児童婚・FGM:アフリカの角地域で驚異的な増加~干ばつや食料不足で深まる女の子の危機【プレスリリース】

干ばつで生活が苦しくなった家族を助けるために、学校の中途退学と、知らない男の人との結婚を強いられた13歳のエナトさん(仮名)。(エチオピア、2022年5月26日撮影) © UNICEF_UN0651316_Pouget干ばつで生活が苦しくなった家族を助けるために、学校の中途退学と、知らない男の人との結婚を強いられた13歳のエナトさん(仮名)。(エチオピア、2022年5月26日撮影) © UNICEF_UN0651316_Pouget

【2022年6月29日 ナイロビ(ケニア)発】

ユニセフ(国連児童基金)は、「アフリカの角」とよばれるアフリカ大陸東部地域において、過去40年間で最も深刻な干ばつが家族を窮地に追いやる中、12歳という若さで児童婚や女性器切除(FGM)を強いられる女の子の割合が「驚異的な数値」に達していると警鐘を鳴らしました。

ユニセフの分析によると、干ばつの影響を最も受けたエチオピアの複数の地域において、児童婚の件数が、年間平均で2倍以上に増えていることが分かりました。エチオピア、ケニア、ソマリアでは、危機の影響により中途退学のリスクがある子どもの数が3カ月間で3倍に増えました。そして、非常に多くの若い女の子たちが、FGMを受けたり、結婚を強いられたりするなど、子どもの保護に対するさまざまなリスクにさらされているのです。

アフリカの角地域では、気候変動による干ばつで水源は枯れ、家畜も息絶えています。さらに、ウクライナの紛争によって食料や燃料の価格が急騰したことも相まって、家族は生き延びるために絶望的な選択をしなければならない局面に置かれています。
 

エチオピアから逃れ、ソマリアのドロー避難民キャンプで母親と暮らす、8歳のナニイさん。「ここは水も食料も足りない。以前から干ばつの被害はあったけど、今は家畜や畑さえありません」と話す。(ソマリア、2022年3月撮影) © UNICEF_UN0607630_Rエチオピアから逃れ、ソマリアのドロー避難民キャンプで母親と暮らす、8歳のナニイさん。「ここは水も食料も足りない。以前から干ばつの被害はあったけど、今は家畜や畑さえありません」と話す。(ソマリア、2022年3月撮影) © UNICEF_UN0607630_R

飢饉早期警報システム・ネットワークによると、ソマリアでは現在、21万3,000人が飢饉のリスクにさらされており、180万人以上の子どもが、命を脅かす重度の急性栄養不良の治療を切実に必要としています。また、女の子を結婚させる親や養育者が増えています。これには、持参金をもらって残りの家族を養うため、嫁がせることで養わなければいけない家族が一人減るため、あるいは娘がより裕福な家庭に入ることができるようにするためなど、さまざまな理由があります。

ユニセフ・東部・南部アフリカ地域事務所子どもの保護アドバイザーのアンディ・ブルックスは、「アフリカの角地域における児童婚とFGMの割合は、驚異的な数となっています。貧困に苦しみ、12歳の女の子を5回り以上も違う男性と結婚させている家族もいるのです」と述べました。

児童婚とFGMによって、女の子は学校に通えず、家庭内暴力や生涯にわたる貧困のリスクにさらされ、子ども時代を奪われてしまいます。これは子どもたちの危機であり、エチオピア、ケニア、ソマリアにおけるユニセフの支援対応を拡大するために、緊急に資金が必要です。短期的に命を守るだけでなく、長期的に彼らを保護しなければなりません。

児童婚とFGMに関するデータは、この地域における報告やサービスが不十分なため、限定的です。ユニセフが入手可能な政府データと人道評価を分析した結果は、以下の通りです。
  • アフリカの角地域全体で、危機が深まるにつれ、女の子の中途退学および児童婚やFGMのリスクが高まっています。エチオピア、ケニア、ソマリアでは、干ばつの影響により中途退学のリスクにさらされている子どもの数が3カ月間で3倍(110万人から推定330万人)に増えています。
  • エチオピアでは、地方自治体の情報によると、2021年1月から4月および2022年の同時期の間に、干ばつの被害が最も大きかった地域であるソマリ州、オロミア州、南部諸民族州(SNNP)で、児童婚の発生件数が平均で119%増加しました。また、同じ期間内に、SNNPでのFGMの発生件数は27%増加しました。
  • ソマリランドで1月に行われた評価では、インタビューを受けた人のおよそ4分の1が、干ばつが原因で、児童婚、家庭内暴力、性暴力などジェンダーに基づく暴力(GBV)が増加したと報告しました。中には50%以上増加した地域もありました。また、プントランドで2月に行われた人道支援ニーズの評価では、報告されたケースの59%が児童婚であり、そのうちの多くがFGMも同時に報告されています。
  • ケニアでも、女の子たちが児童婚やFGMのリスクにさらされています。干ばつの被害を受けた23の郡のうち14の郡は、すでにFGMの温床となっており、その割合は98%にも上ります。現在、こうした地域で暮らす女の子たちは、家族が結婚に備えるために、より若い年齢でFGMを受けさせられるリスクがあります。また、国境地帯に住む女の子がFGMや年配の男性との結婚のために近隣諸国に連れて行かれることもあります。
 

義理の兄が助けてくれたおかげで、結婚を逃れることができた12歳の女の子。今はユニセフが改修を支援した子ども支援センターで、他の子どもたちとともに、一時的に暮らしている。(ケニア、2022年6月7日撮影) © UNICEF_UN0657272_Odhiamb義理の兄が助けてくれたおかげで、結婚を逃れることができた12歳の女の子。今はユニセフが改修を支援した子ども支援センターで、他の子どもたちとともに、一時的に暮らしている。(ケニア、2022年6月7日撮影) © UNICEF_UN0657272_Odhiamb

ウクライナでの紛争が危機を加速させています。ソマリアはかつて小麦の92%をロシアとウクライナから輸入していましたが、現在では供給が絶たれています。また、食料価格の高騰によって、家族は基本的な食料品を購入することができていません。

ユニセフは、アフリカの角全域で、厳しい状況に置かれている女性や子どもたちの間で高まっている保護ニーズに対応するため、子どもの保護とGBVサービスの拡大に取り組んでいます。これには、暴力、搾取、虐待、児童婚のリスク軽減を目的としたコミュニティベースのプログラムの運営や、暴力を受けた女性や子どもの回復を支援するサービスの提供などが含まれます。しかし、アフリカの角地域の干ばつへの対応のための資金を国際社会に要請しているものの、必要な資金の3分の1も確保できていません。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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