静岡県の小学生が西伊豆のマイカを通じて駿河湾の変化を徹底調査!キッズサマースクール2023 駿河湾 東へ西へ調査隊【西伊豆町の湧昇流と昼獲れマイカ】を開催しました!
2023年8月7日~8日【静岡県西伊豆町】
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
イベント概要
・開催概要
西伊豆町を舞台に「昼に獲れるマイカ」の学習・調査を行い、駿河湾の環境変化を学ぶ。
主なプログラム 8/7(月)「駿河湾の特徴について」「湧昇流の水槽実験」「西伊豆の海の変化と漁獲量について」 調理体験「実際にマイカをさばいてイカ丼を食べよう(昼食)」「仁科港の漁の特徴と近年の課題」「昼どれマイカと漁船について」、ワークショップ「船上沖干し真イカのパッケージ制作」
8/8(火)「黄金崎マリンパーク シュノーケリング体験」は荒天のため「ライフジャケット着用講習、西伊豆の海の変化と死滅回遊魚について」に変更。ワークショップ「アウトプット ポスター制作」
・日程:2023年8月7日(月)・8日(火)の1泊2日
・開催場所:静岡県賀茂郡西伊豆町
・参加人数:静岡県内小学5,6年生 20名
・協力団体:静岡県水産技術研究所伊豆分場、伊豆漁業協同組合西伊豆統括支所、NPO法人伊豆自然学校、株式会社Y・S・S、とも料理教室、株式会社販売促進研究所、東海大学海洋学部、西伊豆町役場産業建設課
駿河湾の特徴と湧昇流について
はじめに、静岡県水産・海洋技術研究所の伊豆分場長から、駿河湾の概要について学びました。
日本一深い海として知られる駿河湾には、日本に生息している魚類2300種の約4割以上、1000種の魚種が生息していると言われています。何故駿河湾には数多くの魚種が生息しているのでしょうか?その理由としては、世界でも有数な海底勾配が急な湾で3種類の海洋深層水が存在することや、沿岸に住む魚や深海生物、さらには黒潮に乗ってくる回遊魚なども見られることが挙げらます。また、風や潮流によって海底から「湧昇流(ゆうしょうりゅう)」という流れが発生することで、深海から栄養分が豊富に流れ込み、好漁場が生まれています。
しかし、西伊豆では駿河湾の浅い堆である石花海(せのうみ)で昼に獲れるマイカ漁が盛んに行われていましたが、5年ほど前からマイカの漁獲量が急激に減ってきています。黒潮の大蛇行の影響などが考えられますがはっきりとした原因は分かっていません。
次に昨年度のキッズサマースクールに参加した中学1年生が、水槽とドライヤーを使用して湧昇流を人工的に発生させる実験を子どもたちの前で見せてくれました。水槽の上でドライヤーを使って風を送ると、水槽の中に沈んでいた赤インクが10秒ほどで水面に上がっていく様子に、参加した子どもたちからも歓声と大きな拍手が沸き起こりました。駿河湾の潮の流れを実際に目で確かめ、理解を深めました。
仁科港でとれたマイカでイカ丼を作ってみよう
初日の昼ごはんは仁科小学校の家庭科室を借りて、参加した小学生たちが指導を受けながらイカをさばいてイカ丼を調理しました。料理教室の先生からイカの部位の名前や体の構造を学びながらさばき方を習います。イカをさばくのが初めてという児童が多く、イカの目が怖い、胴の皮がむけない、3mm幅に包丁で切るのが難しいなど悪戦苦闘しながら、イカの刺身を作り、ご飯のはいったどんぶりにのせていきます。さばいたイカの腕(足)や肝は、料理学校の先生方がバター炒めにしてイカ丼にのせてくれました。1時間15分ほどでイカの刺身と肝バター炒め丼が完成しました。
子どもたちはイカの体のつくりを学びながら、イカが甘い、歯ごたえがあると、美味しく自分たちで調理したイカ丼をいただいていました。
仁科港で仁科の漁の全体像とイカ釣り漁船を見学しよう!
1日目の午後は、仁科港で伊豆漁業協同組合・西伊豆統括支所の支所長から西伊豆町の漁の特徴を伺いました。マイカ、天草を中心に季節によってヤリイカ、イセエビ、アワビ、サザエ、カツオなど様々な海産物をとっていることが説明されました。しかしながら近年はマイカや天草の漁獲量が全盛期の10分の1程度にまで激減していていることが語られ、子どもたちも改めて海の環境変化を認識していました。また、仁科港の岸壁に横付けしたイカ釣り船・恵漁丸に乗せてもらいました。当日は台風6号の影響で、残念ながら昼どれのマイカ漁には出ておらず、船の上にはイカが無い状態でしたが、子どもたちはイカ釣り漁師さんから、昼に1本釣りでイカが獲れる理由や獲れたマイカを船上でさばいて、海風で干して帰ってくる、西伊豆町ならではの「船上沖干しイカ」の話を興味深く聞いていました。中でも漁師さん1人でイカを釣りながら1時間で100杯ものイカをさばいて船の上に干してくる話には驚いていました。
漁協や漁師さんもマイカが獲れなくなっている原因については、まだよくわかっていません。
船上沖干しイカのパッケージラベルを作成しよう!
