紛争下の子どもの権利侵害、過去最多ガザ、スーダン等 背景に前年比21%増【プレスリリース】
ユニセフ事務局次長「安保理と国際社会は行動を」
【2024年6月26日 ニューヨーク発】
ユニセフ(国連児童基金)事務局次長のテッド・チャイバンは、国連安全保障理事会の「子どもと武力紛争」に関する公開討論会にて、以下の通り発言しました。
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国連が確認した2023年の子どもに対する重大な権利侵害は3万2,990件で、子どもと武力紛争国連事務総長特別代表事務所の創設以来、過去最悪の年であった2022年を21%上回り、最多記録を更新しました。
この数字は、重大な権利侵害の全容を捉えるものではなく、また、重大な侵害が子どもたちの生活、家族、地域社会に与えた身体的、心理社会的被害の深刻さを表すものでもありません。
これは、殺され、傷つけられる子どもたち、性的暴行などの性暴力を受ける子どもたち、人道支援を妨げられる子どもたちが著しく増えているという傾向と特徴が、大きく広がっていることを示しているのです。
子どもと武力紛争に関する事務総長年次報告書に取り上げられた世界各地の現地情勢の中で、3カ所に焦点を当ててお話ししたいと思います。
イスラエルとパレスチナの子どもたち、とりわけすさまじい規模で死と破壊が進んでいるガザ地区の子どもたちは、理解しがたい苦しみに耐え続けています。2023年には、4,312人のパレスチナの子どもと70人のイスラエルの子どもが死傷したと確認されており、これは報告書に載っている確認された全死傷者数の37%に相当します。ほとんどは、人口密集地での爆発性兵器によるものでした。
しかし、2023年中に報告された子どもの死傷件数のうち、2万3,000件以上はまだ確認がなされていません。治安の悪さ、移動の制限、およびガザで活動する人道支援従事者に対する重大な危険があるためです。さらに、消息不明の何千人もの子どもは、遺体となって瓦礫の下に埋もれたままです。そしてこれらの数字には、2024年に入ってからこれまでに報告された数千件の侵害行為は含まれていません。
恐ろしい紛争が始まって9カ月経った今も、依然としてユニセフをはじめとする人道支援提供者たちは、助けを求めている子どもたちに支援を届けることに苦闘しています。ガザへの搬入とガザ全域への配布を安全に行うことを阻む障害に直面し続けているからであり、その障害が、急性栄養不良に陥る子どもの増加に直接関与しているのです。
ユニセフは紛争当事者に対し、安保理が決議第2712号および第2735号で求めたように、子どもを保護する義務を遵守し、直ちに完全な停戦に入るよう強く求めます。
話をスーダンに移します。1年以上にわたる戦争の後、推定460万人の子どもが国内外に逃れ、重大な権利侵害行為がほぼ500%増加しているなど、スーダンでは現在、世界最大の子ども避難民危機が起きています。
無数の子どもが恐ろしい暴力にさらされています。国連は、2023年に紛争当事者によって1,244人の子どもが殺傷されたことを確認しており、また今年に入ってからは重大な権利侵害が広がっていることが報告されています。
今月初め、ジャジーラ州のWad al Noura村が襲撃されて、少なくとも55人の子どもが死傷したと報告されています。そして今、ダルフールのエル・ファシールでは、街の一部が包囲されている中、何千人もの子どもが毎日のように戦闘や無差別爆撃に襲われています。信頼できる情報によると、5月に入ってから、エル・ファシールでは400人以上の子どもが死亡または負傷しています。
コンゴ民主共和国においては、東部での紛争の激化により700万人が家を追われ、2003年以来最悪の避難民危機が発生しました。国連は2023年に、女の子に対する主たる性暴力行為である性的暴行、集団性的暴行、強制結婚、性奴隷化などを281件確認しました。武装集団の手口としての性暴力の使用は急増しています。
最近、コンゴ民主共和国を訪問した際に、村が襲撃されたため弟妹たちと逃げ出し、現在は一家の長となっている10代の女の子たちに会いました。ひどい暴力を経験した後、3人の妹や弟と一緒にゴマに逃げてきた16歳のフローレンスさんを思い出します。
さらに悪いことに、国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)の撤収が始まると同時に、東部での紛争が激化しています。同国の人道危機が間もなく大惨事に発展する非常に現実的な危険性があります。
これまでのお話は、事務総長報告書に取り上げられた26カ所の現地情勢のうちの3カ所にすぎません。
2023年には、ブルキナファソ、ハイチ、マリ、ミャンマー、ウクライナ、イエメンなどでも、何千人もの子どもが深刻な権利侵害を受けています。そして、さらに数百万人が潜在的に危険な状態にあります。
