世界最悪の人道危機の一つ 紛争10年のイエメン 5歳未満児の半数が急性栄養不良 【プレスリリース】

ホデイダにあるユニセフ支援の移動診療所で、上腕計測メジャーを使った栄養状態の検査を受け、赤色=重度の急性栄養不良と示された子ども(イエメン、2024年11月27日撮影) © UNICEF/UNI708796/ALfilastini

2025年3月25日 サヌア(イエメン)/ジュネーブ発】

イエメンで紛争が勃発して10年が経過した25日、ユニセフ(国連児童基金)イエメン事務所代表のピーター・ホーキンスは、ジュネーブで行われた国連の定例記者会見で、子どもたちの状況を報告しました。

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イエメンの紛争は悲劇的な節目を迎えました。10年以上にわたってほぼ間断なく戦闘が続き、一時的に敵対行為が弱まったのはごくわずかな期間だけでした。この紛争により、子ども時代が奪われ、未来が打ち砕かれ、あらゆる人が生き残るために必死な状況に陥りました。

私は本日、数字やデータを共有するためだけではなく、世界最悪の長期化した人道危機の一つに苦しむ何百万人もの子どもの声を代弁するためにここにいます。これは、飢餓、剥奪、そして今や懸念される紛争激化に代表される危機なのです。

5歳未満の子どもの2人に1人が急性の栄養不良状態にあります。そのうち53万7,000人以上が、苦痛を伴い、命にかかわる、しかし十分に予防可能な重度の急性栄養不良に陥っています。栄養不良は免疫力を弱め、発育阻害(スタンティング)を引き起こし、子どもたちの潜在的な可能性を奪います。イエメンでは、これは単なる健康上の危機ではなく、何千人もの子どもたちにとって死を意味するものなのです。

同様に憂慮すべきことに、140万人の妊娠中および授乳中の女性が栄養不良状態であり、世代を超えた負の連鎖が永続する状況となっています。

ホデイダの移動診療所では、重度の急性栄養不良の子どもたちに、栄養治療食のプランピー・ナッツを提供している(イエメン、2024年11月27日撮影) © UNICEF/UNI708780/ALfilastini

この大惨事は天災ではありません。人災です。10年以上にわたる紛争は、イエメンの経済、保健医療制度、インフラを壊滅させました。暴力が一時的に沈静化しても、紛争の構造的な影響、とりわけ子どもたちにとって深刻な状況は続きます。人口の半数以上が、生きるためには人道支援を必要としています。2015年以降、食料価格は300%上昇し、高騰しています。食料や医薬品のライフラインである主要な港と道路は、損傷を受け、あるいは封鎖されています。

このような非常に困難で危険な状況にもかかわらず、ユニセフは子どもたちのために活動を続けています。

ユニセフは2025年、3,200カ所の保健施設、栄養不良の子ども60万人の治療、70の巡回チーム、4万2,000人の地域保健スタッフ、そして、栄養治療食を提供するセンター27カ所を支援する予定です。これらの支援を継続するためには、持続的な資金が必要です。そうでなければ、イエメンの760万人の人々がプライマリ・ヘルスケアを受けられなくなる恐れがあります。

イエメンにおけるユニセフの2025年の人道支援活動の資金要請に対し、集まったのはわずか25%です。ニーズが高まる中、緊急の資金援助がなければ、私たちが提供できる最低限の支援でさえ維持することができません。

アデンの保健センターで受け取った栄養治療食を、母親から食べさせてもらう2歳半の女の子(イエメン、2024年5月23日撮影) © UNICEF/UNI585231/Hayyan

重度の急性栄養不良の53万7,000人の子どもにとっては一分一秒が大切なのです。重度の急性栄養不良の子どもは、健康な子どもに比べて死亡する確率が11倍も高いのです。治療しなければ、彼らは静かに命を落とすことになります。生き延びた子どもたちでさえ、認知機能の発達障がい、慢性疾患、経済的可能性の喪失など、生涯にわたって影響を受けることになります。これはイエメンだけの損失にとどまりません。人類全体にとっての敗北なのです。

 先月、イエメン南部のタイズで、3歳のアミーナちゃんに会いました。彼女の母親は、骸骨のように痩せ細ったアミーナちゃんを抱いて、ユニセフの栄養クリニックまで12キロの道のりを歩いてきました。アミーナちゃんは現在、回復途上にありますが、彼女の将来は、私たちが支援を継続できるかどうかにかかっています。

つまり、以下の点にかかっているのです。一つは、支援に必要な資金を全額集めること。イエメンにおけるユニセフの2025年の支援活動には、追加で1億5,700万米ドルが必要です。あらゆる形態の栄養不良や病気、教育の欠如、そしてイエメンの子どもたちが強いられているその他の苦しみと闘うためには、持続的な投資が必要です。二つ目は、人道アクセスの保障です。イエメンの紛争に関わるすべての当事者は、支援物資の妨げのない輸送を認め、命を守る支援を人道支援従事者が届けられるようにしなければなりません。拘束された国連スタッフやその他の人道支援従事者の解放を求めます。そして重要なことは、紛争を終結させることです。

イエメンの子どもたちは、あと10年も待つことはできません。彼らには平和が必要です。彼らには正義が必要です。しかし何よりも、子どもたちには今、私たちの行動が必要なのです。彼らを失望させることのないように。

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注記: 2024年のユニセフのイエメンへの支援実績には以下が含まれます。

  • 重度急性栄養不良の5歳未満児への治療、約43万2,000件を支援

  • 約3,200カ所のプライマリ・ヘルスケア施設を支援し、5歳未満児58万人を含む760万人へ命を守るプライマリ・ヘルスケアサービスの提供を支援

  • 120万人に緊急および持続的な水と衛生に関する支援サービスを提供

  • 4万9,600人以上の教員が学校教育に従事し続けられるよう、奨励金の支給を支援

  • 脆弱な立場に置かれているイエメン全土の960万人以上の人々に、無条件での現金給付支援を2回実施

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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