ガザで「飢きん」が確認される ユニセフなど国連機関 即時停戦と人道アクセス呼びかけ 【プレスリリース】

ガザ市内の病院で、栄養不良と診断されて治療を受けている子ども(パレスチナ、2025年7月29日撮影) © UNICEF/UNI839605/Nateel

【2025年8月22日 ローマ/ジュネーブ/ニューヨーク発】

新たに発表された総合的食料安全保障レベル分類(IPC)の分析によると、パレスチナ・ガザ地区で50万人以上の人々が飢きんに陥り、広範な飢餓、極度の貧困、予防可能な死が発生しています。飢きんは今後数週間のうちに、ガザ県からデルバラハ県とハンユニス県に拡大すると予測されています。こうした事態を受け、ユニセフ(国連児童基金)など国連機関は、飢きんと栄養不良による死を防ぐための即時停戦と妨げのない人道アクセスをあらためて要請しました。

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ユニセフ、国連食糧農業機関(FAO)、国連世界食糧計画(WFP)、および世界保健機関(WHO)は、飢餓に関連した死の急増、急性栄養不良の急速な悪化、および食料消費量の急激な減少により、多くの人々が何日間も何も食べられない状況にある中で、即時かつ大規模な人道支援の緊急性を一丸となって、かつ一貫して強調してきました。

ガザ中部にあるブレイジ難民キャンプで暮らす、重度の栄養不良に苦しむ7歳の女の子(パレスチナ、2025年7月28日撮影) © UNICEF/UNI838281/El Baba

ユニセフら国連機関は、何としても飢きんを食い止める必要があることをあらためて強調しました。命を守るためには、妨げられることのない大規模な人道支援を可能にする、即時停戦と紛争の終結が不可欠です。各機関はまた、ガザ市における軍事攻撃の激化や紛争のさらなる拡大によって、既に飢きんの状態にある地域の民間人に壊滅的な影響が及ぶことを、深く懸念しています。多くの人々、特に病気や栄養不良の子ども、高齢者、障がいのある人々が、避難できない可能性があります。

 

9月末までに、ガザ地区全体で64万人を超える人々が、IPCフェーズ5に分類される「飢きん」に直面する見込みです。さらに114万人が「人道的危機」(IPCフェーズ4)に、39万6,000人が「危機」(IPCフェーズ3)の状況に置かれると推定されています。北ガザの状況は、ガザ市と同程度かそれ以上に深刻であると推定されています。ただし、データ不足によりIPC分類は行われておらず、状況の評価と支援のためのアクセスが緊急に必要であることが浮き彫りになっています。ラファは、人々が避難しほぼ無人の状態となっていると見られるため分析対象外となっています。

 

飢きんに分類されるとは、「極度の食料不足」、「急性栄養不良」、「飢餓関連死」の3つの基準について重要なしきい値をすべて超え、最も深刻な段階に達したとみなされることを意味します。最新の分析では、合理的な証拠に基づき、これらの基準が満たされたことが確認されました。

 

ほぼ2年に及ぶ紛争、繰り返される避難、人道アクセスへの深刻な制限に加え、食料、水、医療支援、農業・畜産業・漁業支援へのアクセスが繰り返し妨げられ、保健・衛生・市場システムが崩壊したことで、人々は飢えています。

 

ガザにおける食料へのアクセスは依然として深刻な制約を受けています。7月には、「非常に深刻な飢餓」を訴える世帯の数が、5月に比べてガザ地区全体で倍増し、ガザ市では3倍以上に急増しました。住民の3人に1人以上に当たる39%が「何日も食べていない」と回答し、子どもに食べさせるために、おとなが自分の食事を抜くことが常態化しています。

ガザ地区で、ユニセフ支援物資の治療用ミルクを口にする子ども(パレスチナ、2025年8月7日撮影) © UNICEF/UNI851489/El Baba

ガザの子どもの栄養不良は壊滅的な速度で進行しています。7月だけで、急性栄養不良と診断された子どもは1万2,000人を超えました。これは月ごとの記録としては過去最多であり、年初からは6倍に増えています。このうち約4人に1人は、短期・長期の両面にわたって影響を及ぼす、栄養不良の最も危険な形態である「重度の急性栄養不良(SAM)」に陥っていました。

