4人に1人が安全な飲み水を得られず 「世界水週間2025」 【プレスリリース】

ユニセフなどの新報告書が格差を明らかに

バーミヤンの小さな村で暮らすきょうだい。ユニセフが設置した給水システムにより、自宅できれいな水が利用できるようになった(アフガニスタン、2025年6月24日撮影) © UNICEF/UNI832783/UNICEF Afghanistan

【2025年8月26日 ニューヨーク/ジュネーブ発】

ユニセフ(国連児童基金)と世界保健機関(WHO)は、水供給、衛生環境および衛生習慣に関する共同モニタリングプログラム(JMP)の最新報告書を発表しました。その中で、過去10年間で進展が見られたにもかかわらず、世界中で数十億人が依然として基本的な水、衛生的な環境 (トイレ)、および衛生的な習慣 (手洗い)に関するサービスへのアクセスを欠いており、病気のリスクやより深刻な社会的排除に直面していると指摘しています。脆弱なコミュニティは取り残され、格差が続いていることが浮き彫りになっています。

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2025年の「世界水週間」に合わせて、ユニセフなどが発表した報告書「家庭用飲み水と衛生状況の進展(2000年~2024年):不平等に焦点を当てて(原題:Progress on Household Drinking Water and Sanitation 2000–2024: special focus on inequalities)」は、一定の進展が見られるものの、重大な格差が依然として存在することを明らかにしています。低所得国、脆弱な状況下にある地域、農村部、子ども、少数民族および先住民族が最も大きな格差に直面しています。

ユニティ州で、新しく設置された給水設備から水をくむ女の子たち(南スーダン、2025年3月14日撮影) © UNICEF/UNI782095/

報告書の要点(10項目)は以下の通りです。

  • 2015年以降、進展が見られたものの、世界の人口の4人に1人に当たるおよそ21億人が安全に管理された飲み水を口にすることができていません*。そのうち1億600万人は、河川や湖などから未処理の地表水を直接飲んでいます。

  • 34億人が、未だに安全に管理された衛生施設(トイレ)を利用できず、そのうち3億5,400万人は屋外排泄を行っています。

  • 17億人が、未だに家庭で基本的な衛生サービスを利用できず、そのうち6億1,100万人は衛生を保つためのいかなる設備も利用できない状況にあります。

  • 後発開発途上国では、他の国と比べて、基本的な飲み水と衛生施設(トイレ)に関連するサービスを利用できない人の数が2倍以上多く、基本的な手洗い設備を利用できない人の数は3倍以上多くなっています。

  • 脆弱な状況下**では、安全に管理された飲み水の普及率が他の国に比べて38ポイント低く、深刻な格差を浮き彫りにしています。

  • 農村部に暮らす人々の状況は改善されてきたものの、依然として遅れが残っています。安全に管理された飲み水の普及率は2015年から2024年にかけて50%から60%に、基本的な手洗い設備の普及率は52%から71%に増加しました。一方で、都市部における飲み水と手洗い設備の普及率は横ばい状態が続いています。

  • 70カ国のデータによると、ほとんどの女性と10代の女の子は生理用品を持っており、それを交換するためのプライベートな場所もありますが、必要な頻度で交換できるだけの十分な用品を持っていない人が大勢います。

  • 15~19歳の女の子は、成人女性よりも、月経期間中に学校や仕事、社交的な余暇活動などに参加する傾向が低くなっています。

  • データが利用可能なほとんどの国において、女性と女の子が水くみの主な担い手であり、サハラ以南のアフリカと中央・南アジアでは、多くの人が1日当たり30分以上を水くみに費やしています。

  • SDGs(持続可能な開発目標)の達成期限まで残り5年となる中、2030年目標である屋外排泄の根絶、基本的な水と衛生に関する設備・サービスのすべての人への普及を達成するには、さらなる加速が不可欠です。この分野における安全に管理されたサービスを世界中に普及することは、現状では、ますます達成が困難な状況となっています。

アルタ・べラパスにある小学校のトイレの前で、笑顔を見せる子どもたち。ユニセフが支援する、手洗いの重要性などを学ぶ行事に参加した(グアテマラ、2025年3月20日撮影) © UNICEF/UNI783690/Lopez

ユニセフの水と衛生(WASH)担当ディレクター、セシリア・シャープは次のように述べました。「子どもたちが安全な水や衛生設備を利用できなければ、また衛生習慣を守ることができなければ、彼らの健康、教育、そして未来が脅かされます。こういった不平等は、特に女の子にとって深刻です。彼女たちは、水くみの負担を負っている上、月経期間中にはさらなる障壁に直面します。現在の進捗速度では、すべての子どもに安全な水と衛生環境を届ける、という約束の実現は、遠のきつつあります。これは、最も必要としている人々へ支援を届けるために、より迅速かつ大胆に行動する必要があることをあらためて示しています」

報告書「家庭用飲み水と衛生状況の進展(2000年~2024年):不平等に焦点を当てて」の全文はこちらからご覧いただけます(英語)。

https://data.unicef.org/resources/jmp-report-2025/ 

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■ 注記

*JMPにおける「安全に管理された飲み水と衛生的な環境 (トイレ)に関するサービス」の定義:自宅の敷地内の給水設備から得られ、汚染がなく、必要な時に口にできる飲み水、および排泄物が安全に処理・処分される衛生的なトイレを指す。

**脆弱な状況:経済協力開発機構(OECD)によると、脆弱性とは、リスクにさらされているにもかかわらず、リスクの対処・吸収・緩和を行う力が国家、制度、コミュニティに十分に備わっていない状態を指します。これは、経済・環境・人的・政治・安全保障・社会の6つの側面にわたり、さまざまな強度で現れます。

■ 報告書「家庭用飲み水と衛生状況の進展(2000年~2024年):不平等に焦点を当てて」について

本報告書は、ユニセフとWHOの水供給、衛生環境、および衛生習慣に関する共同モニタリングプログラム(JMP)が作成しました。2000年から2024年までの各世帯における水、衛生環境(トイレ)、衛生習慣(手洗い)に関するサービスについての新たな国別、地域別および世界的な推計を提供しています。

今回の報告書より、70カ国における月経衛生に関するデータが追加され、所得水準を問わず女性と女の子に影響を与える課題を明らかにしています。

報告書は、2025年8月24日から28日まで開催される「世界水週間」で発表されます。世界水週間は、グローバルな水問題に関する主要な年次会議であり、多様なセクターのステークホルダーが連携し、SDGsの達成に向けた進展を加速させる場となっています。

世界水週間のテーマ「水と気候行動」は、温室効果ガス排出量の削減と生態系・コミュニティのレジリエンス強化に向けたグローバルな取り組みにおいて、水が果たす重要な役割に焦点を当てています。ストックホルムで開催される世界水週間に参加するユニセフ代表団は、報告書の発表に加え、子どもと家族を対象とした気候変動に耐性があり、持続可能、包摂的かつ革新的な水と衛生(WASH)プログラムに関する複数のセッションを主催し、パネル討論にも参加します。

詳細はこちらをご覧ください:https://worldwaterweek.org/

■ ユニセフ・WHOの共同モニタリングプログラム(JMP)について

JMPは1990年に設立され、35年間にわたり世界の水と衛生に関する進捗状況を監視してきました。このプログラムは、2030年までに安全な水・衛生施設・衛生習慣への普遍的なアクセス、および屋外排泄の根絶を目標とするSDGsの目標1.4、6.1、6.2の達成状況を監視する責任を負っています。

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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