まつもと市民芸術館プロデュース『ハイ・ライフ』 演出家日澤雄介のインタビュー、東出昌大、尾上寛之、阿部亮平、小日向星一の座談会レポートが到着
長年上演されている『ハイ・ライフ』だからこそ、違った魅力を届けたい
演出家 日澤雄介
みんなで意見を出し合って、台本にない部分を共有
──4日間の本読みが終わったところですが、本読み稽古はいかがでしたか。
単純に面白かったですね。今回私は、4人の演者さんとは初めてだったので、どんなことを考えているのか気になっていたのですが、向こうから「こうじゃないか、ああじゃないか」と積極的に意見を言ってくれたので、私自身の想像もより膨らませることができました。
それこそ4人の関係性は、セリフだけでは見えない部分が多くあるんですよね。ディック(東出)と、バグ(阿部)の腐れ縁だったり、ドニー(尾上)、ディック、バグは長いムショ暮らしで、どのように過ごし、知り合うようになったかは、台本には描かれていません。そうした背景を共有できたのはよかったですね。目には見えない部分ですけど、4人のセリフや目線のやり取りに、間違いなく出てくるので、お客様にはジャンキーな4人のキャラクターや関係性を、リアリティをもって届けられると思います。
人間が持つ滑稽さやおかしみを表現していきたい
──本作は、劇団チョコレートケーキで上演してきた社会派の作品とは、かなり異なる作風だと思いますが、どのように演出していこうとお考えですか。
劇団の作品は、真摯に、誠実に伝えることが肝だったりするんですが、今回は、いかにガサツにそして適当に、人間が持つ滑稽さやおかしみを表現していきたいと思っています。もちろんこれは社会派の作品でも、出すべきところなんですが、表現方法がだいぶ変わってくると思います。
お客さんにとって薬漬けのジャンキーな人たちの話は、日常とはかけ離れた世界だと思います。ただ、同じ人間なので、どこかに「それ分かる」「自分もやっちゃうかも」という共感できるところを、狙ってつくっていきたいですね。
4人の個性際立つ演技合戦が見どころ
──演出家 日澤さんから見た本作の見どころを教えてください。
それは間違いなく、この4人の演技合戦です。私自身はもちろんセリフはこだわっていきたいので、この作品の持つ熱量や暴力性、セリフの汚さ、強さ、荒々しさも表現しながらも、なお4人の個性をどう際立たせていくか。そこが見どころではないでしょうか。
さらに今回は三方から舞台を囲む客席なので、座る席によってそれぞれ全く違う見方になるように演出しようと考えています。何回ご覧いただいても楽しめますので、ぜひ何度も劇場に足を運んでいただければと思います(笑)。
事前レクチャーでは、流山児さんに私の演出観をぶつけてみたい
──11月4日に、『ハイ・ライフ』を日本で初めて上演した流山児★事務所の代表 流山児祥さんとの事前レクチャーが開催されますが、どのようなお話をしようとお考えですか。
『ハイ・ライフ』は30〜40年前のカナダの作品なんですが、流山児祥さんを象徴するような作品でもあるんですね。流山児さんは、我々の世代が知らない日本の熱量や激しさをそのまま背負いこんできたような人なので、荒々しい部分も持っています。でも、それだけではない何かを秘めているんです。それが魅力なんですけど、同じような魅力がこの『ハイ・ライフ』にもあると思うので、流山児さんがこの作品に出会った時に何を感じたのかを聞いてみたいですね。
一方で、私は流山児さんとは全く異なる演出をしてきているので、本作でやりたい私の演出観をぶつけてみたいと思っています。
今回は、言葉の裏側にある意図、意志をセリフに乗せて、文字(セリフ)だけの情報ではない何かを伝えることにもチャレンジしていきたいと思っています。ただ、本作は疾走感のある作品なので、セリフにどれだけ意図や意思を乗せられるか。はみ出しながらも、お客さんが自分の今を、ふと考えてしまうようなところは、ぜひつくっていきたいですね。
東出昌大、尾上寛之、阿部亮平、小日向星一による座談会
4日間の本読みで、みんなの意識を共有
──本読みが終わりましたが、いかがでしたか?
