ロヒンギャ難民キャンプ 重度急性栄養不良の子ども27%急増~海外援助の削減で飢餓の危険に【プレスリリース】

コックスバザールにあるロヒンギャ難民キャンプで、栄養状態の検査を受ける2歳のソフィバちゃん(バングラデシュ、2024年7月16日撮影) © UNICEF/UNI622138/Njiokiktjien

【2025年3月11日 ダッカ/コックスバザール(バングラデシュ)発】

バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプで、重度の急性栄養不良により緊急に治療を必要とする子どもの数が、2025年2月に、昨年同月と比較して27%増加しました。ユニセフ(国連児童基金)は、悪化する状況が多くの幼い子どもを命にかかわる飢餓に陥れていると警鐘を鳴らしています。

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100万人以上のロヒンギャ難民(そのうち50万人以上は子ども)が暮らす、コックスバザールの世界最大の難民居住地では、多くの家族が緊急レベルの栄養不良に直面しています。難民キャンプで暮らす子どもの15%以上が現在、栄養不良の状態にあり、これは2017年にロヒンギャ難民が大量に逃れてきて以来、最も高い水準です。

 

昨年ユニセフは、重度の急性栄養不良に苦しむ1万2,000人近くの5歳未満の子どもに救命治療を提供しました。重度の急性栄養不良は、子どもを危険なほどやせ細らせ、衰弱させ、病気に対して非常に脆弱な状態にします。治療を受けた子どものうち92%は回復しましたが、緊急かつ持続的な処置がなければ命を奪いかねません。

 

コックスバザールにあるロヒンギャ難民キャンプ。50万人以上の子どもを含む100万人以上が暮らしている(バングラデシュ、2024年7月16日撮影) © UNICEF/UNI622234/Njiokiktjien

そして今、危機は深まっています。2025年1月には、重度急性栄養不良の症例が前年同月比で25%増加しました(819件から1,021件)。2月にはさらに急激な増加が見られ、27%増(836件から1,062件)となり、危険な上昇傾向を示しています。この急増は、次のような複数の要因が重なることで引き起こされています。2024年にモンスーンがもたらす長引く雨により衛生状態が低下し、重度の下痢症が急増したほか、コレラやデング熱の集団感染が発生したこと、過去2年にわたって断続的に実施された食料配給の削減の影響により食生活の質がさらに悪化したこと、そしてここ数カ月間には暴力から逃れてキャンプに避難する家族が増えていること、などです。

 

ユニセフ・バングラデシュ事務所代表のラナ・フラワーズは以下のように述べています。「現時点では、ロヒンギャの母親たちや重病の子どもたちが必要としている支援サービスを提供することはできています。しかしニーズが高まり資金が減っていく中で、食料配給がさらに削減され命を守る栄養治療支援が止まった場合、我が子がどうなるのか不安でたまらない、と人々は話しています」

 

コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプにある、ユニセフが支援する栄養センターで、重度の急性栄養不良の治療を受ける1歳のリファちゃん。 母親は「娘は座ったり歩いたり、話したりはできないが、食欲は回復してきている。笑い、歩き、話せるようになってほしい」と話す(バングラデシュ、2024年7月16日撮影) © UNICEF/UNI622137/Njiokiktjien

2025年の初頭にユニセフは、年内にロヒンギャ難民キャンプの1万4,200人の子どもが重度の急性栄養不良に苦しむことになるだろうと推定しました。食料配給の減少、子どもの栄養状態の悪化、あるいは安全な水や保健サービスの提供に影響を及ぼすその他の要因により、この数字は大幅に増加する可能性があります。適切な治療を受けられない場合、重度急性栄養不良の状態にある子どもが命を落とす確率は、十分に栄養を摂っている同年齢の子どもと比べて11倍高くなります。

 

ジュネーブで行われた国連の定例記者会見でフラワーズ代表は、早急な資金援助がなければ、配給がまもなく半分以下の、月わずか6ドル分にまで減る、という国連機関の試算があると明らかにしました。これは基本的な栄養ニーズを満たすには、程遠い金額です。

 

フラワーズ代表はまた、次のように述べました。「世界は数字に振り回されがちです。数字ではなく、ある一人の女性の話をさせてください。25歳のヌル・カイダさんは、生後14カ月の長女マリウムちゃんがあまりに弱って食べられなくなったため、ユニセフの診療所に連れて行きました。検査の結果、危険な栄養不良状態であることがわかりました。数週間の治療の末、マリウムちゃんは回復し始めました。

 

しかしその後、ヌル・カイダさんはキャンプ内でささやかれる恐ろしい噂を、耳にするようになりました。彼女は私たちにこう不安を打ち明けました。『人々が、この栄養施設が閉鎖されるかもしれないと話しています。自分たちが食べられなくても、せめて子どもには食べさせたいのです』。そして『この栄養治療食の提供がなくなったら、私の子どもは死んでしまうかもしれません 』と必死に訴えました。

 

こういった家族は安全に故郷に帰ることもできず、働く法的権利もありません。持続的な人道支援は選択肢ではなく、不可欠なのです。

 

世界的な海外援助の削減、という資金危機の中でも、ユニセフは子どもたちのために支援を提供し続けると固く決意しています。しかし、保証された持続的な資金がなければ、重要な支援サービスの提供が脅かされます。

 

私たちは、子どものための極めて重要な活動への資金支援を継続するよう、すべてのドナーに呼び掛けています。ここで暮らす難民の人々は、国際社会が人道的に連帯したおかげで、これまで生き延びることができました。しかし今日、資金の危機が子どもの生存の危機となる恐れがあるのです」

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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