教育危機:10歳児の7割が“学習の貧困”~生涯年収21兆米ドル損失のおそれ【プレスリリース】

首都カラカスの農村部にある学校で、小学6年の授業を受ける11歳のアーフリンさん。(ベネズエラ、2022年2月撮影) © UNICEF_UN0593163_Poveda首都カラカスの農村部にある学校で、小学6年の授業を受ける11歳のアーフリンさん。(ベネズエラ、2022年2月撮影) © UNICEF_UN0593163_Poveda

【2022年6月23日 ワシントンD.C. 発】

ユニセフ(国連児童基金)、世界銀行、国連教育科学文化機関(UNESCO)、英外務・英連邦・開発省(FCDO)、米国国際開発庁(USAID)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が23日に発表した新しい報告書によると、記録史上最悪の教育・学習ショックの結果、低・中所得国において「学習の貧困(learning poverty)が3分の1増加し、推定で70%の10歳児が単純な文章を理解することができないことが明らかになりました。この割合は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以前は57%であり、現在学習の危機が深まっていることを表しています。この世代の子どもたちは、現在価値で21兆米ドル、つまり今日の世界のGDPの17%に相当する潜在的な生涯年収を失うリスクを負っており、2021年に推定された17兆米ドルからさらに増加しています。

『世界の学習の貧困の現状:2022年版(The State of Global Learning Poverty: 2022 Update)』は、ラテンアメリカ・カリブ海諸国では、長期にわたる学校閉鎖、不十分な緩和策、家計収入の減少が学習の貧困に最も大きな影響を与え、小学校終了年齢の子どもの80%が簡単な文章を理解できないことが予測され、パンデミック前の約50%から上昇したと報告しています。次に多いのは南アジアで、最低限の識字能力を持たない子どもの割合は、パンデミック前の60%から78%に増加すると見られています。世界各地で再開された学校制度の中で子どもたちの実際の学習レベルを測定した新たなデータも、学習能力の大幅な低下という予測を裏付けています。 サハラ以南のアフリカでは、学校閉鎖が数カ月程度だったため、学習貧困の増加は少ないものの、現在89%という非常に高い水準にあります。
 

ドローの国内避難民キャンプにあるユニセフの子どもにやさしい空間で、文字の読み書きと算数の授業や、レクリエーションに参加する子どもたち。(ソマリア、2022年2月撮影) © UNICEF_UN0591378_Taxtaドローの国内避難民キャンプにあるユニセフの子どもにやさしい空間で、文字の読み書きと算数の授業や、レクリエーションに参加する子どもたち。(ソマリア、2022年2月撮影) © UNICEF_UN0591378_Taxta

また報告書は、COVID-19以前から、世界の学習危機はこれまで考えられていたよりも深刻であったと指摘しています。これまで2015年の時点で53%と推定されていたパンデミック前の世界平均の学習貧困率は、更新・改訂されたデータでは、低・中所得国の10歳児の57%になっています。このことは、COVID-19以前の状態に戻っても、世界の子どもたちの未来は保障されないこと、つまり、積極的な学習の回復と加速が必要であることを浮き彫りにしています。

長引く学校閉鎖と不平等な緩和戦略は、子どもたちの学習格差を悪化させました。しっかりとした基礎学力がなければ、子どもたちは、ますます厳しさを増す労働市場やより複雑な社会で成功するために必要な技術や高いレベルのスキルを身につけることができないでしょう。

本報告書は、長期的な学習危機の流れを変えるには、学習の回復のための国内の協調体制、つまり家庭、教育者、市民社会、経済界、そして教育省以外の各省庁を巻き込んだ協働が必要だとしています。課題の大きさと資源の不足を考えると、各国は学習の貧困に取り組むために最も費用対効果の高い取り組みに努力を集中させる必要があります。

学習の損失に取り組むために示された枠組み「RAPID」は、子どもたちの失われた学習を取り戻し、基礎学習の長期的な進歩を加速させるために、教育制度において実行可能な、エビデンスに基づく対応策を提示しています。 各国政府は、教育制度において以下のことを確実に行う必要があります。
  • すべての子どもが、学校に通えるようにする(Reach)
  • 学習レベルを定期的に評価する(Assess)
  • 基礎的な学習を優先させる(Prioritize)
  • 補習授業を含め、指導の効率を上げる(Increase)
  • 心理社会的な健康と福祉を向上させる(Develop)
 

貧困により基本的な教育を受けられず、落ち込んでいた16歳のサディヤさんは、将来に向けたスキルを身に着けるため、ユニセフが提供するデジタルリテラシー研修を受けている。(バングラデシュ、2022年1月撮影) © UNICEF_UN0581087_Sujan貧困により基本的な教育を受けられず、落ち込んでいた16歳のサディヤさんは、将来に向けたスキルを身に着けるため、ユニセフが提供するデジタルリテラシー研修を受けている。(バングラデシュ、2022年1月撮影) © UNICEF_UN0581087_Sujan

こうした対策は、より効果的で公平、かつレジリエントな教育システムの構築に向けた出発点ともなる、国の学習回復プログラムの一部として実施されなければなりません。これは、2030年までに学習格差を可能な限り解消し、すべての子どもと若者が、彼らにふさわしい明るい未来を形作る機会を得られるようにするために、非常に重要なことです。

ユニセフ本部教育グローバルチーフのロバート・ジェンキンスは、「子どもたちを教室に戻すことは最初の一歩にすぎません。そこで止まってしまっては、何百万人もの子どもたちから、その可能性を最大限に発揮する機会を奪ってしまうことになるのです。 すべての子どもは、学校に通う権利だけでなく、学校で学び、より高い学習水準と将来より高い所得水準を実現するための基礎的スキルを身につける権利をもっており、それが公平な発達と持続可能な成長を支えるのです。私たちは、子どもたちの学習レベルを評価し、基本的なスキルを習得できるよう支援し、子どもたちが自信を持って学習を進められるようにする必要があります。子どもたちの学習をCOVID-19の犠牲にしてはならないのです」と述べました。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/
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