ハイチ:武装暴力が穀倉地帯へ拡大-治安悪化・栄養不良・感染症にさらされる子どもたち【プレスリリース】
ユニセフ事務局長「国際社会の支援を」
【2023年10月3日 ポルトープランス(ハイチ)/ニューヨーク発】
ハイチの首都で横行している暴力が、同国の主要な米の産地であるアルティボニット県で激化しつつあり、未曾有の飢餓、栄養不良、コレラの再流行のなか、子どもや家族を恐怖に陥れ、暮らしを破壊している、とユニセフ(国連児童基金)は警鐘を鳴らしています。
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入手可能な最新の数値によると、2023年5月から6月にかけて、武装グループ間の支配地域や資源をめぐる衝突の中で、少なくとも60人が死傷しました。昨年の同時期の死傷者は4人でした。この期間に全国で発生した298件の誘拐事件の半数近くがバ・アルティボニット(アルティボニット県南部)で発生し、そのほとんどが公共交通機関で移動中の市民を巻き込んだものでした。ある事件では、市場に向かう女性15人が誘拐され、性的暴行を受けたと報じられています。
治安の悪化により、100校以上の学校が閉鎖され、県内の保健施設も4カ所に1カ所しか利用できません。人口のおよそ3分の1が人道支援を必要としており、その半数近くが子どもです。
首都のポルトープランスで見られたような残忍な暴力は、家族を強制的に追いやり、経済の生命線である米や農産物の生産を中断させました。避難を余儀なくされた人は4月には1万人弱でしたが6月時点では2万2,000人以上に増加しています。大半は受け入れコミュニティに身を寄せていますが、一方、基本的なサービスや武装集団からの保護がほとんど受けらない、急ごしらえの仮住まいで過ごしている人々もいます。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、「いかなる人も、ましてやいかなる子どもも、このような驚くべき残虐さ、剥奪、無法な状況に直面することがあってはなりません。ユニセフを含む人道支援機関は、支援を提供し、その規模を拡大していますが、今まさに切実な状況に置かれているハイチの子どもや家族には、国際社会からのサポートが必要です」と述べています。ラッセル事務局長は、人道支援関連機関で構成される機関間常設委員会(Inter-Agency Standing Committee)のハイチ担当首席アドボケイトにも任命されています。
今週、国連安全保障理事会は、ハイチの市民生活の治安悪化に対処するため、1年間の多国籍治安支援ミッションを創設する決議を採択しました。治安悪化に対処するには、「人道的空間」を守り、危険にさらされている人々を保護するための措置を取る必要があります。
7月20日から8月31日までの期間、ハイチは国別のコレラ感染者数の世界トップ5に入っており、アルティボニット県は最も大きな感染被害を出しています。人道支援従事者によると、治安の悪化により、同県の17の市のうち、コレラの多発地でありつつ、暴力によって事実上孤立している家族もいる、サンマルク、ヴェレット、プチ・リヴィエールをはじめとする6つの市へのアクセスが極めて困難、場合によっては不可能になっています。アルティボニットにある3つの主要浄水設備のうち2つが治安悪化のために稼働を停止し、3つ目には配水の問題が生じています。
深刻化する治安の悪化に加えて、保健や水と衛生といった不可欠なサービスが十分に利用できず、さらにコレラの感染拡大が重なり、栄養不良の子どもは特に致命的な脅威にさらされています。ハイチでは今年、少なくとも11万5,000人の子どもが生命を脅かす栄養不良に苦しむと予想されており、これは2022年と比べて30%の増加です。アルティボニットでは、救命治療が必要とされる子どもの数が、2020年の2倍以上に増えています。
ポルトープランスからアルティボニットへの暴力の広がりは、すでに危機的な人道的緊急事態をさらに悪化させています。2023年には、過去最高の300万人の子どもを含む500万人以上が人道支援を必要としています。500万人近くが急性飢餓の状態にあります。ハイチは、今回の危機が発生するはるか前から、すでに西半球で最も貧しく、最も開発の遅れた国でした。
ユニセフはパートナーと、アルティボニットでコレラ予防接種キャンペーンなどを実施するとともに、35万人に安全な飲料水、塩素錠剤、衛生キットを提供し、損傷した水源を復旧させました。今年、3万2,100人以上の子どもが栄養不良の検査を受け、そのうち3,400人以上に、ユニセフが全土向けに調達している、命を守るための、すぐに食べられる栄養治療食が提供されました。難題に立ち向かっている保健システムを支援するため、多数の保健医療従事者が派遣され、100の保健施設に低温物流用装置が、40の妊産婦ユニットには太陽光発電装置が提供されました。暴力の影響を受けている地域の学校と生徒には、1万3,600セット以上のキットが提供され、数百の最も脆弱な立場にある家庭には、就学を支援するための現金給付が行われています。
しかし依然として、資金調達は大きな制約となっています。ユニセフが2023年の人道支援計画で求めている2億4,600万ドルの資金のうち、これまでに集まったのはわずか20%です。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/
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