「学校における水と衛生」新報告書-月経衛生管理について初の分析【プレスリリース】

学校での月経衛生教育、実施はわずか39%

生理用ナプキンを手作りする14歳のウムさん。(マリ、2024年4月23日撮影) © UNICEF_UNI560594_Keïta生理用ナプキンを手作りする14歳のウムさん。(マリ、2024年4月23日撮影) © UNICEF_UNI560594_Keïta

【2024年5月28日 ニューヨーク/ジュネーブ発】


世界各地で、生理中の健康と月経衛生に対するニーズが見過ごされています。その要因は、衛生施設の未整備や不平等、そして情報や製品・サービスを十分に利用できない、あるいは十分な教育が受けられないためです。


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生理不順や生理中の不快感により、気分が悪く授業に集中できなかった16歳のキディストさんは、月経衛生プログラムを受け葉酸と鉄のサプリメントを服用してから体調が良くなった。「将来は医者になって地域社会に貢献したい」と話す。(エチオピア、2024年3月撮影) ©生理不順や生理中の不快感により、気分が悪く授業に集中できなかった16歳のキディストさんは、月経衛生プログラムを受け葉酸と鉄のサプリメントを服用してから体調が良くなった。「将来は医者になって地域社会に貢献したい」と話す。(エチオピア、2024年3月撮影) ©

ユニセフ(国連児童基金)と世界保健機関(WHO)が発表した新たな報告書「学校における衛生施設と飲料水の前進 2000年~2023年(原題:Progress on drinking water, sanitation and hygiene in schools 2000-2023 : special focus on menstrual health)」は、世界各地の学校における生理中の健康と月経衛生に関する国別データを初めて分析したものです。

 

報告書の10の要点は次の通りです。

  • 世界中で、月経衛生教育を実施している学校は5校に2校(39%)にすぎません。また地域ごとに、小学校と中等学校とでこの割合を比較してみると、中等学校でより高くなります。例えば、中央・南アジアでは、中等学校の84%で月経教育が行われているのに対し、小学校ではわずか34%です。

  • 女の子のトイレにサニタリーボックスを置いている学校は、世界全体で3校に1校以下(31%)です。後発開発途上国では5校に1校(17%)、サハラ以南のアフリカでは10校に1校(11%)にしかありません。

  • 生理用品は必ずしも容易に入手できるわけではなく、経済的余裕がなく購入できない女の子も多くいます。例えばサハラ以南のアフリカでは、生理用品を無料で配布または生徒が購入できる学校は8校に1校(12%)しかありません。

  • 多くの国々で、女子生徒が生理用品を交換するための清潔なトイレや個別のスペースが学校内にありません。

  • 何百万人もの思春期の女子生徒にとって、水とせっけんの利用に格差があることがさらなる問題となっています。都市部に暮らす女の子や私立学校や女子学校に通う女の子は、水とせっけんが備わった個室を利用できる可能性が高く、同じ国であっても不平等が浮き彫りになっています。

  • 世界中の何百万人もの女の子が、初潮を迎えるまで、月経について知らない、または準備ができていません。例えば、エチオピアにおける調査では、調査対象となった女の子のうち、初潮を迎える前に月経について知っていたのは半数以下であったことが明らかになっています。

  • 調査によると、月経にまつわる偏見は依然として広く残っており、思春期の子どもはしばしば、月経を恥ずかしく思ったり、月経について率直に話し合えなかったりします。このような羞恥心は、メンタルヘルスや登校に影響を及ぼすことがあります。

  • どのくらいの数の教師が月経衛生について教える訓練を受けているかを示す各国のデータは確認できず、教師へのサポートに大きな隔たりがあることを示しています。教師は正確な情報を生徒に伝え、生徒を支援する環境をつくるという重要な役割を担っていますが、適切な訓練を受けていなければ、生徒のニーズに対応することはできません。

  • 世界的に推奨されている優先指標の少なくとも1つの関連データ追跡を行っているのは、わずか30カ国で、その3分の1がサハラ以南のアフリカの国々です。こうしたデータ欠如が、問題を包括的に理解し、それに対処する取り組みを妨げています。

  • ザンビアやフィリピンなどの国々では、学校で生理用品を入手し月経衛生に関する必要なサービスを利用できるようにすることで顕著な改善を見せていますが、もっと多くのことを行う必要があります。的を絞った政策と投資によって改善は可能です。

 

小学校に新しく設置されたトイレを利用する16歳のアセタルさん(左)と17歳のアガズさん(右)。「以前はトイレがなかったので、生理中は遠い自宅まで帰らなければならず、一度帰宅すると再登校もできませんでした」と話す。(ウガンダ、2024年2月撮影) © UNI小学校に新しく設置されたトイレを利用する16歳のアセタルさん(左)と17歳のアガズさん(右)。「以前はトイレがなかったので、生理中は遠い自宅まで帰らなければならず、一度帰宅すると再登校もできませんでした」と話す。(ウガンダ、2024年2月撮影) © UNI

この報告書は、学校における月経衛生管理を改善するための世界的な行動が緊急に必要であることを浮き彫りにしています。この課題に取り組むことで、すべての女子生徒が尊厳と安全、そして自信を持って、生理期間中の健康と衛生の管理ができるようになります。

 

本報告書には、学校における水と衛生および手洗いの設備の利用状況に関する進捗も含まれています。最新のデータによると、5人に1人の子ども(4億4,700万人)がいまだ学校で基本的な飲料水サービスを利用できておらず、5人に1人(4億2,700万人)が基本的な衛生設備(男女別の改善されたトイレ)を利用できておらず、3人に1人(6億4,600万人)基本的な衛生サービス(せっけんと水を備えた手洗い設備)を利用できていません。

 

関連するSDGs目標を2030年までに達成するためには、基本的な飲料水については現在の2倍、トイレなどの基本的な衛生設備については2倍、手洗いに関する基本的な衛生サービスについては4倍の進歩が必要です。


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■    注記

WHO・ユニセフ合同モニタリング・プログラム(JMP)報告書「学校における衛生施設と飲料水の前進 2000年~2023年(Progress on drinking water, sanitation and hygiene in schools 2000-2023 : special focus on menstrual health)」は、安全な水と衛生(WASH)への普遍的なアクセスの達成に向けた世界的な進捗状況に関するデータをまとめたもので、今回初めて月経衛生に関する項目が含まれました。この新たなデータは、いくつかの指標に対する世界的な進捗状況を測定するもので、月経に関するニーズを依然として満たすことができていない思春期の女子生徒はどれぐらいいるのか、そしてすべての人のために月経に配慮した世界を実現するために必要な努力は何かを明らかにするものです。

 

月経の健康に関する各国データの入手はいまだ限定的であり、指標の定義もさまざまであるため国別の比較は困難です。本報告書にある世界と地域別の推定データは集計値であることにご留意ください。

 

■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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