2022年のはしか件数、前年比倍増:コロナ禍で接種率5ポイント減少~ユニセフ 『世界子供白書2023』で警鐘【プレスリリース】


北東部のハサカで行われたはしかとポリオの予防接種キャンペーンで、はしかのワクチン接種を受ける男の子。(シリア、2022年10月撮影) © UNICEF_UN0757753_Souleiman北東部のハサカで行われたはしかとポリオの予防接種キャンペーンで、はしかのワクチン接種を受ける男の子。(シリア、2022年10月撮影) © UNICEF_UN0757753_Souleiman

【2023年5月19日 東京発】


ユニセフは先月、『世界子供白書2023 すべての子どもに予防接種を(The State of the World’s Children 2023: For Every Child, Vaccination)』を発表しました。パンデミックにより子どもへの予防接種が過去30年間で最も後退し、世界中のいたるところで、子どもの定期予防接種が中断・後退していることに警鐘を鳴らしています。


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『世界子供白書』は、ユニセフが1980年から発行を続ける基幹報告書です。『世界子供白書2023 すべての子どもに予防接種を』では、2019年から2021年の間に合計6,700万人の子どもたちが予防接種を受けられず、112カ国で接種率が低下していると指摘しています。新型コロナウイルスのパンデミックは、世界の保健・医療システムを疲弊させ、リソースを新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に転用させました。また、医療従事者の不足や、自宅待機の措置もあり、世界中のいたるところで、子どもの定期予防接種が中断・後退しました。

 

コロナ禍の直前または最中に生まれた子どもたちは、通常であれば既に予防接種を受ける年齢を過ぎており、そうした子どもたちに予防接種を行い、致命的な病気の感染拡大を防ぐための緊急対策を講じる必要性は増しています。例えば2022年には、はしかの発生件数が前年の2倍以上となりました。2019年から2021年にかけ、はしかの予防接種を受けた子どもの割合は、86%から81%と5ポイント減少しています。はしかは非常に感染力が強いため、集団免疫を獲得するためには、地域社会の約95%が予防接種を受けている必要があります。そのため、接種率の低下は、はしか発生のリスクを高めています。また、ポリオによって身体に麻痺を生じた子どもの数は、2022年には前年比で16%も増加しています。2019年から2021年までの3年間をその直前の3年間と比較すると、ポリオによって麻痺を生じた子どもの数は8倍に増加しており、予防接種の取り組みを持続させる必要性が浮き彫りになっています。


学校で行われたはしかと風疹の予防接種キャンペーンで、ワクチン接種を受ける女の子。(ネパール、2023年1月撮影) © UNICEF_UN0787912_Upadhayay学校で行われたはしかと風疹の予防接種キャンペーンで、ワクチン接種を受ける女の子。(ネパール、2023年1月撮影) © UNICEF_UN0787912_Upadhayay

パンデミックはまた、既に存在していた社会の不公平を悪化させました。特に、最も疎外されたコミュニティに住む多くの子どもたちにとって、予防接種は、供給・アクセス・価格等の理由で未だに手の届かない存在です。予防接種普及の進展は、パンデミック以前から、10年近く停滞し、国際社会は、世界で最も疎外された子どもたちにワクチンを届けることに苦慮していたのです。

 

2019年から2021年にかけて定期接種を受け損ねた6,700万人の子どものうち、4,800万人は、「ゼロ投与」とも呼ばれる定期予防接種を一度も受けていない子どもたちです。2021年末の時点でゼロ投与の子どもの数が最も多かったのは、いずれも出生コーホートが非常に大きいインドとナイジェリアでした。増加が顕著だったのは、ミャンマーとフィリピンでした。

 

このような子どもたちは、最も貧しく、最も遠隔な土地で、社会経済的に疎外されたコミュニティで暮らしており、紛争の影響を受けている子どもたちも含まれます。世界保健機関(WHO)の協力研究機関として、主に低・中所得国の医療・保健状況を公平性の観点から監視するInternational Center for Equity in Healthが白書のためにまとめた最新のデータによると、最貧困層の世帯では5人に1人の子どもが「ゼロ投与」であるのに対し、富裕層では20人に1人であることが判明しました。また、予防接種を受けていない子どもたちは、多くの場合農村部や都市のスラム街など、支援の手の届きにくい地域に住んでいることを明らかにしました。さらに、そうした子どもたちの家庭の多くでは母親が教育を受けておらず、家庭内でほとんど発言権を持たないこともわかりました。こうした課題は、低・中所得国で最も大きく、都市部で約10人に1人、農村部で6人に1人の子どもが「ゼロ投与」であると報告されています。他方、上位中所得国では、都市部と農村部の間のそうした格差はほとんど見られませんでした。


