2分に1人、妊娠・出産中の女性が死亡~改善進まず、SDGs達成困難か【プレスリリース】

ユニセフら新報告書発表

妊婦健診で、腹部の計測を受ける妊娠6カ月のソニアさん。(グアテマラ、2022年10月29日撮影) © UNICEF_UN0731284_Izquierdo妊婦健診で、腹部の計測を受ける妊娠6カ月のソニアさん。(グアテマラ、2022年10月29日撮影) © UNICEF_UN0731284_Izquierdo

【2023年2月23日 ジュネーブ/ニューヨーク/ワシントンD.C.発】

ユニセフ(国連児童基金)ら国連機関が本日発表した報告書の最新推計によると、妊娠・出産中の女性が2分に1人亡くなっています。この報告書「妊産婦死亡率の傾向(Trends in Maternal Mortality)」は、世界のほぼすべての地域で妊産婦の死亡が増加、または横ばいの傾向にあるという、女性の健康における驚くべき懸念が見られていることを明らかにしています。

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2000年から2020年までの国別、地域別および世界の妊産婦死亡を追跡調査したこの報告書によると、2020年の世界の妊産婦死亡数は28万7,000人と推定されています。これは、国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)が発効した2016年の死亡数30万9,000人からわずかな減少にとどまっていることを示しています。報告書は、2000年から2015年の間に妊産婦死亡の減少に大きな進展がありましたが、それ以降改善はほとんど見られず、場所によっては増加していることを明らかにしています。
 

最南東部のディファにある母子センターで、胎児の心音確認を受ける妊婦。(ニジェール、2022年7月) © UNICEF_UN0684367_Dejongh最南東部のディファにある母子センターで、胎児の心音確認を受ける妊婦。(ニジェール、2022年7月) © UNICEF_UN0684367_Dejongh

2016年から2020年にかけて、国連が区分する8つの地域のうち、欧州・北米とラテンアメリカ・カリブ海諸国の2地域では妊産婦死亡率がそれぞれ17%と15%上昇しました。それ以外のほとんどの地域では、数値は横ばいでした。ただし、報告書は改善が可能であると指摘しています。例えば、オーストラリア・ニュージーランド、中央・南アジアの2地域は、同期間に妊産婦死亡率が大幅に低下し(それぞれ35%と16%)、また世界31カ国でも低下が見られました。

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、「何百万もの家族にとって、出産という喜ばしい奇跡が、妊産婦の死という悲劇に変わってしまっています。特に、治療の知識や手段が存在する一般的な合併症の場合には本来、お母さんは出産時に命の危険を感じる必要はありません。ヘルスケアへの公平なアクセスは、誰であろうと、どこにいようと、すべての母親に、安全な出産と家族と共にある健康な未来を手に入れる公平なチャンスをもたらすのです」と述べています。

妊産婦死亡の多くは、引き続き世界の最貧地域と紛争の影響を受けた国々にほぼ集中しています。2020年には、全妊産婦死亡の約70%がサハラ以南のアフリカで起きています。深刻な人道危機に直面している9カ国では、妊産婦死亡率が世界平均の2倍以上(出生10万人当たりの妊産婦死亡数が551人、世界平均は223人)になっています。
 

アルアの病院で、看護師から状態の確認を受ける生まれたばかりの赤ちゃん。(ウガンダ、2023年1月撮影) © UNICEF_UN0770729_Rutherfordアルアの病院で、看護師から状態の確認を受ける生まれたばかりの赤ちゃん。(ウガンダ、2023年1月撮影) © UNICEF_UN0770729_Rutherford

重度の出血、高血圧、妊娠に関連する感染症、安全でない人工妊娠中絶による合併症、妊娠によって悪化する基礎疾患(HIV/エイズやマラリアなど)が妊産婦の死亡の主な原因となっています。これらはすべて、質の高い丁寧な医療を受けることができれば、ほぼ防ぐことができ、治療も可能です。

