世界保健サミット2021:新型コロナワクチン、広がる格差~保健・医療システムの強化を訴え【プレスリリース】
【2021年10月25日 ニューヨーク発】
世界保健サミットにおける、ユニセフ(国連児童基金)事務局長のヘンリエッタ・フォアの基調スピーチを抜粋してお知らせします。
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、経済に打撃を与え、社会に緊張をもたらし、知らぬ間に次世代にも悪影響を及ぼしています。子どもたちは、ウイルスそのものによる直接的なリスクというよりも、社会経済的な影響によって、不相応に苦しみ続けています。
懸念されている変異株の出現もあり、ウイルスは広がり続けています。高所得国では予防接種キャンペーンが成功し、入院・死亡率が低下していますが、低所得国では何百万人もの人々が1回目のワクチンを受けておらず、子どもたちが頼っているすでに不安定な保健・医療システムは、危機に瀕しています。
新型コロナワクチンを受けた人と受けていない人の間で格差が広がっています。国民のほとんどが接種できた国がある一方で、1回目のワクチンを受けたのが国民の3%にも満たない国もあります。ワクチンを受けていない人の中には、医師、助産師、看護師、地域の保健員、教師、ソーシャルワーカーといった、子どもや母親、家族が頼っている最も必要不可欠なサービスに従事する人たちが含まれています。
最初の新型コロナワクチンが承認されてから1年も経っていない今日、約70億回分が接種されています。そして、来年末までに世界中の大多数の人々を守るのに十分な量のワクチンを製造する目処が立っています。
しかし私たちは全員を守ることができるのでしょうか。
世界中の医師、看護師、そして最もリスクに晒されている人々のために、命、そして保健・医療システムを守る新型コロナワクチンを届けることができるのでしょうか。
パンデミックを終息させるために必要な検査や治療、ワクチンを用意し、展開するために、ドナーはACT-AやCOVAXに十分に資金を提供し続けるでしょうか。
あるいは、国内でのワクチン供給にかかる費用が、経済を圧迫し、子どもの定期予防接種などの命を守る保健・医療プログラムを削減せざるを得なくなるのではないでしょうか。
私たちは、COVID-19のような嵐を乗り越えるためには、保健・医療分野全般の強化が重要な要素であることをすでに学んでいます。
COVID-19が世界的に流行する中で、妊娠中の母親や赤ちゃん、そして子どもたちをケアする保健・医療従事者は、想像もできないような選択を迫られました。COVID-19患者が息を切らして必死に酸素を求めていたとき、母親や赤ちゃんも同じように酸素を求めていました。病棟が感染者でいっぱいになると、彼らは幼い子どもたちを思うように助けることができなくなりました。保健分野の予算が限界に達すると、日常の保健・医療が後回しになっていきました。
こうした理由により、多くの低・中所得国において、COVID-19による死亡者数の2倍以上になる女性や子どもが命を落としています。ランセット(Lancet)誌の推計によると、この期間、女性や子供の死亡数は11万4,000人近く増えたとされています。
私たちはすでに、定期予防接種の遅れを目の当たりにしています。2020年には、2,300万人以上の子どもたちが不可欠なワクチンを受けることができませんでした。その数は2019年から400万人近く増加しており、数十年にわたる進歩は大きく損なわれました。 この2,300万人のうち、1,700万人は全くワクチンを受けていません。彼らはいわゆるワクチン未接種の子どもたちで、そのほとんどが様々な貧困を抱えるコミュニティに住んでいます。
こうした問題に対処するために、私たちができる最も緊急性の高い選択は下記の通りです。
各国政府は、新型コロナワクチンを早急にCOVAXと共有し、必要以上に備蓄しないよう心がけることができます。また、ワクチンへの公平なアクセスに対するコミットメントを示し、COVAXをはじめとするACT-Aの一部が、検査や治療、ワクチンを最優先で確保できるよう支援することができます。
ワクチンメーカーは、生産スケジュールの透明性を高め、ワクチンへの公平なアクセスを促進するよう努めることができます。
各国政府、開発銀行、企業、支援団体等は、強固で回復力のあるプライマリ・ヘルスケア・サービスを構築し、それぞれのコミュニティにうまく組み込まれるように、戦略的かつ持続可能な投資を行うことができます。
私たちは、老いも若きも、富める人も貧しい人も、すべての人間が健康に生きる権利を有するという原則に根ざした、公平で持続可能な道を選ぶことができますし、そうしなければなりません。
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■ COVAXについて
COVAXは、COVID-19の診断検査法、治療法、ワクチンの開発などを加速させるための国際的な取り組みであるACT-A(Access to COVID-19 Tools - Accelerator)の柱の一つであるワクチン供給のイニシアティブです。感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)、GAVIアライアンス、WHO(世界保健機関)が共同で主導し、先進国および開発途上国のワクチン製造業者、ユニセフ(国連児童基金)、世界銀行、市民社会組織などと連携して活動しています。COVAXは、COVID-19ワクチンを世界各国に公平かつ迅速に分配していくことを目指し、政府や製造業者とともに取り組む唯一のグローバル・イニシアティブです。
■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/
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