毎日約2,000人の5歳未満児、大気汚染で死亡~死亡リスク要因2位に、新報告書指摘【プレスリリース】

ユニセフ「子どもに焦点を当てた行動を」

大気汚染の原因となっている発電所近くに暮らす家族。5歳の子どもは病気により、高頻度で病院を訪れている。(コソボ、2024年3月撮影) © UNICEF_UNI552788_Karahoda大気汚染の原因となっている発電所近くに暮らす家族。5歳の子どもは病気により、高頻度で病院を訪れている。(コソボ、2024年3月撮影) © UNICEF_UNI552788_Karahoda

【2024年6月19日 ボストン/ニューヨーク発】


 新報告書「世界の大気の状態(State of Global Air=SoGA)第5版」によると、大気汚染は人間の健康への影響をますます強めており、世界の死亡リスク要因の第2位となっています。


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報告書は、米国を拠点とする独立非営利研究機関である健康影響研究所(HEI)が本日発表したもので、ユニセフ(国連児童基金)の協力により初めてまとめられました。本報告書では、2021年に大気汚染が主要因で亡くなった人は世界全体で810万人であったことを明らかにしています。この死亡者数に加え、何百万人もの人々が消耗性慢性疾患を抱え、保健医療システムや経済、社会に多大な負担がかかっています。

 

また、本報告書ではとりわけ5歳未満児が大気汚染に弱く、早産、低体重児出産、喘息、肺疾患などの健康被害が出ていることが示されています。2021年、70万人以上の5歳未満児が大気汚染との関連で亡くなっており、この年齢層では栄養不良に次いで世界第2位の死亡リスク要因となっています。そのうち50万人は、主にアフリカとアジアで、屋内で汚染につながる燃料を使って調理することによる家庭内の空気汚染に関連しています。

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世界的な健康上の懸念


ホーチミンで、マスクを着用してバイクに同乗する子どもたち。ベトナムでは、老朽化した自動車の排気ガスや、石炭発電、廃棄物処理による大気汚染が課題になっている。(ベトナム、2024年4月撮影) © UNICEF_UNI565874_Pham Ha Duy Liホーチミンで、マスクを着用してバイクに同乗する子どもたち。ベトナムでは、老朽化した自動車の排気ガスや、石炭発電、廃棄物処理による大気汚染が課題になっている。(ベトナム、2024年4月撮影) © UNICEF_UNI565874_Pham Ha Duy Li

新しいSoGA報告書では、2021年に発表された世界疾病負荷調査(Global Burden of Disease study)のデータを詳細に分析し、屋外の微小粒子状物質(PM2.5)、室内空気汚染、オゾン(O3)、二酸化窒素(NO2)などの汚染物質が世界中の人々の健康に深刻な影響を与えている実態を明らかにしています。この報告書は、世界200以上の国と地域のデータを網羅しており、地球上のほぼすべての人が毎日不健康なレベルに汚染された空気を吸っており、健康への影響が広範囲に及んでいることを示しています。

 

世界の大気汚染による死者数の90%以上にあたる780万人の死因は、PM2.5であり、これには大気中のPM2.5や家庭内の空気汚染が含まれます。直径2.5マイクロメートル以下のこの微粒子は、非常に小さいため肺に残り、血流に入り込み、多くの器官系に影響を与え、心臓病、脳卒中、糖尿病、肺がん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの成人の非感染性疾患のリスクを高めます。報告書によると、PM2.5は世界中で最も一貫したかつ正確な、健康障害の予測因子であることが判明しています。


大気汚染と気候変動


大気汚染の原因となっている発電所近くに暮らす1歳のケナンちゃん。大気汚染による深刻な影響を受けている自治体では、看護師が各家庭を訪問している。(コソボ、2024年3月撮影) © UNICEF_UNI552860_Karahoda大気汚染の原因となっている発電所近くに暮らす1歳のケナンちゃん。大気汚染による深刻な影響を受けている自治体では、看護師が各家庭を訪問している。(コソボ、2024年3月撮影) © UNICEF_UNI552860_Karahoda

PM2.5による大気汚染は、輸送・一般家庭・石炭火力発電所・産業活動などで使用する化石燃料やバイオマスの燃焼、および山火事から発生します。このような汚染物質の排出は人々の健康に影響を与えるだけでなく、地球の温度を上昇させる温室効果ガスの原因にもなっています。最も脆弱な人々は、気候変動による災害と汚染された空気の両方から不釣り合いな影響を受けています。

 

2021年において、オゾンへの長期的な曝露により、世界全体で推定48万9,518人が亡くなっています。そのうちの1万4,000人は米国でオゾン関連の慢性閉塞性肺疾患が原因で亡くなっており、他の高所得国よりも高い数値となっています。気候変動の影響で世界の気温が上昇するにつれ、二酸化窒素濃度が高い地域ではオゾン濃度が上昇し、健康への影響がさらに大きくなることが予想されます。

 

