温暖化に関する新分析結果発表~日本の9割超の子どもが1.5倍の回数の熱波を経験【プレスリリース】
1960年代と2020年代を比較、世界的に熱波増加
【2024年8月14日 ニューヨーク発】
ユニセフ(国連児童基金)の新たな分析によると、世界の子どもの5人に1人、つまり4億6,600万人の子どもが、わずか60年前と比較して少なくとも2倍以上の極めて暑い日に毎年見舞われる地域に暮らしています。また、本配信では日本の国別データもまとめて後述しています。
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1960年代と2020年から2024年までの平均とを比較したこの分析結果は、世界の5億人近い子どもが経験する35℃/95℉を超える極めて暑い日の発生スピードと規模が増していることに厳しい警鐘を鳴らしています。彼らの多くは極めて暑い日の増加に耐えるためのインフラやサービスのない環境にいます。
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは 「夏の一番暑い日々が、いまや日常のようになっています。猛暑は増加の一途をたどり、子どもたちの健康やウェルビーイング、日常生活に支障をきたしています」と述べています。
この分析では国別のデータも解析しており、16カ国の子どもが60年前と比較して1カ月以上も多くの極めて暑い日を経験していることが判明しています。例えば南スーダンでは、1960年代には年平均110日であった極めて暑い日が、2020年代には165日に、パラグアイでは36日から71日に激増しています。(※1 日本のデータ後述)
世界的に見ると、西部・中部アフリカの子どもたちが極めて暑い日にさらされる割合が最も高く、経年で最も顕著に増加していると分析されています。1億2,300万人の子ども、つまりこの地域の子どもの39%が、少なくとも95日間、35℃を超える気温にさらされています。極めて暑い日は、マリでは212日、ニジェールでは202日、セネガルでは198日、スーダンでは195日にも達しています。ラテンアメリカとカリブ海諸国では、約4,800万人の子どもの暮らす地域で、極めて暑い日が2倍に増えています。
極端な暑さにさらされることで生じる体内の熱ストレスは、特に冷却手段がない場合、子どもや妊婦の健康とウェルビーイングに特有の脅威をもたらします。妊娠に関する慢性的な疾患などの妊娠合併症や、死産、低体重児出産、早産などとの関連が指摘されています。また、過度の熱ストレスにさらされると、子どもの栄養不良や、熱関連疾患などの非感染性疾患の原因となり、子どもたちはマラリアやデング熱など、高温で流行する感染症にかかりやすくなります。また、神経発達、メンタルヘルス、ウェルビーイングにも影響を与えるというエビデンスがあります。
また、猛暑は長期間続くとより深刻な影響を及ぼします。世界のあらゆる国で厳しい暑さが増している中で、子どもたちもまた、より高温で、より長期、かつより高頻度で起きる熱波にさらされていることが分析から明らかになっています。世界の100カ国で、半数以上の子どもが、60年前の2倍の数の熱波にさらされています。例えば米国では、約3,600万人の子どもが60年前の2倍、570万人が3倍の熱波にさらされています。(※2 日本のデータ後述)
気候関連災害が子どもの健康に与える悪影響は、そのような災害が食料や水の確保と汚染にどのような被害を与えるか、インフラにどのような損害を与えるか、教育を含む子どもたちへのサービスにどのような支障をきたすか、また、故郷を追われることに繋がるかによってさらに拡大します。加えて、それらの影響の深刻度は、社会経済的地位、ジェンダー、場所、既存の健康状態、国の状況などに基づく、子どもたちが立ち向かう根本的な脆弱性や格差によって決まります。
今後数カ月以内に、パリ協定のすべての参加国は、新たな温室効果ガスの排出削減計画となる「国が決定する貢献(NDC3.0)」を提出しなければなりません。計画は、今後10年間の気候行動の道筋を決めるものであり、パリ協定の目標を実現するための具体的な取り組みを策定する、期限の定められた機会なのです。ユニセフは、各国首脳、政府、そして民間部門に対し、この機会を捉え、以下の行動をとることにより、すべての子どもが有す清潔で健康的かつ持続可能な環境を手に入れる権利を守る、緊急かつ大胆な気候変動対策を実行するよう呼びかけます。
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削減する:気温上昇を抑制するために、排出量を削減し、持続可能性と気候変動に関する野心的な国際合意を緊急性をもって履行すること。
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保護する:必要不可欠な社会サービスを、気候変動、頻発する災害、悪化する環境に適応させることを含め、子どもたちの命、健康、ウェルビーイング、そしてコミュニティのレジリエンスを保護すること。例えば、すべての保健スタッフが、熱ストレスを発見して治療するための訓練を受けることや、保健施設や教育施設が猛暑に耐えられるようにすることなどです。
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力を与える:すべての子どもが環境保護の推進者になれるよう、彼らの生涯を通じて、育成機会を提供し、教育、スキルを与えること。
ラッセル事務局長はこうも述べています。「子どもは小さなおとなではありません。子どもたちの身体は、猛暑に対してはるかに脆弱です。幼い身体は熱くなるのが早く、冷めるのが遅いのです。赤ちゃんは心拍数が速いため、猛暑は特に危険であり、気温の上昇は子どもにとってより憂慮すべきことなのです」
「各国政府は、気温上昇を抑制するために行動しなければなりません。そして、今こそが行動するまたとないチャンスなのです。各国政府は、気候変動に関する国別行動計画を策定中の今こそ、現在の子どもたちや将来の世代が、自分たちの残した世界で生きていかなければならないということを自覚し、野心を持って行動することができるのです」(ラッセル事務局長)
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日本のデータについて
本分析では、日本のデータも以下の通り記述されています。
※1日本では、全国における平均気温のため、1960年代・2020年代いずれも極めて暑い日は0日です。
※2 子ども(18歳未満)の総人口が1,643万人の日本では、1,511万人(92%)の子どもが60年前の1.5倍の回数、1,387万人(84%)の子どもが60年前の2倍の回数、1,072万人(65%)が3倍の回数の熱波にさらされています。 また、60年前と比較し3倍の日数の35℃を超える極めて暑い日を経験する子どもは591万人(36%)います。いずれも、1960年代と2020年から2024年までの平均とを比較したものです。
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■注記
気温データは、ERA5の再解析(Muñoz, 2019; 2024年7月10日にアクセス)の日次集計気温データを使用して計算され、Google Earth Engineプラットフォームを使用して取得・処理されています。
子どもの人口データは、Global Human Settlement Population data (GHS-POP - R2023A; Schiavina, 2023; 2024年7月10日にアクセス)から取得されたもので、Copernicus ftp site (https://human-settlement.emergency.copernicus.eu/download.php?ds=pop )からダウンロードされています。これらのデータは、世界人口推計データ(国連, 2024; 2024年7月10日にアクセス)の「Population Percentage by Select Age Groups - Both Sexes」を用いて子どもの人口比率を推計するために、調整されました。
ユニセフは、暑さの指標を規定するために以下の定義を採用しています。
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熱波(Heatwaves):3日以上の期間、各日の最高気温が現地の15日平均気温の上位10%に入ること
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熱波の頻度(Heatwaves frequency):1年当たりの熱波の発生回数
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熱波の期間(Heatwave duration):熱波が続いた期間の総日数
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熱波の深刻度(Heatwave severity):熱波が発生した期間の、15日間平均気温との気温差のことで、単位は摂氏(℃)。
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極めて高い温度/極めて暑い日(Extremely high temperatures/extremely hot days):最高気温が35℃を超えること(日)。
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■ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。 https://www.unicef.or.jp/
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、33の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/
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