カッサラ州の予防接種拡大プログラムを実施している施設内にある、ワクチン保管冷蔵庫で、ワクチンと保冷温度の確認をするスタッフ。(スーダン、2023年3月撮影) © UNICEF_UN0795956_Mojtba Moawia Mahmoudカッサラ州の予防接種拡大プログラムを実施している施設内にある、ワクチン保管冷蔵庫で、ワクチンと保冷温度の確認をするスタッフ。(スーダン、2023年3月撮影) © UNICEF_UN0795956_Mojtba Moawia Mahmoud

すべての子どもに予防接種を行うためには、プライマリ・ヘルスケア(基礎的保健サービス体制)を強化し、その多くを女性が占める最前線の医療従事者たちに必要なリソースと支援を提供することが重要です。白書はまた、予防接種活動の最前線に立つ女性たちは、低賃金や非正規雇用、正式な研修の機会やキャリア機会の欠如といった問題に直面し、自らの安心安全な生活さえも脅威にさらされていると訴えます。

 

この子どもの生存の危機に対処するため、ユニセフは各国政府に対し、予防接種の実施に必要な資金を増やすとするこれまでのコミットメントを新たな決意をもって履行するとともに、「ゼロ投与」の子どもへの予防接種を緊急に実施・加速させるため、関係者と協力して、新型コロナウイルス感染症対策で確保した資金の残りを含む、あらゆる利用可能なリソースを活用するよう求めています。

 

また白書では、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が始まって以降、調査対象の55カ国中52カ国で、「ワクチンは子どもにとって大切」と考える人々の割合が低下した、と指摘しています。特に日本を含む5カ国では、3分の1以上の低下が見られました。

 

ワクチンへの信頼度は、調査環境や調査が実施されたタイミングなどによって大きく変化しうる指標です。よって、今回の調査結果が長期的な傾向を示しているか否かを判断するためには、さらなるデータ収集と分析が必要です。上述のとおり子どもにとってワクチンが大切であると考える人の割合に落ち込みが見られた一方で、ワクチンに対する総合的な支持は比較的高い水準を維持しました。調査対象55カ国のほぼ半数の国々では、回答者の80%以上が、予防接種は子どもにとって大切であると認識しています。

 

はしかの予防接種を受ける生後2カ月のアブディラハマンちゃん。(ソマリア、2022年10月撮影) © UNICEF_UN0773570_Hillはしかの予防接種を受ける生後2カ月のアブディラハマンちゃん。(ソマリア、2022年10月撮影) © UNICEF_UN0773570_Hill

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは本白書の発表時に、「コロナ禍の中、科学者たちは急速にワクチンを開発し、数え切れないほどの命を守りました。しかし、この歴史的な偉業にもかかわらず、あらゆる種類のワクチンに対する恐怖と偽情報が、ウイルスそのものと同じくらい広く流布しました。この(白書が示す)データは、憂慮すべき警告信号です。私たちは、子どもへの定期予防接種に対する信頼までもがコロナ禍の犠牲者となることを見過ごすわけにはいきません。このままでは、多くの子どもたちがはしかやジフテリアなどの予防可能な感染症にかかり、次々と亡くなっていくのを目の当たりにすることになるかもしれません」と述べています。

 

ラッセル事務局長はまた、「予防接種は、何百万人もの命を守り、致命的な病気の発生から地域社会を守ってきました。コロナ禍を経て我々は皆、病気の広がりは国境で止まらないことをよく理解しています。定期的な予防接種の実施と強固な保健・医療体制の確立は、将来のパンデミック、そして不必要な死と苦しみを防ぐための最善の方法です。新型コロナウイルス感染症対策のために確保された資金がまだ残っている今こそ、その資金を予防接種の強化に振り分け、すべての子どもたちのための持続可能なシステムの構築に投資する時なのです」とも述べています。


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『世界子供白書』は、ユニセフの代表的な報告書の一つです。2023年版は、定期予防接種をテーマに取り合げた初めての白書です。ユニセフは毎年、世界の子どもたちの約半数に、命を守るワクチンを届けています。


 

■『世界子供白書2023』発表時のプレスリリースはこちらでご覧いただけます。

https://www.unicef.or.jp/news/2023/0064.html  


■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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業種
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本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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