ガザ地区:戦闘・栄養不良・疾病の三重苦~110万人超の子どもを脅かす【プレスリリース】

2歳未満児の9割が極端な食料不足

南部のラファで、慈善団体による炊き出しを受け取ろうとする8歳のシャイマさん。「2時間待ってるけど、何ももらえていない。昨日から何も食べていないの。お母さんと妹に食べ物を持って帰りたいのに」と話す。(ガザ地区、2023年12月19日撮影) © UNICEF_南部のラファで、慈善団体による炊き出しを受け取ろうとする8歳のシャイマさん。「2時間待ってるけど、何ももらえていない。昨日から何も食べていないの。お母さんと妹に食べ物を持って帰りたいのに」と話す。(ガザ地区、2023年12月19日撮影) © UNICEF_

【2024年1月5日 ニューヨーク発】


ガザ地区の子どもたちは、疾病のまん延、栄養状態の急激な悪化、14週目に差し掛かる敵対行為の激化により、命にかかわる三重の脅威に直面しています。


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暴力によってすでに何千人もの子どもが命を落としています。一方、子どもたちの生活状態は急速に悪化し続けており、子どもの下痢症例の増加や食事多様性の不足(※1)の深刻化により、子どもの死がさらに増える危険性が高まっています。

 

ユニセフ(国連児童基金)事務局長のキャサリン・ラッセルは、次のように述べています。「ガザの子どもたちは、日を追うごとにひどくなる悪夢に襲われています。ガザ地区では、戦闘による子どもや家族の死傷者が後を絶たず、また予防可能な病気や食料と水の不足により、彼らはさらなる命の危険にさらされています。すべての子どもと市民は暴力から守られ、基礎的なサービスや物資を利用できなければなりません」

 

炊き出しを受け取るための順番待ちをする5歳のアフマドちゃん。「お腹が空いている。ご飯を受け取りたくて、ここでずっと待っているんだ」と話す。(ガザ地区、2023年12月19日撮影) © UNICEF_UNI495575_ZAGOUT炊き出しを受け取るための順番待ちをする5歳のアフマドちゃん。「お腹が空いている。ご飯を受け取りたくて、ここでずっと待っているんだ」と話す。(ガザ地区、2023年12月19日撮影) © UNICEF_UNI495575_ZAGOUT

5歳未満児の下痢症例は、12月17日からのわずか1週間で4万8,000件から7万1,000件に増加し、これは1日あたり3,200件の新たな症例の発生に相当します。このような短期間での大幅な増加は、ガザ地区の子どもの健康が急速に悪化していることを顕著に示しています。敵対行為が激化する前は、5歳未満児の下痢症例の報告は月平均2,000件程度でした。

 

12月下旬に総合的食料安全保障レベル分類(IPC)がガザ地区での飢饉の危険性を警告して以来、ユニセフの調べでは、基本的な栄養ニーズが満たされていない子どもが増えています。12月26日に実施されたユニセフの調査によると、2歳未満児の約90パーセントが、2つ以下の食品群しか摂取していません。その割合は2週間前に実施された同じ調査の80%から増えていました。ほとんどの家庭では、子どもはパンを含む穀物か牛乳しか摂取しておらず、「食事多様性の重度の不足(※2)」の定義に当てはまっています。妊娠中や授乳中の女性が摂る食品の多様性も著しく低下しており、25%が前日に摂取した食品群は1つのみ、65%近くが2つのみでした。

 

悪化する事態により、急性栄養不良や死亡率が高まって飢饉のしきい値に達する懸念が生じています。ユニセフは特有の栄養ニーズを有す、15万5,000人を超える妊産婦と授乳中の母親、および13万5,000人超の脆弱な2歳未満児について、とりわけ憂慮しています。

 

栄養不良と疾病が重なって放置されれば、致命的な悪循環が生まれます。健康状態や栄養状態の悪い子どもたちは、急性下痢症のような重篤な感染症にかかりやすいという証拠が示されています。急性で長引く下痢症は、子どもたちの健康不良と栄養不良を深刻化させ、死に至る危険性を高めます。

 

紛争により、ガザ地区では必要不可欠な水・衛生・保健システムが損傷または全壊し、重度栄養不良を治療することが難しくなっています。さらに、避難民の子どもとその家族は、安全な水と衛生設備が著しく不足するなか、多くが屋外排泄をせざるをえないため、病気を防ぐために必要な衛生レベルを維持することができません。一方、機能している数少ない病院は、紛争で負傷した多数の患者への対応に追われているため、集団感染を適切に処置することができません。

 

南部のナセル病院に届いた、ユニセフ支援物資の毛布4,000枚。(ガザ地区、2023年12月13日撮影) © UNICEF_UNI491091_El Baba南部のナセル病院に届いた、ユニセフ支援物資の毛布4,000枚。(ガザ地区、2023年12月13日撮影) © UNICEF_UNI491091_El Baba

紛争が始まって以来、ユニセフはワクチン、医療用品、衛生キット、すぐに使える乳児用液体ミルク、特別な補助食品、栄養補助食品、急性栄養不良の早期予防と治療のためのすぐに食べられる栄養治療食など、重要な物資をガザ地区に届けてきました。ユニセフはまた、燃料、水、貯水タンクと水容器、移動式トイレ、防水シート、テント、冬用衣料、毛布も届けました。

 

ユニセフは、現地の店舗の棚に商品が再び並ぶための、商品を積んだ車の往来の再開と、市民の命を守り、苦しみを和らげるための人道的停戦の即時実施を呼びかけています。

 

ラッセル事務局長は次のようにも述べています。「ユニセフは、ガザの子どもたちが今切実に必要とする、命を守る支援を提供するために活動しています。しかし、子どもたちの命を守るためには、より安全なアクセスが早急に必要です。さらに無数のガザの子どもの未来が危機に瀕しています。世界は傍観することはできません。暴力と子どもたちの苦しみは止まなければなりません」

 

(※1)ユニセフは「食事多様性の不足」に苦しむ子どもたちを、定義された8つの食品群のうち4つ以下の食品・飲料しか摂取していない5歳未満の子ども、と定義している。8つの食品群は、1.母乳、2.穀類・根菜類・塊茎類・プランテン、3.豆類・ナッツ類・種子類、4.乳製品、5.肉類、6.卵、7.ビタミンAが豊富な果物や野菜、8.その他の果物や野菜。


(※2)「食事多様性の重度の不足」に陥っている子どもは、定義された8つの食品群のうち、0~2食品群の食品・飲料を前日に摂取した5歳未満の子ども。




ユニセフ「ガザ人道危機 緊急募金」 ご協力のお願い

ガザの最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、(公財)日本ユニセフ協会は、ユニセフ「ガザ人道危機 緊急募金」を受け付けています。詳しくはこちらをご覧ください。

https://www.unicef.or.jp/kinkyu/gaza/


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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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会社概要

URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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