ウクライナ 子どもの死傷者が3カ月で3倍に SNS等を通じて軍事利用される子どもも 【プレスリリース】
ユニセフ、強い懸念を表明

【2025年7月4日 キーウ(ウクライナ)/ジュネーブ発】
国連が確認した最新のデータによると、ウクライナで子どもの死傷者が大幅に増加したほか、ソーシャルメディアを通して接触した子どもを軍事利用するケースが増えており、ユニセフ(国連児童基金)は、子どもの重大な権利侵害を止めるよう訴えています。
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国連ウクライナ人権監視団のデータによると、ウクライナで2025年3月1日から5月31日までの間に亡くなるか、負傷したと確認された子どもの数は、その直前の3カ月間に比べ、200%以上増加しました。
2025年3月1日から5月31日までの間に、222人の子どもが死傷しました。一方、2024年12月1日から2025年2月28日までの間に死傷した子どもは73人でした。人口密集地における爆発性兵器の継続的な使用が、特に多くの犠牲と甚大な被害をもたらしています。
今年 4 月だけでも、 97 人の子どもが命を落とすか、けがを負いました。これは 2022 年 6 月以降、国連が確認した 月間の子どもの死傷者数として最多です。

ユニセフ・欧州・中央アジア地域事務所代表のレジーナ・デ・ドミニチスは次のように述べています。「ウクライナの子どもたちは、戦争から、つかの間も解放されることがありません。子どもたちを取り巻く状況は危機的であり、激しい攻撃が命を奪うだけでなく、子どもの生活のあらゆる側面を破壊し続けています」
保健施設、教育インフラ、水道網と電気網、安全な遊び場などの破壊や損傷は、今だけでなく将来にわたって、子どもたちに影響を及ぼします。同時に、ウクライナ北東部および東部地域における激しい戦闘は、国内避難の波を発生させ、現金給付や必要不可欠な物資の提供、またメンタルヘルスケア、心理社会的支援、より広範な子どもの保護支援など、人道支援のニーズを結果的に高めています。

また、現代の戦争は子どもにとって新たな脅威を生みつつあります。国連人権高等弁務官事務所の報告書によると、ウクライナ政府の支配地域に住む子どもたちが利用され、ウクライナ軍の監視や情報伝達、さらには軍関連の標的に対する破壊行為(放火など)をさせられていたとの報告があったともされています。多くのケースで見られたのは、SNSを通じて子どもたちに接触し、軍関係者の車両や鉄道設備などに火をつけるよう指示し、放火の証拠となる動画を送れば報酬を支払うと持ちかける手口です。オンラインの影響力を通して、ウクライナで軍事目標への攻撃、破壊工作、情報収集などの活動を行うために子どもが利用されることは、特に懸念すべきことで、子どもたちの安全とウェルビーイングが危険にさらされています。
国連ウクライナ人権監視団によると、こうした行為の最中に、少なくとも 2 人の男の子が命を落とし、1 人が負傷しました。さらに、ウクライナの法執行当局のデータによると、91人の男の子と 12人の女の子が拘束され、42 人の子どもが紛争への関与で有罪判決を受け、少なくとも 7 人の子どもが収監されています。
いかなる紛争当事者も、子どもを紛争に利用することを止めなければなりません。ウクライナ当局には、子どもを被害者として扱うこと、子どもにやさしい司法サービスへのアクセスを確保することを含めた、子どもを支援・保護するための迅速な措置を講じることが、強く求められます。
ユニセフはウクライナ政府と協力し、包括的な法的支援サービスへのアクセスを確保し、勾留・拘置に代わる措置を推進とともに、子ども一人ひとりの固有のニーズと最善の利益に応じた修復的司法と社会復帰を重視することによって、子どもたちに力を与え、彼らを保護する、「子どもにやさしい司法制度」の強化に取り組んでいます。
ユニセフは引き続き、国際人道法および国際人権法を直ちに遵守すること、ならびに子どもに対する重大な権利侵害を止め、防止することを求めます。子どもたちが、以前の状態を取り戻すためには、子どもの権利とウェルビーイングが保護され、優先される、持続的かつ永続的な平和が必要なのです。
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■ 注記
「Report on the Human Rights Situation in Ukraine, 1 December 2024 - 31 May 2025(ウクライナの人権状況に関する報告書 2024年12月1日~2025年5月31日)」(国連人権高等弁務官事務所発表、英語)はこちらでご覧いただけます。
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )
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