ガザの子ども、水と衛生の危機的状況~必要量の1割の水、700人に1つのトイレで生活【プレスリリース】

ユニセフ事務局長「物資搬入の制限撤廃を」

公益財団法人日本ユニセフ協会

ラファで、空のペットボトルを車椅子に乗せ、水を汲める場所を探しにいくサミさん。(ガザ地区、2023年12月6日撮影) © UNICEF_UNI488857_El Babaラファで、空のペットボトルを車椅子に乗せ、水を汲める場所を探しにいくサミさん。(ガザ地区、2023年12月6日撮影) © UNICEF_UNI488857_El Baba

【2023年12月19日 アンマン(ヨルダン)発】


ユニセフの推計によると、パレスチナのガザ地区南部で最近避難民となった子どもは、毎日わずか1.5~2リットルの水しか利用できません。これは、生存に必要と推奨される量を大幅に下回っています。


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人道的な基準によると、緊急時に最低限必要な水の量は、飲用および洗濯や料理用を含め、15リットルです。生存のためだけであれば、最低1日3リットルと推定されています。

 

12月上旬以来、多数の国内避難民(その半数は子どもと推定)が南部ラファにたどり着き、食料、水、寝泊所、医薬品および保護を切実に必要としています。需要が増え続ける中、ラファの水と衛生の設備は極めて危機的な状況にあります。敵対行為の再開に加え、電力の供給不足、燃料不足、アクセスの制限、インフラの損傷により、水と衛生の設備の少なくとも50%が損傷または全壊しています。

 

このことが子どもに与える影響は特に深刻です。子どもたちは脱水症状、下痢症、疾患、栄養不良に陥りやすく、これらすべてが複合的に子どもたちの生存を脅かす可能性があるからです。特に今週の雨と洪水の後、安全な水がないことからコレラや慢性下痢症などの水系感染症の懸念が高まっています。すでに、5歳未満の子どもの下痢症例が月平均の20倍近く報告されているほか、疥癬(かいせん)、シラミ、水ぼうそう、皮膚発疹の症例が増加しており、さらに急性呼吸器感染症の症例が16万件以上報告されています。

 

ラファの避難所で、トイレに併設されている手洗い場に水を汲みに行く女の子。安全な水が不足しているガザ地区では、感染症蔓延のリスクが高まっており、特に子どもたちの命が危険にさらされている。(ガザ地区、2023年12月6日撮影) © UNICEF_UNI4888ラファの避難所で、トイレに併設されている手洗い場に水を汲みに行く女の子。安全な水が不足しているガザ地区では、感染症蔓延のリスクが高まっており、特に子どもたちの命が危険にさらされている。(ガザ地区、2023年12月6日撮影) © UNICEF_UNI4888

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、次のように述べています。「十分な量のきれいな水が手に入るかどうかは、生死にかかわる問題です。 ガザの子どもたちは一滴の水を口にするのがやっとなのです。子どもとその家族は、塩分濃度の高い水や汚染されている水など、安全ではない水源からの水を利用するしかありません。安全な水がなければ、今後数日のうちに、さらに多くの子どもが困窮と病で命を落とすことになるでしょう」

 

ガザ地区全域の避難所では、平均して700人に1つしかないトイレを使用するために、疲弊した女性や子どもが長い列を作って待っています。中には、やむなくバケツを使ったり野外で排泄したりする人もいます。シャワーが利用できる可能性はもっと少なく、衛生的な選択肢がほとんどないことは、特に女性と女の子に影響を及ぼしています。その結果、病気のまん延がさらに拡大する恐れがあります。

 

ユニセフはパートナーと共に、井戸、海水淡水化施設、水のトラック輸送、廃棄物や汚水の処理を行うための燃料、ボトル入りの水や水容器を提供しています。これらの支援により、危機が始まって以来130万人以上の人々が、安全な飲料水を手に入れることができました。ユニセフはまた、4万5,000個以上の水運搬用容器、生理用品や衛生用品を含む13万セット以上の家族用衛生キット、数十万個の固形石けんも配布しています。また、18万9,000人以上に衛生用品を、40万人以上に衛生サービスを提供してきました。人道的休止期間中、ユニセフは、極めて困難な状況にもかかわらず、ガザ地区北部にも到達することができ、26万リットルの水と1万セットの衛生キットを配布しました。

 

北部のジャバリアで、自宅で使うための水を汲んでいる住民たち。激化する戦闘により安全な水が不足している。(ガザ地区、2023年12月7日撮影) © UNICEF_UNI488775_Al-Qattaa北部のジャバリアで、自宅で使うための水を汲んでいる住民たち。激化する戦闘により安全な水が不足している。(ガザ地区、2023年12月7日撮影) © UNICEF_UNI488775_Al-Qattaa

極めて重要な水・衛生施設を稼働させるための発電機、短期的修理に必要なプラスチックパイプ、また衛生問題を迅速に解決するための建築資材は、ラファ検問所で待機し続けていますが、このような物資には搬入制限が課せられているため、ガザに持ち込むことができません。これらは、人々と子どもたちの生存に不可欠な、最低限の水と衛生サービスを確実に回復させるために必要な物資です。

 

ラッセル事務局長は、「私たちは、ガザの人々のニーズに応えるため、できることは何でもやっていますが、かろうじて提供できる機材や物資は、十分とは言い難いものです。絶え間ない爆撃に加え、ガザへの物資や燃料の持ち込みが制限されているため、極めて重要な進展は妨げられています。破損した給水システムを修復するために、これらの物資が緊急に必要なのです」とも述べています。                  

 

ユニセフはまた、どこにいようと支援を必要とするすべての子どもや家族に対して、迅速かつ安全で、妨げのない人道的アクセスを引き続き求めます。それには、既存のインフラの復旧と復興を通じてガザ地区における水と衛生のニーズに対処できるようにすることが含まれます。そして、すべての当事者が、国際的な法的義務を遵守し、水と衛生施設、およびこれらの施設の維持管理と修理を担う施設作業員を保護することを求めます。


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ユニセフ「ガザ人道危機 緊急募金」 ご協力のお願い

ガザの最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、(公財)日本ユニセフ協会は、ユニセフ「ガザ人道危機 緊急募金」を受け付けています。詳しくはこちらをご覧ください。

https://www.unicef.or.jp/kinkyu/gaza/  


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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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会社概要

URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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