はしかなど、ワクチンで予防可能な疾病 集団感染急増 ユニセフなど、「世界予防接種週間」に警鐘を鳴らす 【プレスリリース】

マラリアの予防接種を受ける子ども(ブルンジ、2025年3月17日撮影) © UNICEF/UNI764056/Muco

【2025年4月24日 ジュネーブ/ニューヨーク発】

4月24日から30日までの世界予防接種週間を迎えるにあたり、ユニセフ(国連児童基金)などは、誤った情報や人口増加、人道危機、資金削減が予防接種の取り組みの進展を脅かし、何百万人もの子ども、若者、おとなを危険にさらしていると共同で訴えました。

* * *

麻疹(はしか)、髄膜炎、黄熱病など、予防接種で防ぐことのできる疾病の集団感染が世界的に増えており、多くの国で長い間抑え込まれていた、あるいは事実上消滅していたジフテリアなどの疾病も再流行する恐れがあります。こうした事態を受けて各機関は国際社会に、予防接種計画を強化し、過去50年間に達成した子どもの死亡率の低下という大きな成果を堅持するため、差し迫った課題として引き続き政治的関心を寄せ、資金を拠出するよう求めています。

 

集団感染の増加と医療システムの逼迫

 

はしかは、特に危険な形で再流行しています。2021 年以降、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)中およびその後に多くのコミュニティで予防接種率が低下したことを受け、はしかの症例数は年々増えています。2023 年のはしかの症例数は 推定1,030 万件に達し、この数字は2022 年と比較して 20% 増加しています。

各機関は、世界中で集団感染が猛威を振るいつつある中、この傾向は 2024 年から 2025 年にかけて続いていた可能性が高いと警鐘を鳴らしています。この 12カ月間に 138 カ国ではしかの症例が報告され、そのうち 61 カ国では大規模なもしくは混乱を引き起こすような集団感染が発生しました。これは12カ月間で発生した件数としては、2019年以降で最多の件数です。

予防接種を受ける1歳のローちゃん。ユニセフの支援により、遠隔地で暮らす子どもにもワクチンが届けられている(ベトナム、2024年12月17日撮影) © UNICEF/UNI718169/Luu Thu Huong

 アフリカでは髄膜炎の症例も2024年に急増し、この増加傾向は2025年も継続しています。今年に入ってからの3カ月間だけで、22カ国で5,500件超の疑わしい症例と約300件の死亡が報告されました。昨年は24カ国で約2万6,000件の症例と約1,400件の死亡が報告されています。

 

アフリカ地域では黄熱病の症例も増加傾向にあり、2024年には12カ国で124件の症例が確認されたと報告されています。これ以前の10年間には、世界的にワクチンが備蓄され、黄熱病ワクチンが定期予防接種計画に使用されたことにより、この感染症は劇的に減少していました。南北アメリカ地域では、今年初めから黄熱病の集団感染が確認されており、4カ国で合計131件の症例が報告されています。

 

これらの集団感染は、世界的な資金削減の中で発生しています。世界保健機関(WHO)が先ごろ行った、同機関の108 の国事務所(その大半は低所得国および下位中所得国)を通した現状調査によると、これらの国のほぼ半数で、ドナーの資金削減により、集団予防接種や定期予防接種の実施、および関連物資の供給に中程度から重度の支障が出ています。ワクチンで予防可能な疾患をも対象とした疾病監視体制も、調査対象国の半数以上で影響を受けています。

 

その一方で、パンデミック中に予防接種を受けられなかった子どもに対し、各国がその遅れを取り戻そうと取り組んでいるにもかかわらず、近年では定期予防接種を受けていない子どもの数が増加しています。定期予防接種を全く受けられなかった子どもは2023年には1,450万人いると推定されており、2022年の1,390万人および2019年の1,290万人から増加しています。これらの子どもの半数以上は、紛争下や脆弱で不安定な状況にある国で暮らしており、多くの場合、基本的な保健医療サービスを受けることが難しくなっています。

 

