ウクライナ危機:「子どもの保護の危機」がさらに深刻化~全国の子どもの3分の2が避難生活【プレスリリース】

避難所となったハルキウの地下鉄の駅で暮らす9歳のポリーナさん。ウクライナでは770万人の人々が国内避難民となっている。(ウクライナ、4月19日撮影)© UNICEF_UN0634457_Gilbertson避難所となったハルキウの地下鉄の駅で暮らす9歳のポリーナさん。ウクライナでは770万人の人々が国内避難民となっている。(ウクライナ、4月19日撮影)© UNICEF_UN0634457_Gilbertson

【2022年5月6日 ジュネーブ/リヴィウ(ウクライナ)発】

国連の定例記者会見において、ユニセフ(国連児童基金)欧州・中央アジア地域事務所の子どもの保護・地域アドバイザーであるアーロン・グリーンバーグが報告したウクライナの状況について、その要旨を下記の通りお知らせします。

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ウクライナでは、おそらくこれまで見たこともないほどの、極めて深刻な子どもの保護の危機が起きています。紛争激化から2カ月で、770万人が国内避難民となり、550万人以上が国外に避難しており、こうした中にはウクライナの子どもの3分の2近くが含まれています。何百人もの子どもたちが命を落とし、それ以上の子どもたちが負傷しています。保健・医療施設に対する攻撃は200件近く報告されており、学校は未だに攻撃を受けています。

ウクライナ政府と人道支援パートナーは、最も弱い立場にある子どもたちを守るため、活動を続けていますが、そのニーズは途方もなく大きいのです。
 

破壊された自宅で立ちすくむ12歳のダニーロさん。彼の祖母は「帰る場所もなければお金も食料もない。すべてが焼かれてしまった」と話す。(ウクライナ、4月16日撮影)© UNICEF_UN0633382_Gilbertson破壊された自宅で立ちすくむ12歳のダニーロさん。彼の祖母は「帰る場所もなければお金も食料もない。すべてが焼かれてしまった」と話す。(ウクライナ、4月16日撮影)© UNICEF_UN0633382_Gilbertson

いま改めて強調したいのは、紛争激化前の時点で、ウクライナは欧州の中では施設で養護される子どもの数が最も多く、9万人以上の子どもが、施設、孤児院、寄宿学校、その他の養護施設で生活していました。その半数近くが、障がいのある子どもたちです。紛争がこうした子どもたちに与えた影響は、特に甚大です。施設や里親のもとで暮らす何万人もの子どもが、紛争激化と同時に、多くの場合急遽家族のもとに戻されました。障がいのある子どもは特にそうですが、必要なケアや保護を受けていない子どもが数多くいます。

この紛争は、すべての子どもの心理社会的幸福に影響を与えました。子どもたちは家を追われ、養育者から引き離され、直接紛争にさらされており、爆弾の爆発音やミサイル警報システムのけたたましいサイレンにショックを受けています。18~60歳までのほぼすべての男性が紛争に動員されているため、ほぼすべての子どもが、父親、兄、叔父がいない状態にいます。そして最も深刻なことは、多くの子どもが、身体的・性的暴力を目撃・経験していることです。

しかし、子どもたちには立ち直る力があります。ユニセフは、数十年にわたり、武力紛争の影響を受けた子どもに対する活動を行っており、影響を受けた多くの子どもたちは、学校に戻り、家族や愛する人とつながりを保ち、日常を取り戻せば立ち直れると、明確に答えが出ています。ただし、一部の子どもたちは、より集中的な心理的ケアを必要とします。さらに少数になりますが、心的外傷後ストレス障がいの症状が現れることもあり、これは、悲惨な体験から2~4カ月後に発症することが多いです。この場合には、専門家による集中的なケアが必要です。
 

アートセラピーの一環で行っている子どもや若者向けの図画工作教室の様子。子どもたちのメンタルヘルスは特に懸念されており、ユニセフはパートナーとともに支援を行っている。(ウクライナ、4月4日撮影)© UNICEF_UN0624500_Butkoアートセラピーの一環で行っている子どもや若者向けの図画工作教室の様子。子どもたちのメンタルヘルスは特に懸念されており、ユニセフはパートナーとともに支援を行っている。(ウクライナ、4月4日撮影)© UNICEF_UN0624500_Butko

ウクライナのソーシャルワーカー、児童心理士、その他の専門家なども、同様にこの紛争の影響を受けている点にも目を向けなければなりません。そして、この国は今、おそらく、かつてないほど彼らを必要としています。労働力を維持しつつ、彼らが留まり活動できるように支援することは、これまで以上に重要です。同国の社会サービスを担う人々と連帯しなければなりません。私たちはここリヴィウで、既存の政府システムを通じて、彼らへの支援を大きく展開できるように、様々な選択肢を検討しています。

ユニセフは、同国政府を支援し、子どもの保護分野のパートナーと調整を行い、地元のNGOや政府のサービスへの投資を拡大するなど、鋭意活動しています。

2月24日以降、ユニセフの活動により、14万人以上の子どもとその保護者が、メンタルヘルスと心理社会的サービスを受けることができました。その大半は、子どもと訓練を受けた心理士が直接関わっているものです。また、ソーシャルワーカー、児童心理士、看護師、弁護士からなる移動式チームを拡大し、ケースマネジメントや支援サービスへの紹介を行うことで、3万4,000人以上の子どもたちが、専門的なサービスを受けることができています。現在、同国東部の12カ所を含め、全国で56の移動式チームが活動しています。東部を含め、7,000人以上の女性と子どもが、暴力防止、リスク軽減、ジェンダーに基づく暴力を含む暴力対応サービスを受けています。

しかし、まだ十分ではありません。私たちは鋭意活動していますが、身体的・性的暴力の被害を受けた子どもに対する、より専門的なサービスを用意しなければなりません。そして、この紛争の結果、大きな影響を受けてしまった障がいのある子どもたちへの支援も急務です。ユニセフは、政府やパートナーと連携して、こうした子どもに対するサービスを、一層拡充しているところです。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 https://www.unicef.or.jp/
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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会社概要

URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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