子どもと武力紛争国連事務総長特別代表事務所は30年近くにわたって活動しています。今年の事務総長報告書は、戦時下に子どもを保護する必要性について国際的なコンセンサスが得られているにもかかわらず、紛争当事者は国際法上の義務を果たしていないことを端的に示しています。このような重大な権利侵害は、ひとりでに起こるのではなく、行為加担者つまり国家・非国家の紛争当事者による選択と行動の結果、生じるのです。
子どもと武力紛争国連事務総長特別代表事務所の活動は、紛争が子どもたちに与える影響を軽減するための効果的な手段です。この1年には、注目すべき例が見られました。子どもと武力紛争に関する国連事務総長特別代表のバージニア・ガンバ氏が強調したように、イラク政府は行動計画で、ウクライナは予防計画でそれぞれ進展を果たし、また反体制派組織シリア国民軍は、子どもの徴兵と徴用および殺傷を止め、防ぐための行動計画に取り組むとしました。
そして重要なこととして、国連ミッションや市民社会のパートナーの支援を得て、ユニセフは、武装勢力や武装集団に徴兵され、徴用されていた約1万1,000人の子どもに保護と復帰の支援を提供しました。
ユニセフは、昨年の「武力紛争下の子どもの保護に関するオスロ会議」を受けて、ノルウェーとベルギーの両政府から「子どもと武力紛争」活動に対する献身的な資金支援をいただいたことに感謝しています。ご支援がなければ、この活動は実施できていなかったでしょう。
こういった例は、とりわけ軍事的・政治的意志、建設的な関与および協調行動があれば、有意義な進展が可能であることを示しています。しかし、確認された侵害行為の増加を考えると、さらに多くのことを行う必要があります。
安保理理事国および国際社会の皆さまは、手助けができる特別な立場にあります。ユニセフは、紛争下の子どもたちのために、皆さまに4つの重要な行動を取るよう呼び掛けたいと思います。
第1に、「子どもと武力紛争」関連の任務、その監視・報告メカニズム、「子どもと武力紛争国連事務総長特別代表事務所」の拡充に対する確固たる支持をあらためて確認するよう求めます。監視・報告メカニズムが提供する、第三者機関によって確認された確かな国連データは、任務の中核をなすツールです。このデータは、子どものための具体的な成果に向けた私たちのすべての行動に反映されます。このデータを得る作業は、制約の多い状況下で、大きな個人的リスクを負いながら行われることが多いのです。
第2に、私たちは安保理に対し、子どもたちは危害や暴力から免れるべきだというコンセンサスを再確認し、推進するよう求めます。安保理理事国および国際社会は、紛争を終結させる、また紛争の激化を防ぐために、一層強化された持続的な外交努力を行うべきです。人道支援、平和支援、開発支援の関係者は皆、このプロセスを支援する用意がありますが、安保理の行動なしには、支援はなしえません。 この点につき、私たちは安保理に対し、スーダンの子どもたちの苦しみを軽減するため、さらに意義ある行動を取るよう強く求めます。
子どもに対する重大な権利侵害を犯している当事者に、物的・財政的・外交的支援を提供している国家および非国家主体も責任を負っていることにも言及したいと思います。 彼らは、当事者に提供する支援が、国際人道法下の自身の義務と一貫するようにすべきで、また、当事者が国際法を尊重し子どもの命とウェルビーイングを守るよう、自身の影響力を行使すべきなのです。
第3に、国連が全ての紛争当事者との関与を継続し、行動計画のような予防と保護の手段を構築できるよう、また、子どもを支援し保護するための人道的アクセスを確保できるよう、「人道的空間(humanitarian space)」の確保に向けた政策提言を行うことに対する、皆さまの支援が必要です。
そして最後に、国連の監視・報告メカニズムだけでなく、深刻な権利侵害のサバイバーに対する子ども中心の専門的サービスや、こうした侵害の防止と根絶のためのアドボカシー活動にも十分な資金が必要です。これは、国連の平和維持活動や特別政治ミッションの撤収という状況においては、特に喫緊の課題です。私が20年前、スリランカとスーダンで武力紛争の影響を受けた子どもたちへの対応を指揮した際、私たちには監視・報告メカニズムだけでなく、武装集団から解放された子どもたちの社会復帰を支援し、重大な暴力行為の防止に取り組むためのリソースがありました。
ユニセフは、こうした取り組みにおける揺るぎないパートナーとしての態勢を整えております。子どもたちを最優先に考えることで、皆さまが私たちと一緒に行動してくださることを願っています。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.org/
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/
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