コミュニティを中心としたプライマリ・ヘルスケアは、女性、子ども、若者のニーズに応え、補助分娩や産前・産後ケア、小児予防接種、栄養、家族計画といった重要なサービスへの公平なアクセスを可能にすることができます。しかし、プライマリ・ヘルスケア制度への資金不足、訓練を受けた医療従事者の不足、医療物資のサプライチェーンの弱さなどが、その進展を脅かしています。

およそ3分の1の女性が、推奨されている8回の妊婦検診のうち4回さえも受けることができず、または不可欠な産後ケアを受けていません。約2億7,000万人の女性が現代的な家族計画へのアクセスを欠いています。女性による自身のリプロダクティブ・ヘルスの主導、特に子どもを産むかどうか、いつ産むかについての決定は、女性が計画的に間隔を空けて出産を行い、自分の健康を守るために非常に重要です。所得、教育、人種、民族に関連する不公平は、社会から疎外された妊婦のリスクをさらに高めます。彼女たちは、必要不可欠な妊産婦ケアへのアクセスが最も少ないが、妊娠中に基礎疾患に苦しむ可能性が最も高いのです。
 

ポルトープランスの保健センターで、コレラの治療を受ける妊娠4カ月目のメルテラさん。(ハイチ、2022年12月撮影) © UNICEF_UN0771655_Georges Harry Rouzierポルトープランスの保健センターで、コレラの治療を受ける妊娠4カ月目のメルテラさん。(ハイチ、2022年12月撮影) © UNICEF_UN0771655_Georges Harry Rouzier

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが、妊産婦の健康に関する進展をさらに妨げた可能性があります。現時点の一連のデータは2020年までのもののため、パンデミックによる妊産婦死亡への真の影響を示すには、より多くのデータが必要となります。いずれにせよ、新型コロナウイルスへの感染は妊娠中のリスクを高める可能性があるため、各国は妊婦および妊娠を計画している女性が新型コロナウイルス感染症のワクチンや効果的な妊産婦ケアを受けられるような措置を講じる必要があります。

この報告書は、世界が、妊産婦死亡の削減に関する国際的な目標の達成に向けた進展を大幅に加速させなければ、2030年までにさらに100万人以上の女性の命を危険にさらすことを明らかにしています。

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本報告書について
この報告書は、ユニセフ、世界保健機関(WHO)、国連人口基金(UNFPA)、世界銀行グループ、国連経済社会局人口部からなる国連妊産婦死亡率推計機関間グループを代表して、世界保健機関が作成したものです。2000年から2020年までの妊産婦死亡率の水準と傾向を、各国のデータを用いて推計しています。本出版物のデータは、世界保健機関と国連妊産婦死亡率推計機関間グループが過去に発表したすべての推計値に取って代わるものです。

データについて
妊産婦死亡に関し、SDGsターゲット3.1では、2030年までに世界の妊産婦死亡率(MMR)を出生10万人当たり70人未満とすることを目標としています。2020年の世界のMMRは、出生10万人あたり223人と推定され、2015年の227人、2000年の339人から減少しています。2000年から2015年までのMDGs(ミレニアム開発目標)下では、世界の年間削減率は2.7%でしたが、SDGs下(2016年から2020年まで)の最初の5年間における削減ペースは鈍下しており、ほぼ進捗が無い状態です。

本報告書では、SDGsの報告に用いられる以下の地域別に細分類したデータが含まれています。
中央アジア・南アジア/サハラ以南のアフリカ/北米・欧州/ラテンアメリカ・カリブ海諸国/西アジア・北アフリカ/オーストラリア・ニュージーランド/東アジア・東南アジア/オーストラリア・ニュージーランドを除くオセアニア

妊産婦死亡とは、女性が、妊娠中または妊娠終了後6週間以内に、妊娠・出産に関連する合併症により亡くなることと定義されています。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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