1日目の最後は、仁科港のお土産として人気の船上沖干しイカのパッケージラベルの製作です。
販売促進研究所のアートディレクターの方が講師をつとめ、イカについて学んだことを生かして、キャッチコピーを作り、各班で役割分担してパッケージのデザインを色鉛筆やマジックを使い描いていきます。
子どもたちは実際に販売される商品のパッケージとなるということもあって、どうしたら買ってもらえるだろうということを真剣に考えていました。なかなか意見がまとまらない班などもありましたが、翌日の午前中の一部の時間も使い、各班に配置された東海大学海洋学部のリーダーを中心に商品パッケージのデザインをまとめていきました。子どもたちは漁師さんから学んだ内容をどのように表現するかという課題をやり遂げました。
台風6号の影響で波やうねりが強く、残念ながらシュノーケリングは中止に。
2日目は、黄金崎ダイブセンターでシュノーケリングの予定でしたが、残念ながら台風6号の影響で西伊豆の海も波とうねりが強く、安全面を考慮しシュノーケリングは中止しました。天気は良かっただけに残念でしたが、自然の影響を受けるのも海でのイベントならではの出来事。参加者は大きな落胆はなく、インストラクターからライフジャケットの着用講習と西伊豆の海で見られる生物やその生態系の変化について学びました。
ライフジャケットの講習ではサイズにあったものを選ぶこと、ライフジャケットを着けたらウイテマテの姿勢で救助を待つこと等の説明がありました。また、溺れている人を見つけた場合は、ライフジャケットを着けていても、ひとりで救助に向かわない、近くの大人を呼ぶことや118番に連絡することが説明されました。溺れている人は必死なので救助に来た人の上に乗りあげるように必死でつかんでくるので、大人でも救助することは大変なことが語られました。経験に基づいたインストラクターのお話を参加者は真剣に耳を傾けていました。
西伊豆の海の変化についても学びました。インストラクターによると、これまでは沖縄など熱帯にすんでいた魚や海洋生物(トラフシャコ、ヒョウモンダコ等)は、黒潮に乗って西伊豆の海にたどり着いても、冬の寒さで死んでしまっていて「死滅回遊魚」と呼ばれていましたが、水温の上昇など様々な要因で、冬を越す生き物が出て来て、西伊豆の海に住み着いて繁殖まで始めていていることが語られました。参加者は目の前の身近な海で起きている変化に驚いている様子でした。そのうえで身近な海の環境を守るために子どもでも出来ることとして、海はもちろん、街中でもごみを捨てないことを学んでいました。
学びを多くの人に伝えよう!JR東海道線の中吊りポスターを制作!
イベントの最後に、自分たちの学んだことを振り返り、そして学んだことを多くの静岡県民に知ってもらうために、班ごとにアウトプットテーマを決め、学びをクイズ形式で伝えるポスターの制作を行いました。
販売促進研究所のデザイナーの指導のもと、どんなことを伝えようか?文章の構成やイラストなどをどのようにしたらわかりやすいか?などを班のメンバーと話し合いながら、制作作業を進めました。予定の時間内に各班ともポスターの作成とポスターの内容についての発表まで行うことが出来ました。
完成したポスターは、2023年10月3日~10月16日(予定)の期間、愛知県の豊橋駅~熱海駅間を走行するJR東海道本線の1編成のポスターを全てジャックして掲出する予定です。
参加した子どもの声
・駿河湾は湧昇流が起こっていて、栄養が上がってきてそれにイカが来て昼間にイカが捕れることを初めて知りました。
・黒潮の大蛇行が影響で、海に大きな変化があるということをはじめて知りました。
・湧昇流を実際に、わかりやすく再現できるのが凄いなと思いました。
・イカのさばき方が複雑で面白かったです。上手に出来てよかったです。
・海のことや生き物についてたくさん知ることができたし、初めて会ったみんなと協力しながら楽しく勉強できた。
・船上沖干しイカのオリジナルパッケージの制作で、 みんなと1番協力することが出来ました。
・人が溺れていたら無茶に助けに行かずに、近くの大人に報告することを学びました。
・シュノーケリングができなくて残念だった。また機会があったら体験したいです。
<団体概要>
団体名称:一般社団法人静岡UP(海と日本プロジェクトin静岡県)
URL:https://shizuoka.uminohi.jp/
活動内容:一般社団法人静岡UPは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として、静岡県の海の今を伝えることでみなさんに興味を持ってもらい、海と共生するムーブメントを起こすことを目的に活動しています。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
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