今年の報告書では初めて、小児喘息の発症に及ぼす二酸化窒素への曝露を含む、二酸化窒素への曝露レベルとそれによる健康被害について報告しています。輸送部門の排気ガスは二酸化窒素の主な発生源であるため、特に高所得国の人口が密集している都市部では、二酸化窒素暴露と健康への影響が最大レベルとなることが多いのです。


子どもたちの健康への影響


トゥズラ州で、環境問題についての啓発活動の一環で、木を植える若者たち。「私たちの健康は危機に瀕しています。大気汚染に対する行動計画が必要です」と話す。(ボスニア・ヘルツェゴビナ、2024年3月撮影) © UNICEF_UNI552823_Djemidzicトゥズラ州で、環境問題についての啓発活動の一環で、木を植える若者たち。「私たちの健康は危機に瀕しています。大気汚染に対する行動計画が必要です」と話す。(ボスニア・ヘルツェゴビナ、2024年3月撮影) © UNICEF_UNI552823_Djemidzic

子どもは、大気汚染による最も深刻な健康被害を受ける可能性があります。子どもは大気汚染に対して非常に脆弱であり、大気汚染によるダメージは母親の胎内で始まり、健康への影響は一生続く可能性があります。例えば、子どもは肺や身体、脳が発達途上にあるため、体重1kg当たりの吸気量はおとなより多く、相対的によりたくさんの汚染物質を吸収します。

 

世界全体の子どもの死因の5人に1人を占める肺炎や、年長の子どもに最も多く見られる慢性呼吸器疾患の喘息は、幼い子どもが大気汚染にさらされることと関係しています。大気汚染が子どもの健康に与える影響には顕著な格差があります。東アフリカ、西アフリカ、中央アフリカ、南部アフリカの5歳未満の子どもの大気汚染関連の死亡率は、高所得国の子どもに比べて100倍も高いのです。

 

ユニセフ事務局次長のキティ・ファン・デル・ハイデンは、次のように述べています。「妊産婦と子どもの健康は向上してきているにもかかわらず、毎日2,000人近くの5歳未満児が、大気汚染に関連した健康被害によって命を落としています。私たちが行動を起こさないがために、次世代に深刻な影響がもたらされており、彼らの健康とウェルビーイングに生涯にわたる影響を及ぼしています。世界的な切迫した事態であることは明らかです。各国政府と経済界は、大気汚染を減らし子どもの健康を守るべく、これらの推定値や現地で入手可能なデータを検討し、子どもに焦点を当てた意味ある行動への反映につなげることが不可欠です。


見られ始めた進展

 

本報告書は良い動きも伝えています。2000年以降、5歳未満児の死亡率は53%減少しました。これは主に、調理用クリーンエネルギーを普及させる取り組み、保健医療サービスや栄養サービスの利用の拡大、家庭内空気汚染の害に関する認識の向上が寄与しています。多くの国々、特に大気汚染レベルが最も高い国々は、ようやくこの問題に正面から取り組み始めています。アフリカ、ラテンアメリカ、アジアなどでは、大気汚染観測網の設置、より厳格な大気質政策の施行、ハイブリッド車や電気自動車への切り替えによる輸送部門からの大気汚染のオフセットなどの、大気質改善への取り組みがすべて、汚染対策に顕著な結果を出し、人々の健康を改善しています。しかし、進展が見られるとはいえ、大気汚染が他の健康リスクよりも大きい、数百万人の命を脅かす最大の脅威の一つであり続けることを阻止するためには、もっと多くのことができるはずです。


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注記

大気汚染は、世界の総人口においても、5歳未満児人口においても、2番目に大きい死亡リスク要因となっています。総人口と5歳未満児人口における死亡リスク要因の上位5つは以下の通りです。


世界の死亡リスク要因

1位 総人口:高血圧 5歳未満児人口:栄養不良

 

2位 総人口:大気汚染 5歳未満児人口:大気汚染

3位 総人口:たばこ 5歳未満児人口:水と衛生

4位 総人口:食事 5歳未満児人口:高温または低温    

5位 総人口:高空腹時血糖 5歳未満児人口:たばこ

 

   

この「世界の大気の状態」報告書は、健康影響研究所と保健指標評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation=IHME)の世界疾病負荷プロジェクトが協力する「世界の大気の状態イニシアティブ(State of Global Air Initiative)」により、ユニセフとのパートナーシップの下、まとめられたものです。

 

本報告書は、IHMEの2021年世界疾病・負傷・リスク要因負荷調査(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study〈GBD 2021〉 ) のデータに基づいています。世界の1万人以上の研究者によるこの共同研究は、204の国・地域にわたって、88の環境、行動、食事のリスク要因が健康に与える影響について、世界的に比較可能な推定値を作成しています。

 

GBD Study は、改訂のたびに、最新の科学的エビデンスと手法を取り入れ、大気汚染やその他のリスク要因による疾病負荷、すなわち集団の健康への影響の推定値の精度を高めています。ここに示されたデータは、一般に公開されているさまざまなデータセットに基づくグローバルな推計値であり、必ずしも各国政府から国連機関に提出されたデータセットではないことにご注意ください。すべての GBD 推計値は、厳格な査読プロセスを経ており、データは ランセット誌に掲載されています。


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■ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます

 

■日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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