オバマ元大統領の心を揺さぶった執念のノンフィクション『原爆の悲劇に国境はない』発売! 広島で被爆死した12人の米兵。その遺族を探した日本人の物語
長期化するウクライナ戦争でプーチン大統領が「ロシアは核大国だ」と恫喝したのに対し、2016年、アメリカ大統領として初めて広島訪問したオバマ氏との抱擁で一躍世界的に知られた森重昭氏は、核兵器の恐ろしさを忘れてはならないと強く警鐘を鳴らします。
2021年には核廃絶の活動を続けてきた坪井直(すなお)氏が96歳で亡くなるなど、直接被爆者は年々減っています。8歳で被爆し、現在86歳の森氏はサラリーマンとして働きながら、日曜、祝日には民間歴史家として広島原爆投下についての調査を長年行ってきました。
調査の中で森氏は、1945年8月6日、広島にいた米兵捕虜12人が被爆死したという事実をつかみます。その中の1人は、済美(せいび)国民学校の校庭で被爆死。日本人の小さな遺体が積み上げられる中、大きな白人の遺体があったといいます。その遺族を探し出し交流を続け、慰霊に半生を捧げたのは、森氏が自分も被爆した一人として「敵も味方もない」との一心からでした。
この話がきっかけとなり、オバマ氏の広島来訪と森氏の式典招待につながりました。森氏の招待には当時の駐日大使キャロライン・ケネディ氏の存在も大きかったといいます。アメリカ側のさまざまな意見を押し切って、大統領に進言されたことが明かされます。そして、2022年にも「コロナで大変でしょうけども頑張ってください」とのメールがケネディ氏から送られるなど交流は続いています。
8月1日に発売された、森氏と妻の佳代子さんが語り下ろしたノンフィクション『原爆の悲劇に国境はない 被爆者・森 重昭 調査と慰霊の半生』で、「プーチン大統領は核兵器の恐ろしさを知らないと思います」と話す森氏の語りは、人類を滅亡させる核兵器に対する認識や想像力の欠如への怒りと、二度と使わせてはならないとの思いに満ちています。
佳代子氏の父、増村明一(めいいち)氏(元広島市議)は、原爆手帳交付のために尽力し、原爆医療法(被爆者援護法の前身)が国会を通過するために貢献した人物でもあります。エリザベト音楽大学声楽科を出た佳代子氏も被爆者。毎年8月6日には世界平和記念聖堂でフォーレの「レクイエム」(鎮魂歌)を歌ってきました。二人三脚の活動は「原爆をどう伝えるか」というテーマに新たな視点を与えてくれます。被爆者の高齢化が進み当事者の証言を聞くことができなくなってしまう前に、また、ウクライナ侵攻で再び「核の脅威」が高まる時代に、核廃絶への思いを語りかけるように伝えた本書は、必読の書といえます。
【目次】
プロローグ
第1章 8歳で見た地獄絵図
第2章 執念の調査
第3章 オバマ大統領広島訪問
第4章 慰霊の半生
第5章 戦争の傷は続いていく
第6章 二人三脚――妻・佳代子氏の思い
エピローグ
解説に代えて
付録 バラク・オバマ米大統領による演説
『原爆の悲劇に国境はない 被爆者・森 重昭 調査と慰霊の半生』
語り:森重昭、森佳代子/副島英樹編
定価:1980円(本体1800円+税10%)
発売日:2023年8月1日(火曜日)
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