東出 オファーをいただいてから、台本を長い時間かけて1人で読んでたんです。だから、セリフ自体は頭に入っているんですけど、みんなと読み合わせした方がやっぱりシーンがイメージできるので、本読みの日を迎えた時は嬉しかったですね。
阿部 僕は、こういう本格的な舞台が初めてなので、みんなの胸を借りるつもりで臨みました。4日間かけて本読みを丁寧にやるのも、とても新鮮でした。
尾上 こんなに時間をかけて本読みをするのは、珍しいですよ。でも、細かく最初から最後まで通してやったおかげで、「このセリフってどういう意味があるのか」そういった背景を確認しながら、意識をみんなで共有できたのは、すごくありがたかったですね。これからの立ち稽古は、前のめりで入っていける気がします。
──今回4人の会話劇ですが、印象に残る役柄はありましたか?
尾上 (小日向)星一くんのビリーじゃないですかね。 イメージとして柔和で、幼い感じなのですが、黒い部分を持つ役なので、星一くんとのギャップが非常にあります(笑)
阿部 世の中のことを何も知らないのに、粋がっている奴っているじゃないですか。星一くんのセリフを聞いた時に、その雰囲気が非常に出ていて、ムカついてしょうがなかったですけどね。もちろん役としてですけど(笑)。
小日向 お二人に、そんな風に言って頂けるとありがたい限りです。僕は阿部さんの演じるバグが、みんなとバカ騒ぎするシーンではしゃぐ姿が非常に印象的でした。普段は暴力的で、おっかない役柄なので、そのギャップが好きですね。
ジャンキー(薬物依存症)といえども、それぞれの役に共感するところはある
──みなさん筋金入りのジャンキーという役柄ですが、その中でも自分に似ていると感じる点はありますか?
東出 「自分って、ディックっぽいな」と思う所は結構あります。
尾上 「人たらし感」が、でっくん(東出)ぽいなと思わせるよね。でっくんと喋ってると、みんなでっくんを好きになるので、このディックに言われれば、「みんな計画に乗っちゃうよな」と、本読みの段階からかなり感じました。
東出 (尾上さんの演じる)ドニーは、似てる所ある?
尾上 あるよ。人に強く勧められたり、周りが1つの意見だけを支持したりすると、「俺も乗らなきゃ」みたいな所は、やっぱり共感してしまうよね。
小日向 ビリーは、自分とは似ても似つかない役なんですよね。素の自分は、女の人とコミュニケーションをとるのも苦手な方だし、人から「調子に乗ってるよな」と言われることもないので。唯一挙げれば、見た目が幼い分、大学生風な雰囲気があるところですかね。もう28歳ですが、コンビニに行くと、今でもたまに年齢確認されますから(笑)。
4人が本作でチャレンジすることは?
──演出家の日澤さんは、本作の演出は自分にとってチャレンジだとおっしゃっていました。みなさんが本作でチャレンジしようと思っていること何ですか?
阿部 僕はもう全部ですね。さっきも言ったように、舞台は本作が初めてなのでゼロから全部吸収していきたい。今40代なんですが、オファーを受けた時に周りに相談してみると「今後、こんな挑戦の機会はないよ」と、いろんな人に言われました。それで日澤さんに直接お会いして、「この人に、自分を預けてみよう」と思ったので、今回覚悟を持って引き受けることにしたんです。
尾上 ドニーは、吃音で、ヤクのやりすぎで内臓がいかれてる役なんですが、こんな役は初めてなので、どこまで身体を通して表現できるかは、チャレンジングな経験です。その上で、3人とコミュニケーションを取りながら芝居を前に進めていかなければならないので、そこは未知の領域でもあります。
小日向 日澤さんに「色気を出すために、筋トレを頑張りましょう」と言われていて、身体づくりにチャレンジしています。ただ個人的には、自分とかけ離れた役を演じられるのは、楽しみでもあります。
東出 ずっと舞台に出ずっぱりの役は初めてで、今まで一番多くしゃべった役の4倍以上くらいのセリフの量なんです。それに、これだけ少人数で1ヶ月近く稽古することも、今までなかったですね。これから松本で、みんなと寝食を共にして、芝居漬けの毎日が送れるのも初めて。そういう意味では、挑戦づくしです。
松本は行ってみたいところが盛りだくさん
──東出さんがおっしゃったように、これから松本に1カ月近く滞在されます。どんなことを楽しみにしていますか?
