学校に通えない子ども、600万人増のおそれ 教育分野への資金拠出32億米ドル減少 ユニセフ訴え「教育は最良の投資」 【プレスリリース】

フェルケセドゥグのユニセフが支援している学校で、授業を受ける子どもたち(コートジボワール、2025年2月19日撮影) © UNICEF/UNI755281/Dejongh

【2025年9月3日 ニューヨーク発】

ユニセフ(国連児童基金)は本日新たな分析を発表し、教育分野への資金拠出が世界的に大幅な削減に直面する中、2026年末までにさらに推定600万人の子どもが学校に通えなくなる可能性があり、その約3分の1は人道支援が必要な状況下にいる子どもだと警鐘を鳴らしました。

 

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教育分野への政府開発援助(ODA)は、2023年に比べて32億米ドル、割合にして24%の減少が見込まれており、その削減額の80%近くをわずか3つのドナー(援助国)政府が占めています。このような減少により、世界の学校に通えない子どもの数は2億7,200万人から2億7,800万人に増加する見込みです。これは、ドイツとイタリアのすべての小学校を空にするのと同じ規模に相当します。

 

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のように述べました。「教育予算の削減は、単なる予算上の決定にとどまらず、1ドル削られるごとに子どもの未来が危機にさらされることを意味します。教育は、特に緊急事態下において、しばしば命綱となり、子どもを保健や保護、栄養といった必要不可欠な各サービスへと繋ぎます。さらに、教育は子どもが貧困から脱却し、より良い人生を築くための最も強力な機会を提供します」

小学校で授業を受ける7歳のアミナトゥさん。学校の先生になるのが将来の夢(マリ、2025年2月27日撮影) © UNICEF/UNI767699/Nkurunziza

分析によると、西部・中部アフリカ地域が最も深刻な影響を受け、190万人の子どもが教育機会を失うリスクに直面しています。また、中東・北アフリカ地域では、学校に通えない子どもが140万人増加する可能性があり、その他すべての地域でも大幅な後退が見込まれます。

 

分析によると28カ国が、就学前教育、初等教育、中等教育のために依存している教育支援のうち、少なくとも4分の1を失う見込みです。そのうち、最も深刻なリスクに直面するコートジボワールとマリは、就学率が4%低下する恐れがあり、これはそれぞれ、34万人と18万人の児童・生徒数に相当します。

 

初等教育は世界的に最も深刻な打撃を受けると予想され、資金は3分の1減少する見込みです。これにより学習危機は深刻化し、影響を受ける子どもたちは生涯所得で推定1,640億米ドルを失うリスクに直面します。

 

コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプにあるユニセフ学習センターで、授業を受ける13歳のヌールさん(中央)。資金不足により、教育の提供が危機的な状況となっている(バングラデシュ、2025年8月22日撮影) © UNICEF/UNI850820/Kruglinski

人道支援の現場において、教育の役割は単なる学びにとどまらず、心に傷を負った子どもに対し、命を守る支援や安定を提供し、そして日常を取り戻す助けとなるものですが、そういった支援のための資金が大幅に減少する可能性があり、場合によっては国家教育予算の少なくとも10%に当たる規模の削減がなされるケースもあります。例えばユニセフによるロヒンギャ難民支援では、35万人の子どもが基礎教育を受ける機会を永久に失う危険にさらされています。緊急資金がなければ教育センターは閉鎖され、子どもを搾取や児童労働、人身取引の危険にさらすことになるのです。

子どもにとって、一日で唯一の栄養のある食事となることもある、学校給食プログラムなどの必要不可欠なサービスへの資金援助が、半分以上削減される可能性があり、女子教育への支援も著しく減少する見込みです。

 

教育システム全体での大規模な予算削減は、政府がエビデンスに基づく計画を策定し、教員の育成を適切に支援し、学習成果を監視する能力も損なうことになります。これは、学校に通い続ける子どもの学習にも支障をきたす可能性があることを意味し、すべての地域で少なくとも2億9,000万人の児童・生徒が教育の質の低下に直面すると予測されます。

 

ユニセフは教育を守るため、援助国およびパートナー国に対し、直ちに以下の措置を講じるよう求めます。

  • 公平性と効果性を高めるため、教育支援を再配分し、少なくとも50%を後発開発途上国に割り当てること

  • 人道支援における教育資金を確保し、他の必要不可欠なサービスと並び、命を守る介入策として教育を優先する

  • 教育支援を基礎的な学習に集中させ、投資効果が最も高い乳幼児期と初等教育に重点を置く

  • 効率性向上のため、今年創設80周年を迎える国連の「UN80イニシアティブ」に沿い、世界的な資金調達構造を簡素化する

  • 教育への基幹的資金を置き換えることなく、革新的な資金調達を拡大する

 

ラッセル事務局長は次のように述べています。「子どもの教育への投資は、すべての人にとって、未来に向けた最良の投資の一つです。子どもが教育を受け健康であれば、国々はより良くなり、それが安定をもたらし、世界の繁栄にも貢献するのです」

 

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■ 注記:

この予測は、OECD債権者報告システム(CRS、2023年-最新利用可能年)およびドナートラッカー(2025年7月)のデータに基づいています。公的ドナーの声明および政策文書を用いて、教育予算が削減されている地域を特定し、その他の地域については比例的な削減を仮定しました。追加で学校を中退するリスクにさらされる子どもの数の推計は、初等・中等教育への教育援助が25%以上減少すると予測される低所得国・下位中所得国に焦点を当てています。この規模の削減は政府が迅速に吸収できないと想定しています。中退率が既に頭打ちとなっている国では、来年度の影響は就学率よりも教育の質に顕著に現れると見られます。

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■ ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )

※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます

 

■ 日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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