ガザ地区 停戦発効後 ユニセフ、多岐にわたる支援を拡大~物資供給、インフラ復旧、家族再会など【プレスリリース】
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【2025年2月10日 パレスチナ 発】
ガザ地区で長く待ち望まれた停戦が先月19日にようやく発効して以来、ユニセフ(国連児童基金)は水、せっけんや洗剤などの衛生用品、栄養や保健医療に関する物資、そして赤ちゃんや子どものための防寒着や防水シートを、昼夜問わず、地区内に輸送し続けています。
15カ月にわたって戦争が続き、食料や医薬品の入手が大幅に制限されたことにより、ガザ地区の210万人の人々は想像を絶する苦しみを経験してきました。最も苦しい状況に置かれたのは子どもたちで、少なくとも1万4,500人が亡くなり、さらに多くが負傷しました。さらに、1万7,000人の子どもは親の同伴がない、または親とはぐれたと推定され、100万人近くの子どもが家を追われています。
「1年3カ月の間、私はお母さんに会っていません」と9歳のサマさんは言います。「これでようやく、ガザ市に戻って、お母さんに会って抱きしめてもらえます」
ユニセフ、支援物資の搬入を加速
停戦発効直後から、ユニセフは、数十台のトラックに積まれた人道支援物資をガザ地区に搬入し始めました。ユニセフが停戦発効後に運び入れた人道支援物資は、2月7日時点でトラック500台分以上に及びます。支援物資の半分以上が、数カ月間にわたって物資供給が制限されていたガザ地区北部に届けられました。
ユニセフはまた、紛争当事者に対し、停戦義務を確実に果たし、人道支援が安全にかつ妨げられることなく、大規模に運び込まれ、すべての子どもに届くことを担保するよう求めています。
1月19日に先立ちユニセフは、停戦が発効しだい、子どもや家族に命を守るのに必要な栄養、水と衛生、保健、教育、心理社会的支援に必要な物資など、トラック1,300台分の支援物資をガザ地区内に運び入れる態勢を整えていました。その後に続く支援として、さらにトラック700台分の物資の輸送準備もしていました。
荒廃したインフラ
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ガザの人々は、自宅へ戻ろうと移動する中で、破壊の光景を目にしています。ガザ地区では、69%の建物が損傷または崩壊したと推定されています。世界保健機関(WHO)によると、ガザ地区にある36の病院のうち、機能しているのは17施設のみで、それも限られた範囲での稼働にとどまっています。これにより、感染症の集団発生のリスクが高まり、子どもが危険にさらされています。
ガザ地区内の水の製造能力は25%未満に落ちており、配管やポンプが破壊されたり、電力や燃料の不足により使用不能になったりしています。
ガザ地区のほぼすべての人が深刻な急性食料不安に直面しています。子どもの栄養不良の症例には、迅速な診断、治療、経過観察と、長期的なケアが必要です。
この進行中の危機において、ユニセフは、子どもとその家族の状況を改善するための緊急対応を優先し、既存の基礎的サービスの維持と拡大に重点的に取り組む一方、人々が地区内の別の地域に移動する状況に対応するため、新たなサービスを構築しています。
11歳のジャドさんは、「友だちと遊んだり、学校に戻って勉強をするんだ」と言います。
子どもたちと家族への支援拡大
最優先事項は、感染症の集団発生を防ぐため、予防接種の機会を逃した子どもたちが接種を受けられるよう取り組むことです。これと並行して、ユニセフは子どもや妊娠中・授乳中の母親を対象とした、栄養不良の検査と治療の拡大・強化に取り組んでいます。ユニセフは、0~24カ月の乳幼児を対象とした栄養不良を予防する物資の提供を拡充しています。
ユニセフはまた、特に北部地域における病院の対応能力の向上、特に新生児ケアの支援に重点的に取り組む予定です。
そして南部で水の製造を引き続き支援する一方、北部で水の製造量を増やし、家庭向けの配水と貯水を強化します。これにはポンプや発電機の輸送、予備部品の準備および設置作業が必要です。
もう一つの重大な問題は、ガザ地区全体に何千トンもの爆発物の残骸が散乱していることです。ユニセフは、子どもと養育者の危機意識を高め、不発弾の危険性や家族が離ればなれになることのリスクを注意喚起するとともに、家族が経験したトラウマに対処できるよう、メンタルヘルスと心理社会的ケア支援の規模を拡大していきます。
多くの人々が自宅に戻ろうと移動する中で、子どもが親と離ればなれになるリスクが高まっています。ユニセフは、戦争開始時点から実施している支援プログラムを通じて、パートナーと協力しながら、子どもと家族の再会のため、引き続き取り組んでいます。
停戦後、ガザ地区の市場の状況は着実に改善しているため、ユニセフは人道的現金給付プログラムを強化しました。すでに11万人近くに、ユニセフが仕組みを確立した「電子ウォレット」を通じて、デジタルで送金する多目的現金給付を行いました。この支援により、子どもがいる家庭は、食料、衛生用品、医薬品、衣類など、非常に基礎的なニーズを満たすことができます。ユニセフは昨年10月以来、ガザの100万人に人道的現金給付を行い、その半数は給付を複数回受け取っています。
恒久的な停戦を
子どもの命を守るためには、恒久的な停戦が不可欠です。この戦争の犠牲はすでに計り知れないものとなっており、これ以上犠牲が増え続けることは許されません。しかし、停戦だけではガザ地区の子どもの苦しみは終わりません。すべての基礎的なサービスの崩壊、住宅や保健医療・教育施設の破壊の規模を踏まえると、人道支援ニーズは想像を絶するほどの大きさです。ユニセフとパートナーは対応を強化・拡大していますが、国際社会がこれらの取り組みを支援し、ガザ地区の全域に、支援物資と商用物資が長期的に届けられるよう、あらゆる手段を講じることが、何よりも重要なのです。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。(https://www.unicef.or.jp )
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