尾上 松本には何度か行ったことがあって、水がきれいで、ご飯がとにかくおいしいです。個人的には、好きな銭湯屋があるので、毎日のようにそこへ通うのが楽しみです。
小日向 僕はラーメンがすごく好きなので、お気に入りのラーメン屋さんがいくつもあるので、そこに行けるのが楽しみですね。
阿部 まだ行ったことがないので、今二人の話を聞いて、早く行きたくなりました(笑)。
東出 休みがあれば、昼からそばを食べて、日本酒をなめたりしたいなと、ひそかに考えています。あと、11月4日の『ハイ・ライフ』の流山児★事務所の流山児さんと日澤さんとの事前レクチャーも見てみたいですね。
疾走感があり、スリリングな展開にエンタメ性も感じられる作品
──4人の演者さんが感じる、本作の見どころを教えてください。
東出 とにかくハチャメチャで、4人とも、自分たちの欲求のために好き勝手なことをやります。ただ一方で生きづらさも抱えている。その中で、まるで動物のように欲を満たすために行動することで、この後どうなるんだろうという先が読めない展開になっていく。それが、この作品の魅力の1つではないでしょうか。
尾上 日常生活の中では、見ることができない世界なんですが、些細なケンカから大ごとに発展して、取り返しのつかないことになる。そのスリリングな展開はエンターテインメント的な要素でもあり、非常に見どころです。
阿部 尾上くんが言ったように、普段体験できない世界が観られるのは面白い。それに、みんなジャンキー中毒者ですが、一人ひとりキャラクターが立っていて、会話から関係性を紐解いていく、そういう楽しみ方もあると思います。
小日向 4人とも本当に愚かなんですけど、どこか人間臭くもあって、愛おしい。モラルも常識もわきまえずに生きているところに、清々しさすら感じるし、どこまでも、脇目も振らずに突き進んでいくところに疾走感があり、楽しめると思います。
<公演概要>
まつもと市民芸術館プロデュース
『ハイ・ライフ』
作:リー・マクドゥーガル
翻訳:吉原豊司
演出:日澤雄介 (劇団チョコレートケーキ)
出演:東出昌大 尾上寛之 阿部亮平 小日向星一
【松本】
日程:2023年11月23日(木・祝) ~11月26日(日)
場所:まつもと市民芸術館 実験劇場
【東京】
日程:2023年12月1日(金)~ 12月6日(水)
場所:吉祥寺シアター
主催:一般財団法人松本市芸術文化振興財団
後援:松本市 松本市教育委員会
企画制作:まつもと市民芸術館
協力:ゴーチ・ブラザーズ(東京公演)
提携:公益財団法人武蔵野文化生涯学習事業団(東京公演)
公式サイト:https://www.mpac.jp/event/39271/
<イベント概要>
芸術館レクチャーシリーズ㊲ 『ハイ・ライフ』関連イベント
筋金入りのジャンキー4人⁈銀行強盗⁈『ハイ・ライフ』は何故、人を惹きつけるのか
『ハイ・ライフ』を初めて日本で初演し、何度も再演を続けてこられた流山児祥さん、そして今回初めて本作品を演出する日澤雄介さんをお招きし、お二人にこの作品を演出する上で大切にしている事や、作品の魅力などを伺います!
登壇者:流山児祥(流山児★事務所代表・演出家・俳優)
日澤雄介(劇団チョコレートケーキ主宰・演出家)
日時:2023年11月4日(土)/13:30~15:00/開場13:00
会場:まつもと市民芸術館 特設会場
参加料:無料(要事前申込み・先着順)
定員:30名 (定員になり次第、申し込み締め切り)
お問い合わせ :
まつもと市民芸術館チケットセンター(10:00~18:00)
TEL:0263-33-2200 FAX:0263-33-3830
https://www.mpac.jp/
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