中東・北アフリカ地域の紛争下の子ども 5秒に1人避難、15分に1人死傷 ユニセフ、支援資金削減に警鐘 【プレスリリース】

ガザ地区南部のラファの自宅にいたとき、隣の住宅が空爆を受け、母親や弟とともに負傷した男の子(パレスチナ、2025年6月23日撮影)© UNICEF/UNI820817/El Baba

【2025年7月1日 アンマン(ヨルダン)発】

中東・北アフリカ地域では、紛争によって2年足らずの間に少なくとも1,220万人の子どもが命を奪われ、けがを負い、あるいは避難を余儀なくされたと報じられています。これは、5秒に1人の子どもが避難を強いられ、15分に1人の子どもが死傷していることに相当し、ユニセフ(国連児童基金)は子どもの保護を強く訴えています。

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報告によると、子ども1,200万人以上が避難を余儀なくされ、4万人以上が負傷し、約2万人が命を落としています。

 

ユニセフの中東・北アフリカ事務所代表のエドゥアルド・ベイグベデルは次のように述べています。「この地域では紛争によって、5 秒に 1 人に相当する頻度で、子どもの人生が一変しています。すでに、この地域で暮らす子ども2 億 2,000 万人の半数が、紛争の影響下にある国々で暮らしています。この数字をこれ以上増やすことは許されません。子どもたちのために敵対行為を終わらせることは、選択肢ではなく、喫緊の課題であり、道徳的義務であり、より良い未来への唯一の道なのです」

 

今日、中東・北アフリカ地域では、約 1 億 1,000 万人もの子どもが紛争の影響下に暮らしています。暴力は、彼らの生活のほぼすべての側面を混乱させ続けています。家、学校、医療保健施設が破壊され、子どもたちは、命を脅かされる状況、極度のストレス、避難生活に日常的にさらされ、安全を奪われ、生涯残りかねない心の傷を負っています。

今年、この地域全体で、命を脅かす危険にさらされ続けている子ども4,500万人が、人道支援を必要とする、とユニセフは予測しています。3,200万人だった2020年と比べ、わずか5年間で41%の増加の見込みです。

紛争の爪痕が残るダマスカス郊外県の街をきょうだいと一緒に走る11歳のバシマさん。不発弾の危険性を学び、弟が家に持ち帰っていた薬きょうを安全に処分するように説得した(シリア、2025年4月10日撮影) © UNICEF/UNI790024/Ibarra Sánchez / MeMo

 

レバノン南部の国境沿いにある、紛争で破壊された学校の教室。国内の半数近くの児童や生徒が避難を余儀なくされ、数百もの学校が閉鎖されたままである(レバノン、2025年2月15日撮影) © UNICEF/UNI753036/Ibarra Sánchez

こうした状況にもかかわらず、ユニセフは中東・北アフリカ地域での支援活動に対して深刻な資金不足に直面しています。例えば2025年の資金調達目標額に対し、5月時点で、シリアで活動に必要な資金のうち78%が、またパレスチナでは68%が不足しています。加えて、地域全体での支援プログラムも、ますます深刻な財政的圧迫を受けています。

 

将来の見通しについても厳しいままです。2026年までに、ユニセフの同地域における活動資金は20~25%減少すると予測されており、つまり最大3億7,000万米ドルの削減となる可能性があります。これにより、重度の栄養不良のケア、紛争地域での安全な水の提供、命にかかわる疾病から守る予防接種など、命を守るプログラムがこの地域全体で危機にさらされるおそれがあります。

 

ベイグベデルはまた次のように述べています。「この地域の子どもたちが置かれている状況がますます悪化する中、支援のためのリソースがますます不足しています。紛争は停止しなければなりません。これらの危機を解決するための国際的な支援を強化しなければなりませんし、脆弱な立場に置かれた子どもへの支援を削減するのではなく、増やさなければなりません」

北ダルフールにあるユニセフ支援の診療所で、栄養不良の検査を受ける避難民の子ども(スーダン、2025年5月4日撮影) © UNICEF/UNI789971/Jamal

 

ユニセフは、中東・北アフリカ地域のすべての紛争当事者に、敵対行為を停止し、国際人道法や国際人権法をはじめとする国際法を守るよう強く求めます。紛争当事者に影響力を持つ国連加盟国は、その力を行使し、平和の実現と、子どもたちおよび子どもたちが生き延びるために必要不可欠なインフラの保護を強く訴える必要があります。

 

ユニセフはまた、ドナーに対して、子どもへの支援の維持、あるいは拡大を要請するとともに、新たなドナーに対して、この地域で最も脆弱な子どもを支援するよう呼び掛けています。

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■ 注記

中東・北アフリカ(Middle East and North Africa=MENA) 地域において、ユニセフは20 カ国で活動しており、緊急・人道支援とともに、教育、保健、栄養、社会的保護システムへの長期的な支援も行っています。

 

分析方法:

・影響分析

この分析は、2023年9月以降にイラン、イスラエル、レバノン、パレスチナ、スーダン、シリア、イエメンで死亡、負傷、避難を余儀なくされた子どもの数に関する報告データと、国連人口部の人口統計に基づいています。

 

・資金調達分析

*本分析では、各国政府が発表した2025年と2026年の政府開発援助(ODA)の削減に加え、同期間に、世界銀行などが拠出するプールファンド(共同資金)も約30%の削減が見込まれることを考慮に入れました。そして、2024年時点でユニセフ・中東・北アフリカ地域事務所の活動資金がグローバルODAに占めている割合を基に、2025年と2026年に同地域への資金がどれくらい減るかを推定しました。実際の削減額は、各国政府が最終的に各地域・国にどのように資金を配分するかによって、増減する可能性があります。

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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