第57回新潮新人賞発表! 受賞者は広島県出身の内田ミチルさんと、高校三年生の有賀未来さん。詳細は「新潮」11月号(10月7日発売)にて。
中村文則氏、田中慎弥氏など名だたる作家を輩出してきた新潮新人賞。今年の受賞作は内田ミチル氏(38歳)の「赤いベスト」と、有賀未来(みく)氏(18歳)の「あなたが走ったことないような坂道」の二作に決定しました。発表号となる「新潮」11月号には、村上春樹氏の最新作「夏帆とシロアリの女王」(150枚)や、角田光代氏と小川洋子氏の初対談も掲載。盛りだくさんの一号に、どうぞご期待ください!

純文学の登竜門である新潮新人賞。今回、応募総数は2683作にのぼりました。その頂点に輝いた受賞作の全文、受賞記念インタビュー、上田岳弘・大澤信亮・小山田浩子・金原ひとみ・又吉直樹の選考委員五氏による選評を、10月7日(火)発売の「新潮」11月号の誌面でお届けします。
内田ミチル「赤いベスト」(140枚)では、認知症の母親が行方不明になって以来、ひとりデイサービスの介助を受けながら暮らす女性・跡野と、「赤いベストを着た女」の噂話が流れる地域の様子が描かれます。見えない存在に脅える高齢者たちの集団心理や、意図が判然としない嘘をつく主人公から漂う不気味さや不信感を、広島の方言を巧みに用いながら醸成する筆力が評価されました。

有賀未来「あなたが走ったことないような坂道」(90枚)は、香港生まれで日本語しか話せない星瑤(シンユ)が、国籍や言語をはじめとする自らのアイデンティティや、顔も知らないママのこと、親友であるなおへの恋にも似た感情など、様々な揺らぎを抱えながら生きる姿を描きます。混乱と痛みが積み重なっていく語り手の現実認識をあらわすように読点でつながれていく独特の文体や、香港という土地への目の向け方、ユーモア感覚が評価を集めました。

■選評より(一部抜粋)
▶大澤信亮氏(「赤いベスト」について)
とにかく文章がいい。もとからの性格もあるのかもしれないが、世間並の感情が擦り切れてしまった人の、むきだしの存在感に凄味が感じられた。その極めて鋭敏な精神が五感に行き渡っている。(中略)一種の恐怖小説にも読めた。考えてしまうということの恐ろしさであり、つまりは生きることの恐ろしさでもある。
▶金原ひとみ氏(「あなたが走ったことないような坂道」について)
句点で閉じていないブツ切れにも見える文章だが、主人公の混乱や、閉じられない思いが積み重なっていく様がこの書き方で余すことなく表されている。親友との間に起こる混乱、気だるさ、明け方の徘徊、若者の逡巡とセンチメンタリズムが躍動感と共に描かれていて、高校生の物語としては満点。(中略)制御を心得ているところにも天性の才能を感じた。

■受賞者略歴
▶内田ミチル氏
1987年4月、広島県生まれ。東京学芸大学卒業。相談援助職。
▶有賀未来氏
2007年7月、東京都生まれ。高校三年生。
■書籍データ
【タイトル】「新潮」2025年11月号
【発売日】10月7日(火)
【定価】1,200円(税込)
【JANコード】4910049011157
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