではアデリーペンギンが巣作りに必要とする石が少なく、石の取り合いになることがあります。調査の合間に講師が撮影した動画には、アデリーペンギンが他の巣から石を盗む姿も記録されており、ペンギンマニアの受講生を中心に会場は大いに盛り上がりました。
海氷がコロニー間の関係に影響を与える
ペンギンを含む海鳥は、複数のコロニー(繁殖地)が隣接している場合、競争を避けるため餌をとる場所が重ならないような行動を取ると言われています(採餌行動圏のコロニー間分離)。しかし今まで、餌資源の分布パターンが変化した際にコロニー間分離がどのような影響を受けるのかはよく分かっていませんでした。講師が調査を行った2016年から2017年にかけては例年と比べて海面を覆う氷がとても少なく、アデリーペンギンが泳ぐのに適した環境であったため、通常の3倍ほど遠い場所まで餌をとりに行っていることが分かりました。帰国後、海氷が多い年とのデータ比較やシミュレーションを行うことで、海氷状況が変わると餌資源の分布パターンが変化し、それによりアデリーペンギンのコロニー間の関係も大きな影響を受けるということが明らかになりました。講師はこの研究結果を基に論文を執筆し、博士の学位を取得されました。
受講生は全てを投げ打って南極観測隊に参加するという講師の高い熱量と研究欲とペンギンの愛らしさに圧倒されていました。
参加者の声
・ペンギン好きなのでたくさんのお話が聞けて幸せだった
・講師が人生をかけて研究の道を選んだことに触れて感動した
・未来永劫、奇麗な地球を残す努力を怠ってはいけないと感じました
<団体概要>
団体名称:ヨコハマ海洋市民大学実行委員会
URL:https://yokohamakaiyouniv.wixsite.com/kaiyo/
活動内容:横浜市民が横浜の海が抱える社会課題を自ら考え解決に向けて行動できる海族(うみぞく)になるための養成講座を年10回(コロナ禍以前は年20回)開催している。座学だけではなく実際に海や海を学べる野外講座も開催している。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
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