話題沸騰中!伊与原新の最新作『翠雨の人』、7月30日(水)の発売に先駆けて、試し読みを公開!
伊与原新さんが直木賞受賞第一作で描くのは、女性科学者のさきがけ、猿橋勝子のひたむきな生涯。
発売前重版で早くも話題の伊与原新さんの『翠雨の人』がまもなく発売となります。『藍を継ぐ海』で今年1月に直木賞を受賞された著者が、構想10年、満を持して描いた渾身の長編作品に注目してください。まずは試し読みをチェック!

『翠雨の人』で伊与原さんが描くのは、雨と紫陽花が大好きだった少女・勝子が、未来を変えるほどの科学者になるまで。試し読みでは、序章と第一章の冒頭までを公開します。序章では、かつて気象研究所で直属の部下として勝子と一緒に働いていた元研究者、奈良岡が小平霊園に出向き、「面倒くさいお人でしたよ。あなたは」と勝子の墓石に語りかけます。
ビキニ水爆実験の「死の灰」の分析にたずさわり、放射能汚染の実態究明に打ち込み、「猿橋賞」を創設し、後進の育成にも尽力した勝子が、なぜ「面倒くさい人」と評されたのか。そこに込めた、奈良岡の想いとは。
戦後80年の節目に読んでいただくのにふわさしい、戦争を乗り越え、「人類を幸せにすること」というたったひとつの科学の目的を胸に、研究に打ち込んだひとりの女性の物語です。ぜひ「試し読み」にアクセスしてみてください。
紫陽花と雨が大好きな少女が、歴史に名を残す偉大な科学者になるまで。
「雨とは何だろう。なぜ降るのだろう」。
少女時代、空気のほかには何もないはずの空から、とめどなく降ってくる雨に素朴な疑問を抱き、キュリー夫人にあこがれて理系の道を歩んだ猿橋勝子。戦時下で、科学と戦争の関係を問い続けた勝子は、戦後、アメリカのビキニ水爆実験で降った「死の灰」による放射能汚染の測定にたずさわり、アメリカが主張するよりも放射能汚染が深刻であることを証明した。勝子の研究成果は、核実験の抑止につながる影響を国際社会に与えていく。研究を愛し打ち込んだ実在の女性科学者の、生涯にわたる科学への情熱をよみがえらせる長篇小説。
女性科学者・猿橋勝子(さるはし・かつこ)とは?
1920年東京生まれ。東京府立第六高等女学校(現・東京都立三田高等学校)を経て、日本初の女性のための理系専門学校、帝国女子理学専門学校(現・東邦大学理学部)を第1回生として卒業。中央気象台研究部で、生涯の師となる三宅泰雄の指導を受ける。1954年のビキニ水爆実験で降った「死の灰」による放射能汚染の実態を究明し、その研究成果は後年、核実験の抑止に影響を与えた。
1980年、「女性科学者に明るい未来をの会」を設立し、第一線で活躍する女性科学者を表彰する「猿橋賞」を創設した。2007年逝去。

伊与原新さんからのメッセージ
彼女の人生だけはこの手で書きたい—―
初めてそう思った科学者です。
著者プロフィール
伊与原新 いよはら・しん
1972年、大阪生れ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞。2019年、『月まで三キロ』で新田次郎文学賞、静岡書店大賞、未来屋小説大賞を受賞。2024年、『宙(そら)わたる教室』が第70回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(高等学校の部)に選出、NHKでドラマ化され話題となる。2025年、『藍を継ぐ海』で第172回直木三十五賞を受賞。他の著書に『八月の銀の雪』『オオルリ流星群』『青ノ果テ 花巻農芸高校地学部の夏』『磁極反転の日』『蝶が舞ったら、謎のち晴れ 気象予報士・蝶子の推理』『ブルーネス』『コンタミ 科学汚染』などがある。
書籍データ
【タイトル】翠雨の人(すいうのひと)
【著者名】伊与原新
【発売日】7月30日
【造本】ハードカバー
【定価】1,980円(税込)
【ISBN】 978-4103362159
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/336215/
すべての画像