マイナビ農業、「農家が選ぶ今年最も注目した農業ワード2023」を発表
ガソリン代やビニール資材の価格高騰が影響し、「資材高騰」が第1位。一方、「農業SDGs」など前向きな言葉もランクイン。農家からは「地球を救う気持ちでいなければ、農業の未来はない」という力強い言葉も
今年は記録的な猛暑に見舞われ、雨不足や資材の高騰など農業経営を苦しめるトピックが多い1年でした。このような状況下で、農家はどのような話題に対して関心を抱いていたのでしょうか。『マイナビ農業』編集部が調査し、ランキング形式にまとめました。
【「農家が選ぶ今年最も注目した農業ワード2023」トップ5(複数選択)】
1位:「資材高騰」~農業経営に大打撃を与える~(228票)
農林水産省が公表した2023年度の農業物価指数によると、令和2年を100とした生産資材の価格指数は今年4月で122.3まで上昇し、高止まりが続いています。軽トラックのガソリン代、マルチなどのビニール資材、ハウスの暖房代など、農業に必要な資材の価格が軒並み上がっており、農家から悲痛の声があがっています。
<投票した農家のコメント>
「資材(の価格)が2倍。あんまりだ」「冬場の施設のA重油※1をいかに安く仕入れるかが最大の課題」「食材だけでなく、資材や肥料も輸入依存であることが浮き彫りになった」
※1 )重油の種類で、中小工場のボイラー用、ビニールハウス暖房用燃料として使用されている。
2位:「猛暑で不作」~過去最高気温を記録した2023年夏。雨不足が不作に追い打ち~(223票)
夏(6月~8月)の平均気温が、1898年以降過去最高気温を記録し、厳しい暑さとなった2023年の夏。降水量減少に伴う水不足も追い打ちをかけ、収穫量の減少や品質が心配される作物が多くあります。2023年産水稲うるち玄米の1等米比率は9月末時点で59.6%となり、過去最低だった2010年産をさらに下回ったことも話題になりました。
<投票した農家のコメント>
「作付けのタイミングや品種の選定に苦労した」「稲作の生産者です。売上単価が安い上に肥料高騰で赤字に拍車がかかっています。本当に安心な食べ物を求めて頑張ってるけど、やめようかと考えています」
3位:「スマート農業」~人員不足、担い手不足の一手として更なる期待~(107票)
令和元年から開始された農林水産省による「スマート農業※2実証プロジェクト」では、これまでに全国217地区で実証がおこなわれています。農業現場でもその成果や活用が浸透し始め、人材不足や農作業の負荷軽減など農家の直近の課題を解決する施策として継続して期待が高まる結果となりました。
※2)スマート農業:ICTやIoT、ロボット技術、AIなどを駆使することで、農作業を自動化・省力化する農業の手法。
<投票した農家のコメント>
「地域に担い手がいないので、スマート農業を活用して農地を譲り受けられないか」「長年、苦労して培ってきた技術をAIなどと組み合わせて安定生産、発展させたい」
4位:「規格外野菜/食品ロス削減」~天候不良の影響で規格外野菜に悩む農家も~(86票)
猛暑により、出荷基準に合わない「規格外野菜」の取り扱いについても関心が高まりました。「規格外も売れる方法を探したい」という声と、「規格外が売れると正規品が売れなくなる」という声が挙がり、農作物の適性価格と食品ロス削減という二つの課題について考えさせられるテーマとなりました。
<投票した農家のコメント)>
「暑さや害虫被害により作物が不適合品に。近所の人から売れないならタダでちょうだいと言われ腹がたった」「鮮度や味は一緒なのに、見た目だけで店頭に並ばない」
5位:「農業SDGs」~温暖化や食料自給率の課題をきっかけに、関心が高まる~(73票)
栽培も経営も、これまでのやり方だけでは難しいことを実感している農家にとって、次世代に日本の農業を残すために、環境負荷を軽減する農業SDGsは注目すべきことのようです。
<投票した農家のコメント>
「オーガニック農業を進め、安全な食べ物を次世代に手渡していかないといけない」「地球を救う気持ちでいなければ農業の未来はない」「少しでも資材の仕入れ額を減らすよう、地域の農家で資材を共同買いし、仲間同士で安定供給したい」
【総括】
今年は類を見ない猛暑と水不足の影響で収量や品質が安定せず、多くの農家にとって「高く作って安く売る」苦しい1年でした。ランキングの結果もこれらの課題が上位を占めた結果となりました。また、SDGsといった未来志向のワードもランクインしたことから、現在の厳しい農業事情をどう変えて次世代につなげていくかについて、関心が向いてきているといえるでしょう。
猛暑については来年以降も続く問題であり、資材高騰も先行きが不透明です。日本の農業は「作れば売れる時代は終わった」と言われて久しいですが、これからは「普通に作って普通に売ることが難しい時代」に突入するのではないでしょうか。気候変動に対応した作物の転作、地域のネットワークを活用した資材の共同購入、作物の共同販売など、既に変化に対応し始めている農業現場も見受けられます。
私たち『マイナビ農業』は、最前線で闘う農家の皆様を少しでも支援できるよう、農業現場への取材を通じて農家の知恵や工夫を記事として紹介し、これからの農業経営の選択肢やヒントを提供していきたいと考えています。 地域活性CSV事業部 事業部長 横山拓哉
【調査概要】『マイナビ農業』農家が選ぶ今年最も注目した農業ワード2023
調査期間:2023年11月27日(月)~12月5日(火)
調査対象:『マイナビ農業』を利用する農家
調査方法:マイナビ農業編集部が、今年注目された農業ワードを12項目ピックアップ。その中から『マイナビ農業』ユーザーが、最も注目したワードを複数選択で回答。
アンケート方法:WEBアンケート
有効回答数:365名
※『マイナビ農業』では農家以外のユーザーも含めた読者ランキングやランキングされたテーマの関連記事を掲載しています。
https://agri.mynavi.jp/2023_12_20_249963/
【『マイナビ農業』について】
概要:2017年8月にスタートした農業の総合情報サイト。農家や農家になりたい方、家庭菜園愛好者などに向けた、栽培技術や経営ノウハウに関する記事、農家インタビューや農業ニュースを掲載しています。また、「農家をもっと豊かに」をテーマに、就職・転職イベント「マイナビ農林水産FEST」、人手不足の農家と手伝いたい人をつなぐマッチングアプリ「農mers」(https://noumers.jp/)、農林水産専門のインターンシップサイト「マイナビ農業インターンシップ」(https://agri-internship.mynavi.jp/)などを運営しています。これらのサービスだけでなく、農家の販路拡大による経済支援や担い手支援等にも注力し、より一層農業界の貢献を目指してまいります。
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