紅藻Cyanidium caldariumのPSI-LHCI超複合体の立体構造とLHCの分子進化の解明〔静岡大学, 岡山大学, 理化学研究所, 東北大学, 京都大学,豊橋技術科学大学〕

国立大学法人岡山大学

静岡大学と岡山大学、理化学研究所、東北大学、京都大学、豊橋技術科学大学の共同研究プレスリリースです

2024(令和6)年 3月 11日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/




<研究のポイント>

  • クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子構造解析により、酸素発生型光合成を行う紅藻Cyanidium caldarium(以下、C. caldarium)の光化学系I(PSI)と集光性色素タンパク質(LHC)から構成されるPSI-LHCI超複合体の立体構造を解明しました。

  • C. caldarium PSI-LHCIはPSI単量体に5個のLHCIサブユニットが結合した分子構造であることを明らかにしました。

  • PSI-LHCIの構造解析に基づいたLHCIタンパク質の分子系統解析により、紅藻を起点とする紅色進化系統におけるLHCIの進化モデルを提案しました。



◆研究概要

 静岡大学の長尾遼准教授、岡山大学の加藤公児特任准教授、沈建仁教授、理化学研究所・東北大学の米倉功治グループディレクター・教授、濵口祐准教授、京都大学の熊沢穣博士課程生、伊福健太郎教授の研究グループは、理化学研究所の堂前直ユニットリーダー、豊橋技術科学大学の広瀬侑准教授らと共に、クライオ電子顕微鏡(日本電子社 CRYO ARM 300)を用いた単粒子構造解析により、紅藻C. caldarium由来のPSI-LHCIの立体構造を1.92 Åの分解能で解明しました。


 得られたPSI-LHCI構造には、PSI単量体に5個のLHCIが結合していました。また、C. caldariumを含むPSI-LHCIの立体構造が明らかとなっている紅色進化系統のLHCIに焦点を絞り、分子系統解析に基づくLHCIの進化モデルを提案しました。


 LHCの進化に関する研究は分子系統解析が主流ですが、この方法だけではどのLHCがPSIに結合するのかを特定することができません。本研究では、PSIに結合するLHCIを立体構造解析によって特定し、その特定されたLHCIのみに焦点を当てた分子系統解析を行いました。このアプローチにより、紅色進化系統のLHCIの分子進化について、これまでにない角度からの理解が可能になりました。このように、立体構造解析と分子系統解析を組み合わせることにより、LHCIの進化に関する研究に新たな潮流が生まれることが期待されます。


 本研究成果は、2024年3月5日に、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaに掲載されました。





◆研究者コメント
 静岡大学農学部 准教授・長尾遼(ながおりょう)
 本研究では、それぞれのグループの専門的な知識や技術を融合することにより、LHCの進化に迫る新たな研究の方向性を示すことができました。今後も本研究基盤を利用することにより、LHCの進化を探求していきたいです。



◆論文情報
 掲載誌名: Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
 論文タイトル: The structure of PSI-LHCI from Cyanidium caldarium provides evolutionary insights into conservation and diversity of red-lineage LHCs
 著者: Koji Kato, Tasuku Hamaguchi, Minoru Kumazawa, Yoshiki Nakajima, Kentaro Ifuku, Shunsuke Hirooka, Yuu Hirose, Shin-ya Miyagishima, Takehiro Suzuki, Keisuke Kawakami, Naoshi Dohmae, Koji Yonekura, Jian-Ren Shen, Ryo Nagao
 DOI: https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2319658121



◆詳しい研究内容について

 紅藻Cyanidium caldariumのPSI-LHCI超複合体の立体構造とLHCの分子進化の解明

 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20240308-1.pdf





◆本件お問い合わせ先

<研究に関すること>
 静岡大学農学部 准教授 長尾 遼(ながお りょう)
 TEL : 054-238-4251
 WEBサイトやSNSのまとめ(QRコード): https://linktr.ee/ryonag

 理化学研究所 放射光科学研究センター グループディレクター 米倉功治(よねくら こうじ)
 (東北大学 多元物質科学研究所 教授)

 岡山大学異分野基礎科学研究所 教授  沈 建仁(しん けんじん)

<報道に関すること>
 静岡大学 広報・基金課
 TEL : 054-238-5179

 岡山大学 総務・企画部 広報課
 TEL : 086-251-7292

 理化学研究所 広報室 報道担当
 TEL : 050-3495-0247

 東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室
 TEL : 022-217-5198

 京都大学 渉外部 広報課 国際広報室
 TEL : 075-753-5729

 豊橋技術科学大学 総務課 広報係
 TEL : 0532-44-6506


<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
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上場
未上場
資本金
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設立
1949年05月