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のように述べています。「世界的な資金危機により、不安定かつ紛争の影響下にある国々で、脆弱な立場に置かれた1,500万人以上の子どもにはしかの予防接種を行うことが著しく困難になっています。50カ国近くで、予防接種事業、疾病の監視、集団感染への対応がすでに支障をきたしており、その影響の大きさは新型コロナウイルス感染症の流行時と同様です。予防可能な疾病との闘いにおいて、後退は許されません」

 

新型コロナウイルス感染症のパンデミック中に予防接種を受けられなかった子どもたちに予防接種を行うため、2023年に開始された「The Big Catch-up(大きく取り戻す)」の取り組みやその他の定期予防接種計画への継続的な投資が不可欠です。

 

解決策としての予防接種

 

ユニセフ、WHO、Gaviワクチンアライアンスおよびパートナーの共同の取り組みにより、山積する課題に直面しつつも、各国はプライマリ・ヘルスケアを通じてワクチンへのアクセス拡大と予防接種体制の強化を進めています。ワクチンは毎年、14の感染症から 420 万人近くの命を守っています。そのうちのほぼ半数の人はアフリカ地域に暮らしています。

集団予防接種事業により、アフリカの髄膜炎ベルト(髄膜炎の大流行がたびたび発生するアフリカ中央部)では A 型髄膜炎が根絶されました。また、5 種類の株の髄膜炎菌に効く新しいワクチンに、より広範な予防効果を見込めることから、集団感染対応と予防のための使用拡大が進められています。

アンタナナリボ州のポリオ予防接種キャンペーンで、経口ワクチンを投与される男の子(マダガスカル、2024年6月12日撮影) © UNICEF/UNI591699/Ramasomanana

 定期予防接種率の向上と緊急用ワクチン備蓄の増強により、黄熱病の症例数と死亡者数の減少にも進展が見られます。しかし、最近アフリカおよび南北アメリカ地域で集団感染が発生していることは、これまで症例が報告されていなかった地域や定期予防接種率が低い地域、予防事業に遅れがある地域におけるリスクを浮き彫りにしています。

 

さらに、過去 2 年間で、予防接種に関する他の分野でも大きな進展が見られました。子宮頸がんの発生率が世界で最も高いアフリカ地域では、2020 年から 2023 年にかけて、HPV ワクチンの接種率が 21% から 40% へとほぼ 2 倍に増えました。これは、子宮頸がんの撲滅に向け、世界の協調的な取り組みが反映されたものです。予防接種の進展には、肺炎球菌結合型ワクチンの世界的な接種率の向上も含まれます。この進展は、特に東南アジア地域で顕著であり、疾病負荷の高いチャドとソマリアでも導入が始まりました。

もう一つの重要な進展は、アフリカの約20カ国でマラリアのワクチンが自治体レベルで導入されたことです。これにより、さらに多くの国がこのワクチンを導入し、拡大が加速することで、2035年までにさらに50万人の命を守る基盤が築かれます。これはマラリア対策の手段の一つとして位置付けられています。

 

行動を呼び掛け

 

ユニセフ、WHOおよびGaviワクチンアライアンスは、予防接種への支援を強化するよう、保護者、一般市民および政治家に対し緊急に呼び掛けています。これらの機関は、ワクチンと予防接種計画への持続的な投資の必要性を強調し、各国に対して「予防接種アジェンダ2030(IA2030)」へのコミットメントを履行するよう訴えています。

予防接種は統合されたプライマリ・ヘルスケア・システムの一部として、疾病から人々を守るとともに、出産前ケア、栄養、マラリア検診などの他の重要なケアと家族をつなぐ役割も果たします。予防接種は、1 ドル当たり 54 ドルの投資収益が得られるという、健康分野における「ベストバイ」であり、将来の繁栄と健康安全保障の基盤となるのです。

チャッティースガル州の保健センターで、予防接種を受ける生後9カ月のマニシャちゃん(インド、2025年3月27日撮影) © UNICEF/UNI781231/Jariwala

2025年6月25日に開催される Gavi ワクチンアライアンスのハイレベル誓約サミットでは、2026年から2030年までに 5億人の子どもの感染症を予防し、少なくとも 800万人の命を守るという野心的な戦略の資金として、ドナーから少なくとも 90億米ドルを調達することを目指しています。

* * *

■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

103フォロワー

RSS
URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
-
設立
-