75年間不明だった植物由来樹脂の構造決定に成功 ~分子設計による高性能化と化石燃料由来の材料代替への大きな期待~〔広島大学,岡山大学〕

国立大学法人岡山大学

広島大学と岡山大学の共同研究成果プレスリリースです

2024(令和6)年 10月 1日
国立大学法人岡山大学

https://www.okayama-u.ac.jp/




<本研究成果のポイント>

  • 植物を原料とするβ-ピネンの重合体は、約75年前に初めて合成されて以来、正確な構造が未決定であった。

  • 独自の触媒技術を用いた重合体の合成と極低温プローブNMRを用いた解析により、ポリ(β-ピネン)の2種類の主構造の決定に成功した。

  • 2種類の主構造の比率と熱物性の関連も明らかになったため、ポリ(β-ピネン)の高機能化・用途拡大、化石燃料由来の材料の代替が加速することが期待できる。



◆概 要
 広島大学大学院先進理工系科学研究科の田中亮准教授、中山祐正准教授、塩野毅名誉教授、岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(工)の押木俊之講師らの研究グループは、約75年にわたり知られていなかった、ポリ(β-ピネン)の正確な化学構造の決定に成功しました。


 β-ピネンを重合して得られるポリ(β-ピネン)は、植物由来の炭化水素樹脂として良く知られている高分子化合物で、工業的には粘着剤等に用いられる他、近年では透明樹脂材料などへの応用も期待されています。この化合物は複数種の繰り返し構造から構成されることが、さまざまな実験結果から明らかであったにもかかわらず、その正確な構造決定は行われておらず、これまでの文献には約75年前に提案された推定構造がそのまま記載され続けていました。


 本研究では、我々が開発した触媒を用いて得られたさまざまな組成のポリ(β-ピネン)を、極低温プローブNMRを駆使して構造決定することで、ポリ(β-ピネン)が1,4-シクロヘキセニル構造と1,3-シクロヘキセニル構造の2種類の繰り返し構造を持つことを明らかにしました。


 構造情報を元にあらためて組成と物性の関連を整理し、樹脂の耐熱性は1,4-構造の割合が大きいほど高くなることや、1,4-構造の割合を上昇させるのに必要な触媒の性質も明らかにしました。これらの知見は、循環可能な資源を原料として得られるポリ(β-ピネン)の高機能化・用途拡大に役立つものです。


 また、本知見を元にポリ(β-ピネン)のさらなる精密合成が達成できれば、化石資源から作られる炭化水素樹脂を用いたコーディング剤・塗料・透明フィルム・レンズなど、あらゆる製品の代替も可能になると期待できます。


 本研究成果は、2024年9月25日にアメリカ化学会が発行する学術誌「Macromolecules」でオンライン公開されました。





◆論文情報
 著 者:Oluwaseyi Aderemi Ajala1), Shogo Nakaichi1), Toshiyuki Oshiki2), Yuushou Nakayama1), Takeshi Shiono1), Ryo Tanaka1)*
 *Corresponding author (責任著者)
 1) 広島大学大学院先進理工系科学研究科
 2) 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(工)
 論文タイトル:Origin of the Two Major Types of Repeating Units in Poly(β-pinene) Obtained by Cationic Polymerization
 掲載誌:Macromolecules
 DOI: https://doi.org/10.1021/acs.macromol.4c01663



◆詳しい研究内容について
 75年間不明だった植物由来樹脂の構造決定に成功~分子設計による高性能化と化石燃料由来の材料代替への大きな期待~
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r6/press20240930-1.pdf





◆本件お問い合わせ先

<研究に関すること>
 広島大学大学院先進理工系科学研究科 准教授 田中 亮
 TEL:082-424-7729

 FAX:082-424-5494

<広報に関すること>
 広島大学 広報室

 岡山大学 総務・企画部 広報課

 TEL:086-251-7012

 FAX:086-251-7294


<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/


<岡山大学のスタートアップ・ベンチャーなどに関するお問い合わせ先>

 岡山大学研究・イノベーション共創機構 スタートアップ・ベンチャー創出本部

 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 E-mail:start-up1◎adm.okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい

 https://venture.okayama-u.ac.jp/


 岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
 岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html
 岡山大学統合報告書2023:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001926.000072793.html

 岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
 岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):https://youtu.be/Qdqjy4mw4ik
 岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw

 産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2024年8月期共創活動パートナー募集中:

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002391.000072793.html
   
 岡山大学「THEインパクトランキング2021」総合ランキング 世界トップ200位以内、国内同列1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000072793.html
 岡山大学『大学ブランド・イメージ調査2021~2022』「SDGsに積極的な大学」中国・四国1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000373.000072793.html
 岡山大学『企業の人事担当者から見た大学イメージ調査2022年度版』中国・四国1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000072793.html

国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください

  • 岡山大学 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~

    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html

すべての画像


会社概要

国立大学法人岡山大学

51フォロワー

RSS
URL
https://www.okayama-u.ac.jp/
業種
教育・学習支援業
本社所在地
岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟
電話番号
086-252-1111
代表者名
那須保友
上場
未上場
資本金
-
設立
1949年05月