山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞!圧倒的な取材力で「新世界」のリアルを可視化する第一級の現場報告『移民・難民たちの新世界地図:ウクライナ発「地殻変動」一〇〇〇日の記録』
ヒト・モノ・カネ・情報の「新たな奔流」が世界を変えていく。常識が全く異なる〝パラレルワールド〟を往還しながら、圧倒的な取材力で世界が抱える根本的な問題を抉り出す衝撃のルポルタージュ。
株式会社新潮社が2024年7月に刊行した、村山祐介氏のノンフィクション『移民・難民たちの新世界地図:ウクライナ発「地殻変動」一〇〇〇日の記録』が、このたび山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞いたしました。
厳寒の森に「移民兵器」として放たれるクルド人家族、鉄の棺桶のような船で地中海に漕ぎ出すアフリカの人びと、徴兵を逃れて雪の山に消えるウクライナの青年たち……。近代以降の国家を単位とした秩序が崩れ落ちる地のリアルを活写する衝撃の一冊。今回の山本美香記念国際ジャーナリスト賞をきっかけにさらに多くの方に読まれていくノンフィクションです。

■山本美香記念国際ジャーナリスト賞とは
山本美香記念国際ジャーナリスト賞は、2012年8月20日、中東シリアのアレッポにて取材中、銃弾に斃れた山本美香(享年45)のジャーナリスト精神を引き継ぎ、果敢かつ誠実な国際報道につとめた個人に対して贈ろうとするものです。
山本美香のジャーナリスト精神をひとことで言えば、不正義や不条理に対して何がどのように不正義で不条理であるのか、伝聞ではなく自分自身の目と耳でとらえ、世界中に発信しようとするタフな行動力のことであり、不正義や不条理がおこなわれているとすれば、それらの国々や地域において、生死のはざまをそれでも懸命に生きていこうとする人びとの姿を深い共感をもって世界中に伝えようとするヒューマニスティックな視座のことである。この両面を併せ持つ国際報道をおこなった個人の営為に対して、同賞を贈りたいと思います。
国際報道といっても、たとえば東日本大震災のような日本国内で起こった世界史的レベルの出来事についての報道も含まれます。映像、写真、文章、この三つのジャンルを選考対象とし、一年間を通じてもっとも素晴らしいと思われる国際報道にあたった個人を顕彰いたします。候補作は山本美香記念財団理事会・評議員会によって選定し、授賞作は選考委員会によって決定します。(公式サイトより)
■受賞の言葉
不正義や不条理を自分の目と耳でとらえ、発信する。そんなジャーナリスト精神を体現した山本美香さんの名を冠した賞を頂くのは大きな励みになります。それと同時に、今さらながら現場で会えなかった無念がこみ上げてきます。2012年に山本さんが亡くなった前後に私もシリアにおり、いつかどこかでお目にかかれるのではないかと思っていました。
凄惨な内戦が終わったシリアを今年、再訪しました。瓦礫だらけの街に暮らす人々からは、解放の喜びや新たな国づくりへの期待と不安、そして報復への恐怖まで、様々な言葉と感情がほとばしるようにあふれ出てきて、秘密警察を恐れて口をつぐんでいた内戦中とは別の国のようでした。きっと山本さんも自分の目と耳で取材したかっただろうな、と思うと悔しくてなりません。
山本さんが問い続けた世界の不正義はいま、歯止めがきかなくなっています。なぜミサイルが撃ち込まれるのか、何のために殺されるのか。理由もわからないまま多くの人々が故郷を追われ、今この瞬間も命が失われ続けています。歯止めなき時代への大きな転換点が、ロシア軍によるウクライナ侵攻でした。この本は、新聞社を辞めてフリージャーナリストになってオランダに移り住んだ私が、侵攻前後の欧州大陸とその周縁で、不条理を背負わされ、命がけで旅する人たちの足跡を3万キロ行き来しながらたどった約1000日の記録です。
ウクライナ・ブチャの雑木林に転がる遺体、地中海で溺れ死んだ密航者たちの名もなき墓。人々が逃れたルートとその源流は死があふれていました。踏みつぶされたように崩れた集合住宅の前で「何のために?」と私に迫ったおばあさん。突然、あるいは何世代にもわたる不条理を背負わされた人々の胸には、どこにも届かなかった声がしまい込まれていました。
権力や富、発信力を持つ者の大きな声はメディアを介して広く遠くまで届き、ネット上には虚偽と誇張が入り混じり、煽情的な言葉があふれています。情報の洪水の中で、フリーになった自分が伝えるべきことは何か。たどりついたのが、かき消された叫びやしまい込んだ気持ちといった小さな声でした。受賞の報を聞いて、山本さんが伝えようとしたことと重なり合うことに気づき、改めて勇気づけられました。現場に行かないと聞こえない、小さな声を伝えるジャーナリズムの力を信じていきます。
■書籍内容紹介
ヒト・モノ・カネ・情報の「新たな奔流」が世界を変えていく。衝撃のルポ。
厳寒の森に「移民兵器」として放たれるクルド人家族、鉄の棺桶のような船で地中海に漕ぎ出すアフリカの人びと、徴兵を逃れて雪の山に消えるウクライナの青年たち……。秩序が崩れ落ちる欧州に出現した〝パラレルワールド〟を往還しながら、圧倒的な取材力で「新世界」のリアルを可視化する第一級の現場報告。
■著者紹介:村山祐介(むらやま・ゆうすけ)

ジャーナリスト。1971年東京都生まれ。立教大学法学部卒。1995年に三菱商事、2001年に朝日新聞社に入社。ワシントン特派員としてアメリカ外交、ドバイ支局長として中東情勢を取材し、国内では政権や経済を主に担当した。2020年に退社してフリーに。2021年からオランダ・ハーグを拠点に国境を越える動きを追う「クロスボーダー」をテーマに取材し、マスメディアや自身のYouTubeチャンネル「クロスボーダーリポート」などで発信している。アメリカ大陸を舞台にした移民・難民を追った取材で2018年にATP賞テレビグランプリ・ドキュメンタリー部門奨励賞、2019年度にボーン・上田記念国際記者賞、2021年にノンフィクション書籍『エクソダス アメリカ国境の狂気と祈り』(新潮社)で講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞した。
■書籍データ
【タイトル】移民・難民たちの新世界地図:ウクライナ発「地殻変動」一〇〇〇日の記録
【著者名】村山祐介
【発売日】2024年7月18日
【造本】ソフトカバー
【定価】2,420円(税込)
【ISBN】978-4-10-353652-9
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/353652/
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