世界最大級の音声処理技術の国際会議「Interspeech 2026」で、朝日新聞社メディア研究開発センターの論文が採択
AIを大幅に小型化しながら高音質なノイズ除去を実現 新しい音声処理技術が国際的に評価
株式会社朝日新聞社(代表取締役社長:角田克)は、当社メディア研究開発センターが取り組む人工知能(AI)研究の論文が、音声認識や音声対話などの研究分野で世界最大級の国際会議の一つ「Interspeech 2026」に採択されたことをお知らせします。本論文は、メディア研究開発センターに在籍する山内 将吾が主著者として執筆し、AIモデルを大幅に小型化しながら、雑音の中から人の声をクリアに取り出す「音声強調(ノイズ除去)」を高品質で実現する新手法を提案するものです。その学術的・技術的な貢献が評価され、今回新設された「長文論文トラック(Long Paper Track)」に採択されました。これは研究成果の重要性が認められたことを示しています。

スマートフォンや補聴器、オンライン会議など、私たちの身の回りでは、雑音の中から人の声を聞き取りやすくする「音声強調」の技術が広く使われています。近年は深層学習を用いたAI技術の活用で品質が大きく向上しましたが、高い品質を得ようとするとモデルが大きくなり、多くの計算資源を必要とするという課題がありました。とりわけ、音質を左右する「位相(音の波のタイミング)」の情報は、モデルを小さくすると失われやすいことが知られています。
本研究では、音の大きさとタイミングの情報を効率よく扱える数学的手法「四元数(※1)」を活用し、音声処理に優れたAI技術と組み合わせた新手法「QC-GAN」を提案しました。さらに、従来から提案されている「MetricGAN」という学習手法を活用し、人が感じる聞き取りやすさ(音質)を高める仕組みも取り入れました。
その結果、代表的な評価用データセットにおいて、従来の最先端モデルの半分以下の大きさ(約89万パラメータ)でありながら、同等の高音質を達成しました。加えて、モデルを極限まで小型化した場合(約3万5千パラメータ)でも、これまでの軽量な手法を上回る品質を実現しました。実際の利用環境に近い別のデータセットでも有効性が確認され、四元数を使うことで少ない計算資源でも位相を正確に保ち、高品質なノイズ除去ができることを示しました。
※1:四元数とは四次元に拡張した複素数のことです。本研究を行った山内が執筆した以下のブログで四元数や四元数ニューラルネットワークについて一般向けに解説しています。
https://qiita.com/Yamachi-s/items/699256ab1b09b52dc98a

朝日新聞社では、提案手法を音声や画像などの信号処理に応用し、報道の現場での活用を検討してまいります。たとえば、取材音声のノイズ除去や文字起こしを、より少ない計算資源で高速かつ高品質に行えるようになることが期待されます。また朝日新聞社が提供しているコンテンツ制作支援サービス「ALOFA」は音声の書き起こしができるサービスですが、当サービスへの技術転用も検討してまいります。
■論文について
Shogo Yamauchi, Hideaki Tamori, Makoto Sakai, Yosuke Yamano, Tohru Nitta. QC-GAN: A Parameter-Efficient Quaternion Conformer GAN for High-Fidelity Speech Enhancement. In Proceedings of INTERSPEECH 2026, Sydney, Australia, September 2026.
https://arxiv.org/pdf/2606.18611
邦題:QC-GAN:高音質な音声強調のためのパラメータ効率に優れた四元数Conformer GAN
■Interspeechについて
Interspeech(International Speech Communication Association主催)は、音声認識や音声対話などの音声言語処理分野における音声認識、音声対話、音声合成などの研究を扱う世界最大級の国際会議の一つであり、当該分野の最先端研究が幅広く発表されます。世界中から多数の論文が投稿され、専門家による査読を経て採択論文が選定されます。今回の採択は、メディア研究開発センターの研究成果が国際的な音声研究コミュニティにおいて評価されたことを示しています。Interspeech 2026は2026年9月27日から10月1日にかけて、オーストラリア・シドニーで開催されます。
■メディア研究開発センターについて
メディア研究開発センターは2021年4月に発足しました。人工知能をはじめとする先端メディア技術と、新聞社ならではのテキストや写真、音声などの資源を活用し、社内外の課題解決を目指すとともに、自然言語処理や画像処理をはじめとした先端技術の研究・開発を進めています。
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