 

2026年6月末までに、栄養不良により深刻な死亡リスクにさらされると予測される子どもの数は、5月に行われた前回のIPC分析時の1万4,100人から4万3,400人へと3倍に増加しました。妊娠中または授乳中の女性についても同様で、2026年半ばまでに危険なレベルの栄養不良に陥ると予測される人の数は、5月時点の1万7,000人から、5万5,000人へと3倍になっています。この影響は目に見える形で現れており、5人に1人の赤ちゃんが早産または低体重で産まれています。

 

今回の新たな評価報告書は、IPCがガザ地区における急性食料不安と急性栄養不良の分析を開始して以来、最も深刻な悪化を示しています。また、中東地域で飢きんが公式に確認されたのは初めてです。

 

7月以降、ガザに搬入される食料品と支援物資はわずかに増加したものの、必要とされる量に比べ依然として極めて不十分で、供給は不安定で、住民には容易に手が届かない状態が続いています。

 

深刻な水不足が続くガザ地区の難民キャンプで、給水車の到着を辛抱強く待っている家族の様子(パレスチナ、2025年8月11日撮影) © UNICEF/UNI845957/Nateel

一方、ガザ地区の農地のうち、およそ98%が被害を受けているか、立ち入れない状態にあり、農業と地元の食料生産は壊滅的な打撃を受けています。住民の10人のうち9人が繰り返し住まいからの避難を余儀なくされています。現金は極度に不足しており、支援活動は深刻な混乱に陥っており、国連のトラックのほとんどが略奪され、絶望感が高まる事態となっています。食料価格は極めて高騰しており、調理用の燃料や水、医薬品や医療用品が不足しています。

ガザの医療体制は深刻なまでに崩壊しており、安全な飲料水と衛生サービスへのアクセスも著しく低下しています。多剤耐性感染症が急増しており、下痢症、発熱、急性呼吸器感染症、皮膚感染症の罹患率が、特に子どもにおいて危機的な水準に達しています。

 

ユニセフら国連諸機関は、命を守る人道支援活動を可能にするには、殺りくを止め、人質を安全に解放し、ガザ全域の人々に大量の支援物資が妨げなく届くようにするための、即時かつ持続的な停戦が重要である、と強調しました。また、食料支援の量を大幅に増やすだけでなく、搬送・配布・アクセスを抜本的に改善するとともに、避難所、燃料、調理用ガス、食料生産用資材を確保することが急務である、と訴えました。さらに、ガザ地区における保健体制の再建を支援し、プライマリ・ヘルスケアを含む極めて重要な保健サービスを維持・再開し、ガザ全域への保健物資の持続的な搬入と配布を担保することが不可欠であると強調しました。飢きんの最悪の事態を回避するためには、商業的な流通の回復、市場システムの再建、不可欠なサービスおよび地元での食料生産の再開も不可欠です。

 

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のように述べました。「ガザ県の子どもにとって飢きんは今や厳しい現実となり、デルバラハとハンユニスでは迫りくる脅威となっています。繰り返し警鐘を鳴らしてきた通り、兆候は明白でした。泣くことも食べることもできないほど衰弱した子どもたち、飢えや予防可能な病気で命を落とす乳児たち、子どもに与える食料が何もない状態でクリニックに駆け込む親たち。時間の猶予はありません。即時停戦と完全な人道アクセスが実現しない限り、飢きんは拡大し、さらに多くの子どもが命を落とすでしょう。飢餓の瀬戸際にいる子どもには、ユニセフの支援物資である特別な治療食が必要です」

 

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■ 注記

本信で取り上げている総合的食料安全保障レベル分類(IPC)の新分析は、こちらからご覧ください(英語)。

https://www.ipcinfo.org/ipcinfo-website/countries-in-focus-archive/issue-134/en/

IPCは、食料安全保障と栄養に関する分析、および意思決定の改善を目的とした、革新的な、複数パートナーによる取り組みです。IPC の分類と分析手法を用いて、各国政府、国連機関、NGO、市民社会、その他の関連機関が協力し、国際的に認められた科学的基準に従って、各国における急性および慢性的な食料不安、ならびに急性栄養不良の状況の深刻度と規模を判断します。詳細についてはIPCのこちらのページをご覧ください(英語)。

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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