ラテンアメリカ・カリブ海諸国:暴力・貧困・気候変動で子どもの移動、記録的増加【プレスリリース】
移動する4人に1人が子ども、割合は世界最大
【2023年9月7日 パナマ/ニューヨーク発】
ラテンアメリカとカリブ海諸国を通って移動する子どもの数が記録的な増加を見せており、今や移動人口に占める割合が世界の他のどの地域よりも大きくなっている、とユニセフ(国連児童基金)は本日発表した報告書「チャイルド・アラート:ラテンアメリカとカリブ海諸国の子どもの移動(Child Alert: Child Migration in Latin America and the Caribbean)」において警鐘を鳴らしました。
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記録上最多の子どもが、ラテンアメリカとカリブ海諸国を通る3つの主要なルートを使い移動しています。それらは、コロンビアとパナマの間のダリエン地峡のジャングルを通るルート、南米から国外への移動ルート、そして中米北部とメキシコの主要な通過地点を通るルートです。ラテンアメリカとカリブ海諸国の移動の様相はこの10年で劇的に変化しました。
ユニセフのラテンアメリカ・カリブ海諸国地域事務所代表のギャリー・コニーユは、「憂慮すべきことに、犯罪組織による暴力、情勢不安、貧困、気候変動による異常気象がこの地域を襲い、さらに多くの子どもたちを故郷から追いやっています。遠くはアフリカやアジアなどさまざまな出身国から、ますます多くのしかも低年齢化した子どもたちが、しばしばたった一人で移動してきます。彼らは、数カ国、場合によっては地域全体を横断する途中で、病気や怪我、家族との離散、虐待に苦しめられています。そしてたとえ目的地にたどり着いたとしても、安泰な将来は待っていないことが多いのです」と述べています。
2021年には少なくとも2万9,000人の子どもが、2022年には推定4万人の子どもが危険なダリエン地峡を横断しました。2023年の最初の8カ月では6万人以上の子どもがダリエンのジャングルをくぐり抜けました。その半数は5歳未満で、ダリエン地峡を渡った子どもの数は過去最多となりました。一方、米国のメキシコとの国境で当局に捕えられる難民や移民の子どもの数も増加しています。
米国税関・国境警備局(CBP)は、2021会計年度に14万9,000人以上、2022会計年度には15万5,000人以上の子どもの入国を記録しています。CBPによると、2023会計年度の最初の7カ月間には、8万3,000人以上の子どもが入国しています。暴力や情勢不安、気候関連の災害の増加により避難や強制移動させられる人々が増えているため、このような傾向は、この地域における他のより小規模な移動の流れでも見られています。
ラテンアメリカとカリブ海諸国の主要なルートに沿って移動する子どもの割合も、過去3年間で最高となりました。世界全体では、移民人口に占める子どもの割合は13%ですが、この地域では、移動する人の約4人に1人(25%)が子どもであり、2019年の19%から増加しています。これと匹敵するのはアフリカのサハラ以南の地域だけで、そこでも移民人口の25%を子どもが占めています。
このような危険な旅をする幼い子が増えており、主要通過地点の中には、移動する子ども全体の最大91%を11歳未満が占める所もあります。この新たな現実は、出身国、経由国、最終目的国における国の移民政策と人道的対応に課題を突きつけています。
特に子どもたちにとって、非正規な移動ルートに潜む物理的リスクは数え切れません。ジャングルや河川から鉄道や幹線道路に至るまで、子どもたちが旅の途中に越える危険な地点があるだけでなく、暴力や搾取、虐待に遭遇することもあります。
2022年にダリエンのジャングルを歩いて渡った8歳の女の子アンジェラさん(仮名)は、「ジャングルの中は悪夢のようでした。長い旅の中で、そこを抜け出た時が一番うれしかったです」と語りました。旅の途中、アンジェラさんと10歳の姉は両親と離ればなれになり、2日間道に迷った末に再会できたのです。一家は40日以上かけてグアテマラに到着し、その後目的地へと向かいました。
ラテンアメリカとカリブ海諸国における移民の流れは複雑かつ動的で、しばしば交錯します。つまり、多くの国が、同時に出身国や経由国、目的国もしくは帰還国である、という課題があります。移民や難民の子どもとその家族が確実に保護され、強制移動の根本原因に対処できるようにするためには、この地域内での統合的な取り組みが必要となるのです。
ユニセフは、安全な移動のための正確な情報や命を守る支援を提供し、子どもたちが必要不可欠なサービスを受けられるよう、移動ルート上のパートナーや各国政府と協力しています。これには、子どもに対する暴力を予防、特定するとともに子どもが暴力から守られるように支援することや、移動の途中で困難や搾取に直面する子どもや家族を支援することも含まれます。
ユニセフは、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、ガイアナ、ペルー、トリニダード・トバゴおよびウルグアイの難民と移民の子どもたちの人道的ニーズを満たすため、1億6,050万米ドルの資金を国際社会に要請しています。2023年8月現在、集まったのは必要とする資金の20%未満(約3,250万米ドル)にすぎません。ユニセフはまた、中米とメキシコを横断して移動する子どもと家族のために、2023年に1億4,231万米ドルの資金を要請しています。8月現在、集まったのは、必要とする資金の26%のみです。
「ラテンアメリカとカリブ海諸国地域における前例のない規模の子どもの移動の危機は、人道的対応を緊急に強化するとともに、子どもや家族がどこの出身であれ、彼らの権利と将来を守るために、安全で正規の移動経路を拡充することを必要としています」と、コニーユ代表は付け加えました。
ユニセフは引き続き、この地域の国連加盟国に対し、移民・難民の子どもたちの権利や安全、ウェルビーイングを担保するため、以下のような取り組みを行うよう要請します。
国際的保護に対して地域全体で取り組みを行い、子ども特有の移動の根本原因に対処し、この地域における人の移動と政策対応との相互関連性を強化する。
出身国に資金を投入することで、社会的サービスのアクセスを改善し、暴力の防止・対処に取り組み、脆弱な立場にある子どもや若者、家族のために教育と生計の機会を創出し、親が移住しても出身国に残って暮らす子どもを支援する。
領域的庇護への権利を守りながら、子どもと家族のための安全で正規の経路を拡充する。それには、家族を再統合させる仕組みを含む。子どもと家族は、庇護を申請するために国の領土に入ることが認められるべきであり、庇護手続き中、そこに留まることができるべきである。
可能な限り早い段階で、子どもの保護担当当局の主導により、子どもに配慮した国境管理や受け入れ手続きを強化する。また、子どもに応じた保護措置を実施し、親以外の養育者と移動している子どもを含め家族の結合を維持し、法的支援を受けられるようにする。
移民・難民の子どもを含むすべての子どもたちを搾取と暴力から守るための、子どもの保護に関する国のシステムを強化することに資金を投入する。また、子どもの最善の利益を決定する適切な手続きが確実に順守されるようにし、国境の安全な通過を促進する。
■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/
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